(7‐8)香害に関する市の不適切な対応
最終更新日:2026年1月5日
(7-8)香害に関する市の不適切な対応
令和7年7月15日 苦情申立書受理
申立ての趣旨(要約)
1.2024年3月から4月の間に行われた「新潟市地域公共交通計画(素案)」に対するパブリックコメント及び2025年1月から2月の間に行われた「新潟市食の安全基本方針(第4次改訂素案)」に対するパブリックコメントに、香害に関する意見を送付した。
令和7年7月1日に各回答を確認したところ、いずれの回答も「本市では市民の皆様に香害に関する情報をホームページに掲載する等周知啓発の取り組みを行っています。」や「本市ではこれまでもホームページへの香害に関する情報掲載及び庁舎内掲示板へのポスター掲示等により香料によって体調を崩す人がいることの周知や人が集まる場所等での配慮をお願いしてきました。」と記載されていた。しかし、「新潟市香害」と市ホームページを検索しても該当する記載がなく、上記の回答は虚偽であるため、回答の訂正と訂正理由の公表を求める。
所管部署:都市交通政策課、保健所食の安全推進課
2.国が五省庁として、2021年、2023年の2回に渡り香害への周知と配慮を呼びかける事務連絡を行っているのに対し、市が市民に対し積極的に周知啓発を行っていない。
新潟市のホームページには、「シックハウス症候群と化学物質過敏症」と題したページがあり、香害に関する外部サイトへのリンクはあるものの、画像や事例などを使った直接的な周知はなされていない。そのほかでは、2023年2月の北区役所だよりに掲載されている程度であり、市として香害を周知するページは見当たらず、積極的な周知を行っているとは言い難い状態である。
所管部署:保健所環境衛生課
3.内閣府が開設している、障がい者差別に関する相談窓口「つなぐ窓口」に、オーガニック食材を扱う店舗や銀行、郵便局に対し、従業員への無香料化や商品への移香が起こらないよう対策を講じてほしい旨要望した。これは、障がい者差別解消法の合理的配慮と新潟市障がいのある人もない人も共に生きるまちづくり条例の理念に合致すると考え新潟市障がい福祉課につないでもらったが、令和7年7月3日に障がい福祉課は、前述の店舗や機関に対し次の理由により「つながない」とした回答があった。
(1)香害に対し直接的な法律がなく国は日用品使用を規制していない。
(2)本当に悪いものを日用品に使用しているのなら国が規制するはず。
(3)市としての発言は重く影響力が大きいため言えない。
この返答を何度熟考しても国からの香害に関する事務連絡や周知依頼は軽い扱いで良く、国の事務連絡は影響力が無いため市が協力する必要は無いという判断としか思えない。また、内閣府の「つなぐ窓口」は、相談のあった事項が障害者差別解消法の合理的配慮の対象となる案件か否かを審査の上、つなぐ必要があるものだけを相談者在住の市町村につなぐ仕組みであることから、障がい福祉課の「つながない」とする独自判断は国の施策や条例に反する行為であり、香害による人権侵害に対する認識が軽微かつ希薄である。
なお、2024年末に、「つなぐ窓口」に相談した「薬局の薬への移香問題」に関しては同課からつないでもらった結果、双方の話し合いも進み、香害への理解が少しずつ深まっている経緯がある。なぜ、今回の件はつながないとしたのか理解できない。
所管部署:障がい福祉課
上記のような事例が起こる要因として、市は香害や化学物質過敏症に対し、職員が理解しているか否かの確認もしておらず、香害への対応を職員個人の裁量に任せっきりのため、ここ数年間殆ど変化がないという現状がある。最初の訴えから四年経過した現在でも市は香害で苦しむ市民への配慮が必要だと認識していないとしか思えない。
また、香害は化学物質過敏症患者だけの話しではなく、妊婦や抗がん剤を使用している方、喘息や皮膚疾患等に関係する問題であるにもかかわらず、全くと言っていいほど取り組みがなされないことは、障害者差別解消法の合理的配慮への理解と人権意識が不十分であることが要因である。
所管部署
都市政策部都市交通政策課(以下「所管課A」という。)
保健所食の安全推進課(以下「所管課B」という。)
保健所環境衛生課(以下「所管課C」という。)
福祉部障がい福祉課(以下「所管課D」という。)
調査の結果の要旨
令和7年12月17日決定
申立人の主張及び各所管課の説明と双方から提出のあった資料に基づき、当審査会では以下のとおり判断し調査結果とします。
第1 事実経過
(1)令和6年3月27日から同年4月25日まで、所管課Aが「新潟市地域公共交通計画(素案)」に対するパブリックコメントの意見募集を実施した。
(2)同年4月24日及び同月25日、申立人が電子メールにより上記パブリックコメントに対する意見を提出した。意見の内容は「公共交通の無香料化を目指し、香害に対する正しい情報をこの計画に組み込んでほしい。」というものであった。
(3)同年6月7日、所管課Aが「令和6年度第1回にいがた都市交通戦略推進会議」を開催し、パブリックコメントの「意見に対する市の考え方」や「新潟市地域公共交通計画(最終案)」等について説明を行った。
(4)同年6月25日、所管課Aが市ホームページ等にパブリックコメントの実施結果を掲載した。掲載内容は「本市では、市民の皆様に香害に関する情報をホームページに掲載など周知・啓発の取り組みを行っています。交通に関する個別計画内への位置づけは行いませんが、引き続き周知・啓発に努めていきたいと考えています。」というものであった。
(5)令和7年1月、申立人が、内閣府の「つなぐ窓口」に対し、オーガニック食材を扱う店舗、銀行及び郵便局の香料使用に関する配慮を求める旨の相談を行った。
(6)同年1月10日から同年2月9日まで、所管課Bが「新潟市食の安全基本方針(第4次改定素案)」に対するパブリックコメントの意見募集を実施した。
(7)同年2月9日、申立人が電子メールにより上記パブリックコメントに対する意見を提出した。意見の内容は「私は香害によって化学物質過敏症を発症し、体調不良が起きるなどして困っています。食という観点からも、『無香料商品の推奨』『無香料石鹸やアルカリ剤の推奨』『オーガニック化の推進』を行うなどしてほしい。」というものであった。
(8)同年3月3日、所管課Bが令和6年度第2回新潟市食の安全意見交換会を開催し、第4次改定(案)及びパブリックコメントにおける回答案について、各委員と意見交換を実施した。
(9)同年4月1日、所管課Bが市ホームページ等にパブリックコメントの実施結果を掲載した。掲載内容は「本市では、これまでもホームページへの香害に関する情報の掲載及び、庁舎内掲示板へのポスター掲示等により、香料等によって体調を崩す人がいることの周知や人の集まる場所等での配慮をお願いしてきました。今後も取り組みは続けていきますが、本計画内での位置付けを行う予定はございません。」というものであった。
(10)同年5月30日、申立人と所管課D担当職員が電話連絡を行い、申立人は「つなぐ窓口」に相談した内容と同様に、オーガニック食材を扱う店舗、銀行及び郵便局の香料使用に関する配慮を求める旨の説明を行った。
(11)同年6月30日、所管課Dが「つなぐ窓口」から電子メールで申立人の具体的な相談内容の提供を受けた。内容は、同年5月30日に申立人が説明した内容とほぼ同趣旨であった。
(12)同年7月3日、所管課D担当係長と申立人が電話連絡を行い、所管課Dとしては、合理的配慮提供の余地は認識しつつも、過重な負担が伴うことが見込まれるため対応が困難である旨を説明した。
第2 審査会の判断
1 申立ての趣旨1について
申立人は、所管課Aと所管課Bのパブリックコメントに香害への配慮を求める意見を提出したが、市の回答では「香害に関する情報をホームページで周知している」などと記載されていた。しかし実際に市ホームページで「香害」で検索しても該当情報が見つからず、回答は虚偽であるとして、回答内容の訂正と理由の公表を求めています。
これに対し、所管課Aと所管課Bは、所管課Cが市ホームページ上で化学物質過敏症に関する説明を掲載し、その中で香水・芳香剤等の化学物質が症状を引き起こす可能性に触れていること、また国(消費者庁)が作成した柔軟剤等の香りに関する啓発ポスターへのリンクが掲載されていること、さらに消費生活センターによる香りのマナー啓発情報も掲載されていることを理由に、これら一連の情報が「香害に関する情報の掲載」に該当すると判断し、回答は虚偽ではないとの見解を示しています。
当審査会の判断は次のとおりです。新潟市のホームページには、所管課Aと所管課Bが説明するように、所管課Cによる化学物質過敏症に関する情報の中で香水や芳香剤等が化学物質を発散し症状を引き起こす可能性に触れた記載が掲載されているほか、国(消費者庁)が作成した柔軟剤等の香りに関する啓発ポスターへのリンク、そして消費生活センターにおける香りのマナーに関する啓発ポスターも掲載されています。申立人としては、これらの掲載内容のみでは十分な周知とは言えないとの受け止めに至ったことは理解できるところですが、「香害(こうがい)」という用語は法律上の明確な定義がないため、行政内部でも表記や扱いに幅が生じ得ます。そのため、市ホームページ上で「香害」という語を検索しても該当情報が表示されなかったという事実のみをもって、所管課A・Bの回答が虚偽であると評価することはできないと判断いたします。
2 申立ての趣旨2について
申立人は、国が2021年(令和3年)及び2023年(令和5年)に香害への周知や配慮を呼びかけているのに対し、市では十分な周知が行われていないと訴えています。市ホームページには「シックハウス症候群と化学物質過敏症」のページと外部リンクはありますが、画像や事例を使った直接的な周知はなく、2023年2月(令和5年2月)の北区役所だよりに掲載された程度で、市の周知は不十分としています。
これに対し、所管課Cは、国の事務連絡発出後、本市においても啓発ポスターの市公式サイトへの画像付き掲載、市立学校・幼稚園や保育施設、建築物衛生関係者、医療関係団体への周知依頼など、複数の手段で周知啓発を行ってきたと説明しています。また、消費生活センターの「その香り困っている人もいます」ページにおいてはポスター画像を用いた直接的な周知を行っており、「香害」という用語は公的に明確な定義が存在しないため、市ホームページ上での表記には困難があるものの、関連情報の掲載や外部リンクの提供を通じて可能な範囲で情報提供に努めているとの見解を示しています。
当審査会の判断は次のとおりです。「香害(こうがい)」という用語には法律上の明確な定義がなく、行政内部でも表記や取扱いに幅が生じ得る概念であることから、市が公式ホームページで同語を使用していないからといって、直ちに不当と評価することはできません。また、市においては、関係部局がそれぞれの所掌に応じて周知啓発に取り組んできた経緯もあり、対応が直ちに不足しているとまではいえません。
もっとも、申立人が訴える症状や生活上の負担は日常生活に著しい支障を生じさせる重大なものであり、その困難の程度は当審査会としても軽視できません。しかし、香料等の化学物質に対する反応は個々で大きく異なること、香り付き製品が多様な形で広く流通している現状、さらに公共施設等が不特定多数の利用者により共用されている状況を踏まえると、特定の物質を一律に規制したり、公共空間において香料使用を包括的に制限したりすることは現実的に困難です。他の利用者の利益や自由との調整も避けられず、市として積極的な周知・啓発にも一定の限界があるといえます。
なお、当審査会が過去の同趣旨案件の調査結果(令和5年12月11日付新行苦第5-14号の7)において、市に対し「より実効性の高い、職員への周知方法の検討」を要望していた点について、所管課Cは、その後も庁内掲示板での掲示や、特定建築物施設に該当する市施設の庁舎管理者に改訂ポスターを送付するなど、継続的に職員向け周知を行ってきたと説明しています。しかし、その内容はこれまでの間に大きく変わるものではなく、実効性の高い職員への周知方法が、検討されたのか疑問が残る現状であり大変残念です。
この点については、なお一層の見直しと改善が求められるものといえます。
3 申立ての趣旨3について
申立人は、内閣府の「つなぐ窓口」を通じて、オーガニック食材店、銀行、郵便局に対し、従業員の無香料化や商品への移香防止策を講じてほしいと要望し、これは障害者差別解消法上の合理的配慮に当たるとして、所管課Dにつないでもらったと主張しています。しかし、同課は令和7年7月3日、香害に関する直接の法規制がなく、香り付きの日用品については国が規制すべき領域であること、市の要請は社会的影響が大きく慎重な対応が必要であることなどを理由として、当該店舗・機関への働きかけは行わないとの回答を行いました。申立人は、これが国の事務連絡の趣旨を軽視し、制度の目的にも反すると考え、不当であると訴えています。
これに対し、所管課Dは、香害が合理的配慮の対象となり得る場合があることは認めつつも、香り付き製品が社会全体に広く普及している現状では、個別事業者に無香料化などを求めることは現実的に困難であると説明しています。合理的配慮の具体的内容は、当事者と事業者が建設的な対話を通じて検討すべきものであり、行政が一律に求める性質のものではないとも述べています。また、「つなぐ窓口」は合理的配慮該当性を審査する機関ではなく、自治体が対応可能と判断される案件を取次ぐ仕組みにすぎず、「つながない」と明示した事実も確認されていないとしています。そのうえで、情報提供や周知啓発には取り組んでいくが、抜本的解決には国による制度的対応が必要であるとの見解を示しています。
当審査会の判断は次のとおりです。まず、所管課Dが申立人に対し「つながない」という冷淡で事務的な対応を実際に行ったかどうかについては、記録上確認できず、この点を断定的に判断することはできません。むしろ、申立人と所管課D双方の説明からは、令和7年(2025年)5月以降、複数回にわたり具体的なやり取りが行われていたことが認められ、この間、一定の意思疎通が図られていたものと考えられます。
他方、申立人が訴える症状や生活上の負担は日常生活に著しい支障を生じさせる重大なものであり、その困難の程度は当審査会としても真摯に受け止める必要があると考えます。しかしながら、合理的配慮の内容を検討するにあたっては、香料等への反応が個々で大きく異なること、香り付き製品が多様な形で社会全体に広く流通している現状、さらに公共施設等が不特定多数の利用者により共用されている実情を踏まえると、公共空間において香料の使用を一律に制限することは極めて困難です。他の利用者の利益や自由との調整も避けられず、合理的配慮は一方の権利のみを絶対的に優先するものではなく、公共の利益や過重な負担との衡量のもとで実施されるべきものとされています。
このため、香害や化学物質過敏症に関する合理的配慮は法の趣旨には沿うものの、物理的・社会的・財政的制約を踏まえると、市が事業者等に対し一律的・包括的な対応を求めることは現時点では現実的でないと判断せざるを得ません。現状で取り得る実効性のある対応としては、幅広い情報提供や周知啓発を通じて、個々の事業者や市民の理解と自発的配慮を促すことにとどまるものと考えます。なお、抜本的な解決には、原因物質の規制や製品表示の改善など、国による制度的対応が不可欠であり、市としてはこうした動向を踏まえつつ、今後も関係部局が連携して理解促進と周知啓発に取り組むことが望まれます。
4 以上の調査結果を踏まえると、本件申立てに関し、所管各課の対応が虚偽であるとか、著しく不適切であると評価すべき事情は認められません。したがって、新潟市行政苦情審査会規則第16条第1項に基づき、市長等に対して意見表明又は提言を行う必要はないものと判断いたします。
もっとも、本件申立てを通じて、香り付き製品により日常生活に深刻な影響を受けている市民が存在すること、またその困難が周囲に理解されにくい性質を有していることが改めて示されたものといえます。市としても、こうした市民の実情に配慮し、引き続き丁寧な情報提供や周知啓発の在り方について検討を進めることには意義があると考えます。特に、当審査会が過去の同趣旨案件(令和5年12月11日付新行苦第5-14号の7)において指摘した「より実効性の高い職員周知」の必要性については、所管課が一定の取組を継続しているものの、その内容が前回と大きく変わっていない点も確認されました。この点については、香り付き製品をめぐる社会的関心の高まりも踏まえ、今後さらに改善の余地があるものと考えられ、継続的かつ効果的な職員周知の方法について、より積極的な検討が望まれます。
また、市ホームページにおける市民への周知の現状も積極的とは言い難く、むしろ後退した感が否めません。香り付き製品の使用を規制することは現状不可能としても、「香により体調を崩す人がいること、そのような人への配慮を求めること」この点についても、周知内容のなお一層の見直しと改善が求められるものといえます。
規則第16条第1項
審査会は、苦情等の調査の結果、必要があると認める場合は、市長等に対し、当該苦情等に係る市の業務について、是正その他の改善措置(以下「是正等」という。)を講ずるよう意見を表明し、又は制度の改善を求める提言をすることができる。
このページの作成担当
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