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第6回安吾賞受賞者

荒木経惟

選評

天才アラーキー
被写体との往還

コトバの人でもある。「天才アラーキー、写狂老人、私写真、墨汁綺譚、包茎亭日乗、冬恋、写真私情主義、写神、陶景、写真心中、エロトス、空事、クルマド・トーキョー、東京ホーシャセン、彼岸…」。いずれも写真集のタイトルだが、本を開くまでもなく読むだけで何かが匂い立ってくる。

天才アラーキーはシャッターは鼓動と同じ、と言う。作品のために撮るのではなく、他者でもなく、同化でもなく、今そこにある「何か」と撞着していく風情である。自分と被写体との間を何度も往還しながら、既成観念から解き放たれてゆく。そこでは世間の規範はキレイに消え去って、アラーキーの画とコトバが誕生し、活き活きと呼吸し始める。その生命力に人々は瑞々しい元気をもらう。アラーキーは二人はいない。

本人コメント

スケールは違うけど、気分的に似たとこあるかもね。

写真を撮ることは
生活であり、人生。

最後の唯一の身近な愛である、愛猫チロちゃんが死んじゃったりしたこともあるんだろうけど。あっちもこっちもこの世だけど、車の窓越しから見る東京の街があっち側に見えたんだな、『彼岸』としてまとめようと撮ってた時だよ。津波が来て、原発でしょ。でも、アタシの場合はそこに行く資格がないでしょ。行って何すんの。生まれた時から写真撮ってるんだから、行くと、きっと夢中になって撮っちゃう。だから行かない!その代わり、自分んちのバルコニーを楽園に見立てて、闇の世界に花を捧げるっつー気持ちで『楽園』を撮った。誰だかわかんないけど、そういうの、見ててくれるヤツがいるんだね。アタシはシャッター音が鼓動みたいなもんで、写真を撮ること自体が生活であり、人生。写真は自分をさらしているだけでメッセージなんてないけどさ。安吾賞は、そんな生き様にご褒美をくれるっていうんだから、嬉しいよ。陰影とか、シャッターチャンスとか、写真の表現の善し悪しなんてチャチなことじゃなくて、生き様っていう基準が、ホント嬉しいよね。

「死」から生み出される「生」への力。

この夏は唯一の親友がぽっくり死んじゃったりして、嫌なんだよ。ここのところ「死」がスゴく身近にあって。ところがさ、「死」が連続するほど、「生」に向かう力が出てくんだよ。前立腺がんもあって、2009年に『遺作 空2』も出したのに、今アタシの写真は切れ味いいんだよ、冴えてんの。若返ってる感じさえあってね。ライバルである北斎の「画狂人」のダジャレで『写狂老人日記』を出したばっかりだけど、老人は早まったなって思っているくらい。ネガ・フィルムにキズをつけた『写狂老人日記』は、手のぬくもりや触感から離れているデジタルへの反逆みたいなもので、破壊しているようにみえて、プリントした画像は、再生とか復興とか、なぜか「生」に向かってて面白いわけ。「死」とか、世の中の事件とか、いい女には、ヘコまされるけど、教えられることもあって、エネルギーもらえて、元気づけられるところがあるよね。

生き続ける、そして撮り続ける。

坂口安吾は、なんとなく知ってるけど、法隆寺が焼けても一向に困らぬとか、戦争は偉大な破壊であるとか、危ね〜よな。当時そんなこと言ったらマズかったんじゃないの。安吾には偏屈なところがあるよな。ただ、破壊から再生が生まれるとか、スケールは違うけど、気分的に似たところがあるかもね。アタシは天国と地獄を行ったり来たり綱渡りしながら、いい加減だけど、生き続ける、撮り続ける。今、世の中と自分が呼応して、ゼッコウチョー。そんな気分のところにもらった賞は、カンフル剤みたいなもの。また、長生きしちゃうね〜。

プロフィール

略歴

  • 1940年生まれ。東京三ノ輪(現・東京都台東区)出身。

  • 1963年、カメラマンとして電通に入社。電通を退社後フリーに。
  • 1981年、有限会社アラーキー設立。1988年、AaT ROOM開設。
  • 1964年、『さっちん』で第1回太陽賞受賞。
  • 1991年第7回東川賞国内作家賞、1994年日本文化デザイン大賞、1999年織部賞など受賞多数。日本のみならず海外でも注目が集まり、多くの美術館やギャラリーで展覧会を行う。
  • 2008年には、世界的に活躍する芸術家に贈られる、オーストリアの芸術分野における最高位の勲章「オーストリア科学・芸術勲章」受勲。

主な代表作に、『愛しのチロ』、『センチメンタルな旅、冬の旅』、『東京物語』、『エロトス』、『花曲』、『写真全集全20巻』、『東京ラッキーホール』、『人妻エロス』、『ARAKI by ARAKI』、『チロ愛死』、『写狂老人日記』、『写真夏2011』等、写真集約430冊。

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