いのちの奔流
水玉と網。無限の宇宙を旅するように作品が生まれてくる。絵画、ドローイング、小説、詩、インスタレーション、ファッション、そのどれもが渾然一体となって境目はなく、融通無碍の神性を帯び、全てが彼女の分身とも見える。
おそらく、彼女にとって作品は「創る」モノではなく、深い核心から「ほとばしり、生まれてくる」モノなのだろう。その混じり気のなさが、まがい物や理屈を蹴散らし視る者の意識下に一直線に突き刺さり、世界を魅了する。
比類なきその生きざまに敬意と限りない賛辞を表し、第9回安吾賞を贈ります。
このたび、この栄えある賞のお話をいただき、私は坂口安吾さんの人生観とその生き様に共鳴を抱きました。また多くの方々が安吾さんに対する畏敬の念を抱いていることを知り、深く感動いたしました。
人生をかけて命がけで闘ってきた、前衛芸術家・草間彌生の足跡を、みなさんが見出し、共感してくださったことに深く謝意を述べさせていただきます。
私は幼少の頃よりたくさんの作品を描き、宇宙の神秘、人類への畏敬の念をもっと見出すことに心血を注いでまいりました。
この危機の時代において、もっとも人々が目覚めなくてはならないことは、全世界の人間への畏敬の念と生への賛美の志であります。
みなさん、宇宙からすべての水玉の命への偉大なる尊敬を切望すること、そして大いに手をつないで志をひとつにして、この混乱にみちた世界を人間らしく闘い、それぞれが世界の平和と愛に貢献するため、自分たちの努力をもって打ち立てていきましょう。
草間彌生からみなさまへのメッセージです。
前衛芸術家、小説家。長野県生まれ。
幼少より水玉と網目を用いた幻想的な絵画を制作。1957年単身渡米、独創的な作品と活動はアート界に衝撃を与え前衛芸術家としての地位を築く。1973年帰国後も全世界を飛び回り活躍中。小説、詩集なども多数発表。
1983年、小説「クリストファー男娼窟」で第10回野性時代新人文学賞受賞。
1993年第45回ベニス・ビエンナーレに参加。2000年、第50回芸術選奨文部大臣賞、外務大臣表彰。2001年、朝日賞。2003年フランス芸術文化勲章オフィシェ、長野県知事表彰(学術芸術文化功労)。2004年、信毎賞。2006年、ライフタイム・アチーブメント賞(U.S.A.)、旭日小綬章、高松宮殿下記念世界文化賞。2009年、文化功労者顕彰。2012年アメリカン・アカデミー・オブ・アーツ&レターズ会員。
2012年には欧米の主要美術館を巡回する回顧展が開催された。
2013年より初のラテンアメリカでの回顧展巡回、アジア巡回個展が始まり、現在も各地を巡回中。