(7‐5)生活保護の決定の不備と市長への手紙の対応の不備

最終更新日:2025年9月10日

(7-5)生活保護の決定の不備と市長への手紙の対応の不備

令和7年5月29日 苦情申立書受理

申立ての趣旨(要約)

1.令和6年12月〇日付け新〇〇第〇〇号、新潟市A福祉事務所長名で発出された、生活保護の停止を延長する旨の保護決定通知書について、停止処分に至った法的根拠を示した上で停止処分の改善をしていただきたい。
(理由)
 上記の「保護決定通知書」に同封された「生活保護の再開の件について」の文書に記載されている生活保護の再開に向けた確認事項には、私が主張している居住地である新潟市A区には、居住地が確保されているとは言い難い状況にあるとして保護を再開することができない旨記載されているが、そのことは第三者からの居住地に関する報告によるもので、担当職員の個人的裁量判断であり法令に基づいた判断がなされていない。
 また、上記、保護決定通知書には停止処分に至った理由として記載されていないが、令和6年12月13日に行われた保護再開に向けた面談では、上記居住実態の件の他、私の場合は車の保持を認めていないこと、車を保持する場合は任意保険に加入しなければならないことを口頭により指導を受けたが、日本で定める法律の趣旨とは異なる発言であり、法律に基づく指導を担当者に求めたが適正な指導はなされなかった。
 なお、今回の保護決定通知書による決定事項については、通知書に記載された教示により、令和7年1月〇日付けで新潟県知事に対し、行政不服審査法による審査請求を行っている。

2.上記担当職員の対応は公平性が欠如した個人裁量の判断であったため、その内容を市長への手紙の制度を利用し手紙を送付したが、A区役所内における事務処理では、市長、区長、福祉事務所長に宛てた手紙が、上記の処理、指導をした職員がその対応をしている状況で、不正を隠蔽できる構造となっているため改善をしていただきたい。
(理由)
 私は、市長、A区長、A区生活保護担当課長の三者宛てに、令和6年12月19日付けで「生活保護制度の偏見改善人権保護に関する嘆願書」を、令和7年1月28日付けで「生活保護受給停止の判断基準に関する嘆願書」をA区市長への手紙担当課に提出したが、通常20日程度で届くはずの回答が3月になっても届かなかったことから不審に思い、3月初旬に提出先に問い合わせたところ、嘆願書の内容が生活保護に関することであるため、担当課に対応を引き渡したとの返答があった。
 手紙の内容は上記1.にあるように、生活保護担当職員の不正について指摘しているのに、不正を疑われる担当職員のいる所属に対応を引き渡し、その担当職員が事務対応をするという仕組みか理解できない。また、担当職員からは、嘆願書に回答を希望する旨の記載がなかったため回答していないとの発言があり、上席に申告されることを妨害するため自分のところで差し止めていると感じた。
 その後、一か月が経過しても回答がなかったため、令和7年4月3日付けで改めて「新潟市A区役所職員から新潟市民に対する人権侵害事例について被害報告書」と題した市長への手紙を作成し、以前に提出した嘆願書二通を証拠書類として添付し提出した。
 令和7年4月28日付けで、A区長名による回答が届いたが、回答内容は私が指摘した内容の回答とは程遠い記述しかなかった。これに違和感があったので、市長への手紙担当課に問い合わせを行い再度の回答を求めたところ、一度取扱って対応した事案については今後対応しない旨の説明を受けた。
 結論として、市長への手紙は、市職員の不正を指摘する内容であっても、その事案を担当する職員が回答を作成するという形式になっていて、不正事実の確認など第三者的な視点からの事実確認の作業が行われないまま、不正職員が自らの主張を繰り返す回答を作るだけの隠蔽制度になっている。別の区の生活保護担当職員が、第三者的な視点で、「法令に基づいた指導であったのか、公平公正な対応であったのか」などが確認できる制度内容、仕組みに改善を求める。

所管部署

A区市長への手紙担当課(以下「所管課A」という。)
A区生活保護担当課(以下「所管課Bという。)

調査の結果の要旨

令和7年9月5日決定

 申立人の主張及び所管課A・Bの説明と双方から提出のあった資料に基づき、当審査会では以下のとおり判断し調査結果とします。

第1 事実経過
(1)令和5年6月20日、申立人が生活保護を申請。同日付で受理。
(2)令和6年11月23日、新潟市A福祉事務所長が、申立人に対する生活保護停止処分。
(3)同年12月19日、申立人が新潟市長、A区長及びA区生活保護担当課長宛に「生活保護制度の偏見改善人権保護に関する嘆願書」を提出。
(4)同年12月〇日、新潟市A福祉事務所長が申立人に対する生活保護停止を令和7年5月〇日まで延長する旨の決定(新〇〇第号〇〇号)。
(5)同日、所管課Bが申立人に対し居住地が確保されているとは言い難く生活保護を再開することができないこと、再開するために必要な確認事項(生活実態)を書面で連絡。
(6)令和7年1月〇日、申立人が新潟県知事宛に行政不服審査法による審査請求書を提出。
(7)同年1月28日付けで申立人が新潟市長、A区長及び新潟市A福祉事務所長宛に「生活保護受給停止の判断基準に関する嘆願書」を提出。
(8)同年4月3日付けで申立人が新潟市長、A区長及び新潟市A福祉事務所長宛に「市長への手紙新潟市A区役所職員から新潟市民に対する人権侵害事例について被害報告書」を提出。
(9)同年4月28日、A区長が市長の指示の下、申立人に対し上記(8)の手紙に対する回答を実施。

第2 審査会の判断
1 生活保護停止処分に関する苦情について
 まず、申立人は、令和6年12月〇日付け新〇〇第〇〇号新潟市A福祉事務所長名で発出された生活保護の停止を延長する旨の決定について、停止処分に至った法的根拠を示したうえで処分の改善を求める旨の苦情を述べています。しかしながら、当該停止処分は生活保護法に基づき行われたものであり、申立人は既に令和7年1月〇日付けで新潟県知事に対し行政不服審査法による審査請求を行っています。したがって、本苦情は、新潟市行政苦情審査会規則第11条第1項第1号、新潟市附属機関設置条例別表新潟市行政苦情審査会の項第1項第2号「判決、裁決を求め現に係争中の事項」の調査対象外事項に該当するため、当審査会において判断することはできません。

2 「市長への手紙」制度の運用に関する苦情について
(1)申立人は、所管課Bの生活保護担当職員の不適切な対応を指摘する嘆願書や手紙を、市長への手紙の窓口である所管課Aに提出したが、手紙への対応は担当課である所管課Bに引き渡され、不適切な対応をしたとする当該担当職員が事務対応を行っており、第三者的視点による検証がなされていない。市長への手紙制度は、不正を隠蔽する構造になっているため制度の改善を求める旨苦情を述べています。
(2)これに対し、所管課Aは、申立人の手紙は、「市長への手紙」事務取扱要領に則り、所管課Bが回答案を作成し、区長が確認のうえ回答した。この対応は組織として適切に対応しており、個人の裁量によるものではなく、職員の不正を隠蔽できるものでもないと説明しています。
(3)以上をふまえた当審査会の判断は次のとおりです。
 「市長への手紙」事務取扱要領(以下「要領」という。)第4条は、原則として市長が回答することを定める一方、「地域に関する、日常生活に即したもの」(同条第1項第1号ア)、「区に限定されるもの」(同号イ)、「その他、市長が区長からの回答が適当と判断したもの」(同号ウ)については区長が回答し、また「所属の具体的及び個別的な所管事務に関するもの」(同条同項第2号ア)等については所属長が回答することを規定しています。本件手紙は、生活保護制度の具体的運用に関するものであり、所管課Bの判断が必要となる事案です。このため、要領に基づき、区長が所管課Bから事実関係等を確認のうえ回答を行ったことは、制度の趣旨に則った適正な取扱いであるといえます。
 申立人は「不正を指摘した内容を当該職員が処理するのは不適切」と主張していますが、上記要領では、所属の具体的及び個別的な所管事務に関するものや詳細な説明が必要なものについては所管課が調査や回答を行うことを予定し、その結果を市長に報告する仕組みとなっています。これは、市政に寄せられた意見等に対し迅速かつ的確に対応するための制度設計であって、不正を隠蔽することを目的としたものではなく、むしろ、最終的には市長または区長が確認し報告を受けることにより、組織的な統制が図られていると言えます。
 したがって、本件所管課の対応は「市長への手紙」事務取扱要領に則り適正に処理されたものと判断します。
 また、申立人は、別の区の生活保護担当職員が、第三者的な視点で、法令に基づいた指導であったか、公平公正な対応であったかを確認し回答するなどの体制、仕組みへの改善を求めていますが、市長への手紙制度においては、手紙により指摘された事項を、第三者的な職員がその対応を判断して回答するなどといった、監査的なことを想定しているものではありません。
(4)なお、申立人が令和6年12月19日付及び令和7年1月28日付で提出した「嘆願書」について、所管課Bは回答を実施しておりません。その理由として、申立人には嘆願書提出以前から保護再開に向けた手続について、A福祉事務所の担当現業員及び査察指導員が口頭や電話により繰り返し説明してきたこと、また嘆願書の内容が従前の説明と同様であったため、改めて回答が必要かどうかの確認を行わず、手続を進めていなかった旨を説明しています。その後、申立人から回答を求める申出があり、回答の作成に着手しましたが、申立人が嘆願書を取下げ、同内容の「市長への手紙」を提出されたため、最終的に回答には至らなかったということです。
 この点、可能な限り丁寧に意思確認を行うよう注意することが望ましいと考えます。特に、申立人の意向や要望が明確でない場合であっても、回答の要否について十分に確認し、誤解や不信を生じさせないよう配慮を心掛けてほしいと考えます。

 以上のとおり、当審査会としては、本件苦情に係る所管課の対応に不適切な点はなく、新潟市行政苦情審査会規則第16条第1項に基づく市長等への意見の表明または提言を行う必要はないものと判断いたします。

規則第16条第1項
 審査会は、苦情等の調査の結果、必要があると認める場合は、市長等に対し、当該苦情等に係る市の業務について、是正その他の改善措置(以下「是正等」という。)を講ずるよう意見を表明し、又は制度の改善を求める提言をすることができる。

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