(7-1)男性の育児休業奨励金について
最終更新日:2025年6月3日
(7-1)男性の育児休業奨励金について
令和7年4月1日 苦情申立書受理
申立ての趣旨(要約)
私は2025年1月1日から2月28日まで育児休業を取得し、3月1日に職場復帰しました。
市の、男性の育児休業奨励金は、令和6年度が20万円(2025年2月28日まで)、令和7年度が5万円(2025年3月1日から)となっていて、担当課に減額の理由を問い合わせたところ、4月からは国として育休に対する手当が充実するので市としては減額の方向としたとの回答でした。
私は3月1日に職場復帰したため、令和7年度の対象となり奨励金が減額となりますが、下記2点の市の対応について納得できません。
(1)4月から手当てが増えるため4月から減額するということであれば理解できますが、3月に職場復帰した場合は、ただ減額されているだけです。4月1日からの取得者に対しては5万円とするのが一般的な考え方ではないでしょうか。
(2)制度の変更については、事前に発表されていたわけではなく、3月25日に市ホームページで発表されたと思われ、後出し周知です。
以上、当制度について見直しを希望するとともに、市の対応について苦情を申し立てます。
所管部署
市民生活部男女共同参画課(以下「所管課」という。)
調査の結果の要旨
令和7年5月30日決定
申立人の主張及び所管課の説明と所管課から提出のあった資料に基づき、当審査会では以下のとおり判断し調査結果とします。
第1 事実経過
本件の事実経過は次のとおりです。
(1) 令和7年(2025年)1月1日、申立人が勤務先で育児休業を取得。
(2) 同年1月28日、所管課が、市ホームページで、令和7年度「新潟市男性の育児休業取得促進事業」(以下「本事業」という。)の実施は未定であり、詳細が決定次第(同年3月下旬を予定)、同ページで公表する旨を掲載。なお、所管課はこの以前にも令和6年度の奨励金の対象者は令和7年2月28日までに職場復帰した者が対象である旨を令和6年3月からホームページで公表していた。
(3) 同年3月1日、申立人が育児休業を終えて職場に復帰。
(4) 同年3月25日、新潟市が本事業の奨励金支給要綱を改正(同年4月1日施行)。労働者の支給額が5万円となる(改正前は20万円)所管課が市ホームページで同改正内容を公表。
(5) 同年4月1日、申立人が新潟市行政苦情審査会に苦情申立書を提出。
第2 審査会の判断
1. 申立人は、上記申立ての趣旨(要約)のとおり、本事業について、(1)令和7年4月から5万円に減額するということであれば理解できるが、同年3月に職場復帰した場合は、ただ減額されているだけであり不合理であること、(2)本事業の制度の変更については事前に発表されていたわけではなく、3月25日に市ホームページで発表されたと思われ後出し周知である旨の苦情を述べています。
2. これに対し、所管課は、まず、本事業の目的が育児休業を取得した男性労働者及びその労働者を雇用する中小企業等の事業主に対し奨励金を支給することにより、男性の育児参画を促進し、育児を通して職場や家庭における固定的な性別役割分担意識の解消を図ることにあるとした上で、申立人の上記苦情(1)については、本事業は単年度毎に市の予算の議決を経て実施しており、毎年年度内(4月1日~3月31日)の申請を対象としていること、本事業の奨励金支給要綱では、育休取得後すぐに会社を辞めてしまうことを防ぐために、復職後1か月の通常勤務を要件としていること、そのため3月に育児休業から復職した場合は1か月間勤務した上で4月以降の新年度での申請となること、そのため年度毎の支給対象を例年3月1日から翌年の2月末までに育休から復職した方としている旨の説明をしています。 なお、支給額が20万円から5万円となった理由については、法改正等社会情勢の変化により、労働者の育休取得への意識醸成が進んでおり、男性の育児休業取得率の上昇とともに、本奨励金の申請件数も年々増加していることから、少しでも多くの市民に奨励金を支給するため、他の政令市(千葉市:5万円)や県内市(燕市:5万円、南魚沼市:3万円)、新潟県(5万円。令和6年度まで。)の制度を参考に変更した旨説明しています。
また、申立人の苦情(2)については、本事業は単年度ごとに市の予算議決を経て実施しているものであり、予算の議決後に初めて令和7年度の事業実施を公表できるため、制度変更の周知は令和7年3月25日とならざるを得ないこと、また、制度変更の周知前である令和7年1月28日の時点で、令和7年度事業の実施は未定であり、詳細を3月下旬に公表する旨を市ホームページに掲載していたこと、さらに、令和6年3月から令和6年度の奨励金の対象者は令和7年2月28日までに職場復帰した方が対象である旨を市ホームページで公表していること、加えて区役所窓口で母子手帳交付時に配布している周知カードには本事業の制度内容は変更する可能性がある旨を記載しており、これらの周知によって今回の制度変更についても事前に案内をしていた旨の説明をしています。
3. 以上を踏まえた当審査会の判断は次のとおりです。
まず、申立人の苦情(1)について、本事業の趣旨は、育児休業に伴う減給分を補填するためのものではなく、あくまで育児休業取得促進のためのインセンティブとして制度化されているもので、このような制度趣旨からすれば、育休取得後すぐに会社を辞めてしまう事態を防止すべく、奨励金支給にあたり復職後1か月の通常勤務を支給要件としていることには合理性があり、そのため、3月中に復職した方の申請が翌4月以降の取扱いとなることについても不合理ではありません。なお、同様の奨励金事業を行っている他の自治体(千葉市、仙台市、つくば市、燕市、柏崎市、魚沼市、見附市)でも同様の取扱いとなっています。
そもそも、本事業は、上記のとおり育児休業に伴う減給分を補填するためのものではなく、あくまで育児休業取得促進のためのインセンティブとして制度化されているものであり、そのため、本件のように3月に復職した方が翌4月以降に本事業の奨励金支給申請を行った場合の支給額が4月以降の制度変更後の金額(本件では5万円)になったとしても特段不合理なものとは言えません。
次に、苦情(2)の点については、所管課の説明にあるとおり、本事業が単年度ごとの市の予算議決を経て実施しているものである以上、令和7年度の本事業の内容については令和7年度の市の予算議決後に公表せざるを得ず、そのため、本事業の制度変更の市ホームページの掲載が市の予算議決後である令和7年3月25日となったことについてはやむを得ないものと言えます。また、所管課は、令和7年1月28日の時点で、令和7年度事業の実施は未定であり、詳細は3月下旬に公表する旨を掲載していました。加えて、所管課が令和6年度の奨励金の対象者は令和7年2月28日までに職場復帰した方が対象である旨を令和6年3月から市ホームページで公表していたこと、区役所の母子手帳交付窓口で配布する周知カードには制度は変わることがある旨を記載していたことからすれば、今回の制度変更の周知が後出しとは言えないものと考えます。
ところで、本事業の趣旨は、育児休業に伴う減給分を補填するためのものではなく、あくまで育児休業取得促進のためのインセンティブとして制度化しているとの所管課の説明がありましたが、市ホームページの「奨励金の目的」の項目にはそのような趣旨は記されておらず、「減給補填」と捉えられてしまう余地は否定できません。
また、自治体の予算執行における制度の構造上、令和7年度予算の議会議決を得て事業に係る予算の執行ができることから、議決後の3月25日に事業の詳細を公表したとの説明ですが、奨励金の額を20万円から令和7年度は5万円に減額する予定であることなど、制度の重要な変更を伴う場合においては、市長が市議会に対し新年度予算の提案をした2月18日の時点で、予定している変更等の情報をホームページ上でお知らせすることも可能であり、そのことにより市民にとってはより正確な情報の取得ができたのではないかと考えます。
所管課には、これらの意見も参考にしていただき、本事業に関し丁寧な情報提供をお願いしたいものと思います。
4. 以上、当審査会は、本申立てについて、新潟市行政苦情審査会規則第16条第1項に基づく市長等への意見表明ないし提言をする必要性はないものと判断致します。
規則第16条第1項
審査会は、苦情等の調査の結果、必要があると認める場合は、市長等に対し、当該苦情等に係る市の業務について、是正その他の改善措置(以下「是正等」という。)を講ずるよう意見を表明し、又は制度の改善を求める提言をすることができる。
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