心優しき偉丈夫
強面である。しかし天野氏の撮る写真には何となく温かな人間味を感じるのは、自身がどこか自然と同期しているからではないだろうか。佐渡の「弁慶」(コブダイ)も「天然杉」も凍てついた雪原でさえ、写真を目にした途端に惹きつけられるのは、熱くて優しい天野氏の眼を通してある特別な瞬間を切り取っているからだろう。
新潟の自然の中で美意識を育まれたと語る天野氏は、心の眼でシャッターを切ることで自然に恩返しをしているのかも知れない。心優しき偉丈夫の今後の作品にも期待が高まるばかりである。
「堕落論」という感覚
私は新潟市旧巻町で生まれ育ちました。巻町には山や海など豊かな自然があり、かつては県内最大の潟であった鎧潟もありました。子どものころ、そんな豊かな自然の中で遊ぶことで、知らず知らずのうちに美意識が生まれてきたのだと思います。
その経験が現在取り組んでいる生態風景写真やネイチャーアクアリウムの制作に役立ち、今回の賞をいただくことにつながりました。私を育んでくれた新潟市の賞をいただくことができ、たいへんうれしく思います。
天野尚
略歴
- 写真家。1954年新潟市生まれ。1975年よりアマゾンをはじめとした熱帯雨林を中心に大自然の撮影に取り組んできた。特別に生産された最大8×20インチの超大判フィルムを駆使して自然を克明に、精密に記録した生態風景写真は他に類がなく、国内外で高い評価を得ている。また、豊富な自然体験をいかし、生態系の概念を取り入れた水草レイアウト「ネイチャーアクアリウム」の水景制作を同時に行い、風景写真と水景が相互に関係した独自の芸術性を追求している。
- 2008年にはG8洞爺湖サミット会場に佐渡原始杉の特大パネル2作品が展示され、国内外のメディアで大きく取り上げられた。また、2012年開業の東京スカイツリータウン・すみだ水族館には、幅7メートルと4メートルの超巨大ネイチャーアクアリウム(水草レイアウト)が設置され好評を博している。 近年は写真展や講演活動を通して、国内外で環境保全の重要性を訴えている。世界環境写真家協会会長。
- http://www.amanotakashi.jp/
- http://www.adana.co.jp/jp/
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