2020発掘調査ニュース
最終更新日:2021年3月4日
2020年度の発掘調査と整理作業の様子をお届けします
文化財センターでは、埋蔵文化財の発掘調査と調査によって出土した土器や石器の整理作業を行っています。
普段目にすることがない業務の状況をニュースでお届けします。
発掘調査の種類【3月5日更新】
試掘・確認調査の様子
試掘坑で観察する土の堆積状態
遺跡の発掘調査にはいくつかの種類があり、主に遺跡の有無について調べる「試掘調査」、遺跡における遺構・遺物の分布等について調べる「確認調査」、そして「本発掘調査」などがあります。今年度は新潟市内でも多くの調査が行われました。
秋葉区
なお、同地内にある
岡崎遺跡埋め戻し作業【2月19日更新】
埋め戻し作業の様子
これから鋼矢板の引き抜き作業
新潟中央環状線
発掘調査終盤の一大業務【12月3日更新】
11月上旬、
発掘調査終盤には調査区全体の完掘写真を撮影するため空中写真撮影を行います。デジタルカメラだけの撮影であればドローンでもいいのですが、新潟市ではデジタルカメラのほかに、長期保存が確認されているフィルムカメラでも撮影するため、ラジコンヘリを飛ばしての撮影を行いました。
事前に天気予報を確認して撮影日を決め、その日に間に合うように全体清掃を2日かけて行うなど、発掘調査最後の一大業務です。今年は11月でも晴れた日が多く無事に撮影することができました。
中学生が道正遺跡 を見学【11月19日更新】
11月12日(木曜)発掘調査を行っている地元の
「初めて遺跡の発掘調査現場を見た。」「
道正 遺跡で総柱 建物が見つかりました【11月3日更新】
道正遺跡で平安時代(9世紀後半)の建物がみつかりました。規模は2
道正 遺跡で船が描かれた線刻土器 が見つかりました【10月23日更新】
6月の発掘調査ニュースでご紹介した道正遺跡の古墳時代前期(4世紀)の一括廃棄された土器群を整理したところ、船が描かれた壺の破片が見つかりました。
船は弥生時代に発明された「
保存処理カードの役割【10月23日更新】
文化財センターの保存処理室では、おもに木や金属でできた遺物(遺跡から発見される、昔の人々が使っていた道具のこと)を対象とした劣化防止のための保存処理作業を行っています。その際に作られるのが保存処理カードです。
保存処理カードは、医者が患者ひとりひとりに対して作るカルテ(医療記録)と同じように、保存処理を行う遺物1点1点に対して、どのような方法で保存処理をしたか記し、実際に行われた作業の工程を記録するものです。保存処理カードは、将来、遺物が破損した場合に修復する人や、研究を行う人に遺物の正確な情報を伝えるための重要な記録となります。
岡崎 遺跡で柵列 が見つかりました【10月23日更新】
柵列(わかりやすいように線をひいてあります)
画像は岡崎遺跡の奈良・平安時代のピット(小さな穴)が列になって並んだものです。何の変哲もないピット列ですが、砂丘の斜面部の等高線に沿って並んでいることがわかります。列の右に砂丘の頂部、左に砂丘
古津八幡山遺跡確認調査 ~4トレンチの発掘調査~【10月17日更新】
10月3日に開催した発掘調査現地説明会では、大形竪穴建物の調査成果を中心に参加者の方々に説明しました。
今年は他にも、その大形竪穴建物から尾根筋を北西方向に40mほどいった場所(4トレンチ)で、『弥生時代の遺構があるのか』ということを確認するためにトレンチ調査も行いました。
その結果、弥生時代と考えられる溝や柱穴、縄文時代の土坑などを確認しました。これらの遺構がどのような性格を持っているのか、生活の痕跡なのか、排水や区画をするための溝なのかということについては、現時点では分かりません。来年度の発掘調査では、これらのことや、さらに北側へ向かって遺構がひろがっているかを確認することが主な課題となります。きっと新たな調査成果が得られると思いますので、楽しみにしていてください。
史跡古津八幡山 遺跡の発掘調査進む!【9月29日更新】
大形竪穴建物の発掘調査風景
一辺約9.5mと古津八幡山遺跡の中で最大の大形竪穴建物の調査が進み、通常の竪穴住居に見られる炉や貯蔵穴を持たない建物であった可能性が高くなってきました。このことから、居住以外の利用が推測されます。また、上屋を支える柱は一般的な4本ではなく、多柱の構造になることが分かってきました。一方、この大形竪穴建物に一部重複する一辺約4mの竪穴住居では、炉や貯蔵穴、上屋を支える柱4本などが見つかっています。
10月3日(土曜)には現地説明会を開催します。当日は10時と13時から調査担当者による説明や、出土品の展示を行いますので、現地へお越しください。
道正 遺跡で古墳時代の竪穴建物が見つかる【9月29日更新】
竪穴建物の一部が見つかった状況(北から)
道正遺跡で古墳時代の竪穴建物が見つかりました。当時の生活面を約70センチメートル掘り込み、砂丘の層を床面としています。屋根を支える柱穴、壁の崩れを防ぐための壁際の溝などが見られます。また、掘り上げた土を建物の周囲に堤防状に盛り土をしていたこともわかりました。
建物の規模は現状からの推定ですが、約9メートル四方(およそ24畳)ほどの大形建物で、出土した土器から古墳時代前期(4世紀)のものと考えられます。
岡崎 遺跡で石製腰帯具 が出土しました【9月23日更新】
石製腰帯具出土状況
岡崎遺跡では、平安時代の石製腰帯具の
このことから、岡崎遺跡には石製の腰帯具を持つような有力者がいたことが分かります。
曽我墓所 遺跡で古代の鳥形須恵器 が出土しました【8月31日更新】
鳥形須恵器が出土した遺構
水掻きが表現された鳥形須恵器
曽我墓所遺跡(江南区)の浅く掘りこまれた遺構で鳥の形をした須恵器の破片がまとまって出土しました。破片を観察すると、鳥形の体部は空洞で足には
令和2年10月10日(土曜)に現地説明会を開催し、この鳥形須恵器も展示しますので是非お越しください。
今年度の発掘調査現地説明会の案内です
道正 遺跡で昔の地震の痕跡が見つかる!【8月21日更新】
ずれた埋設土器
噴砂痕拡大
道正遺跡(江南区)調査区の西側では縄文時代晩期の遺構の調査を進めています。写真は
史跡古津八幡山遺跡の発掘調査はじまる【8月20日更新】
木の根が多くて掘るのが大変です
古津八幡山遺跡は弥生時代の高地性環濠集落として国の史跡に指定されています。史跡をより適切に保存活用していくための確認調査を2017年から行っており、今年の調査地は遺跡北東域の史跡指定地外に位置し、標高約25メートルを測る丘陵中腹部の平坦面や緩斜面域です。これまでの調査で当遺跡最大の大形竪穴住居や、掘立柱建物などが確認されています。
今年はその大形竪穴住居をさらに掘り進め、炉の有無や柱の配置を確定し、大形建物の性格などを明らかにするとともに、周辺の遺構のひろがりについても把握する予定です。令和2年10月3日(土曜)に現地説明会を開催しますので見に来てください!
岡崎 遺跡の調査が進んできました【8月19日更新】
岡崎遺跡西側の調査区(北西から)
休憩用テントとミスト付き扇風機
なかなか明けない梅雨に阻まれながらも、
城願寺跡 出土遺物の修復作業【8月17日更新】
修復後の行平鍋
報告書が刊行されてから時間を経た遺物は、接着剤や
今回の資料は、1983年に巻原子力発電所建設に伴い調査された城願寺跡から出土した行平です。
城願寺跡は市内西蒲区
写真は新たな充填剤で補強した状態です。この
平 遺跡の発掘調査が終了しました【8月7日更新】
平遺跡調査地の空中写真(南東から)
完掘状況(東から)
縄文土器出土状況
6月にお伝えした
古墳時代の線刻 土器が出土しました(道正 遺跡)【7月22日更新】
道正遺跡出土の線刻土器1
道正遺跡出土の線刻土器2
6月に紹介をした古墳時代の一括廃棄土器の中から線刻土器(線で文様を描いた土器)が2点見つかりました。いずれも口縁部に線刻があり、文様の意味は不明ですが、写真右側の文様は
線刻土器は、新潟市内では北区
金属製品のクリーニング【7月3日更新】
クリーニング作業で使う道具
遺跡を発掘していると、まれに釘や
事前に撮影したX線透過写真で遺物本来の形や構造を確認しながら、メスなどの道具を使ってさびを落としていきます。遺物本体は脆く壊れやすいため、慎重に作業を行うことが重要です。
クリーニング後は、エタノールで金属製品を洗浄したのち、劣化の原因となる塩化物を取り除く処理(脱塩処理)・樹脂による強化を行っていきます。
発掘調査の下準備(古津八幡山 遺跡)【7月2日更新】
2人がかりでの除草作業
杉の木の伐採
秋葉区にある国史跡古津八幡山遺跡の発掘調査がもうすぐ始まります!
今は、発掘調査を行うための事前準備をしています。
まずは草刈りや樹木の伐採を行いました。草刈りは、現場で働く人たちの休憩所やトイレを設置するため、樹木の伐採は発掘調査で掘削作業の支障となるために行いました。
発掘調査は11月まで行う予定です。調査成果についてはホームページなどでお知らせするほか、10月には現地説明会を予定しています。現地説明会の際は、発掘調査現場まで是非足をお運び下さい!!
岡崎 遺跡の発掘調査始まる!【7月1日更新】
バックホーによる表土掘削(南東から)
5月からの事前準備が終わり、6月下旬からようやく発掘調査に入りました。現在、バックホーで表土を掘削し、平安時代の層を出しています。
岡崎遺跡は江南区の割野地区にあり、事前調査の結果、
どんな遺構や遺物が見つかり、どのような遺跡になるか楽しみです。
奈良時代の竪穴建物、発見(曽我墓所 遺跡)【6月24日更新】
カマドのある竪穴建物(西から)
カマドのそばで見つかった鍋
昨年から引続き調査している地区で、奈良時代の竪穴建物が見つかりました。1辺が4メートル四方の竪穴建物で、東側には調理場であるカマド跡がありました。そのそばには食材を煮炊きしたと思われる鍋も一緒に見つかっており、当時の人々がどのような料理をしていたのか気になるところです。また、建物の中に大きな礫が5つ並んでみつかりました。この建物に伴うものなのかは、まだわかっていません。これからの調査で検証していく予定です。
調査はまだまだこれからですが、集落での生活の様子が段々と明らかになってきました。
古墳時代の一括廃棄土器(道正 遺跡)【6月22日更新】
一括廃棄された土器
平安時代の調査が終わり、古墳時代の調査に入りました。
写真は砂丘の頂部から縁辺部に向かう緩やかな斜面に廃棄された土器群です。幅約1.5メートル、長さ5メートル以上の範囲で地形の傾斜に合わせて分布します。土器は壺が多く、ほかに高杯・甕も見られます。複数の土器があり、それぞれの個体ごとにまとまりがあることから、一括で廃棄されたものと考えられます。
古墳時代のほかの遺跡の例から祭祀後に一括廃棄されたものと推定しています。
新津丘陵の縄文時代集落発掘中(平 遺跡)【6月18日更新】
平遺跡の発掘調査風景
新津丘陵の東裾に位置する
真っ黒な土の層に掘りこまれた遺構からは、縄文時代の柱穴や土器が見つかっています。柱穴は深いもので40センチメートルくらいあり、規則正しく並んでいることから建物跡の可能性が高いです。今後さらに下層にある縄文時代の層を調査していく予定です。
平安時代の掘立柱建物を調査しました(道正遺跡)【6月10日更新】
発掘調査中の掘立柱建物
掘立柱建物の範囲(白線)
昨年度に調査のできなかった側道部分の調査を始めました。この部分は砂丘のもっとも標高の高い部分に相当します。調査の結果、20基以上の穴(ピット)が見つかりました。平面形は円形・楕円形で、直径30~60センチメートル、深さ40~60センチメートルほどの大きさで、建物の柱穴と見られます。
残念ながら建物は調査区外に広がるため、規模は不明ですが、棟を北東に向け、間取りは1間約2メートルでした。周辺からの土器から平安時代(9世紀)の建物と推定されます。また平安時代の村は、標高の高い西側に中心があることが分かりました。
風化した土器の補強(原遺跡)【6月10日更新】
土器に付着した砂を落とす
水溶性樹脂に漬けた状態
現在発掘調査を行っている原遺跡(秋葉区)では、縄文時代後期から晩期の土器が出土していますが、地表近くから出土していることから紫外線などの影響で非常に脆くなっています。このままでは接合・注記・実測といった整理作業に耐えられないため補強を行うことにしました。
補強作業はまず土器に付いた砂や土を軽く落としたあと、バインダー17という水溶性樹脂に一晩漬けこみます。翌朝、水洗し乾燥させて完成です。樹脂で補強した土器は、内部の隙間が埋まるため崩れにくくその後の復元作業や図化作業がしやすくなります。
小さな文字たちの役割【5月26日更新】
注記された土器
注記
遺跡の発掘調査では、出土したものについて出土位置を記録しながら取り上げます。それをしなければ調査ではなくただの穴掘りになってしまいかねません。というのも、遺跡や出土品を評価するにあたって、どんなものがどこからどのように出てきたかが大変重要なことだからです。その大切な情報が失われないよう1点1点に書き込んだものがこの小さな文字です。何十年後でも、誰が見てもその情報が読み取れるように工夫しながら記録しています。
本発掘調査、始まる。(曽我墓所 遺跡)【5月21日更新】
表土掘削の様子(北から)
竪穴建物(南から)
現場は横越中学校の北側、昨年度に続く本発掘調査です。「三つの密」を避け発掘道具の共有をしないなど、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策をしながら調査を進めています。昨年度に調査した隣地では古代の竪穴建物や掘立柱建物が複数みつかり、非常に注目されました。今は土器が出てくるところまで重機で少しずつ掘り下げていく作業(表土掘削)をしています。今後、昨年度と同じような建物跡が発見されるかもしれません。調査はまだ始まったばかり、これからますます注目されます!!
業務に必須な「テンバコ」 【5月1日更新】
収蔵庫の様子
机として使われるテンバコ
発掘調査で出土した土器や石器を整理・収納するのに必要なプラスチックケースです。収蔵庫で整然と並ぶ姿は圧巻です。収蔵庫では調査ごとに整理され、貸出や閲覧に迅速に対応できるよう心がけています。
テンバコは土器の収納に限らず、ひっくり返して椅子や机にもできてセンター内で大活躍の品です。たまに合併前の名前が入ったテンバコもあり、歴史を感じます。
本発掘調査に向けて(道正遺跡) 【4月27日更新】
本発掘調査前の道正遺跡(西から)
4月上旬から本発掘調査を行う予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、現在連休明けの調査を目指して準備を進めています。
◎非接触型の体温計の手配。◎広いスペースの休憩所の確保。◎休憩所の常時換気と1時間おきの窓の開閉など、密閉・密集・密接のいわゆる三密対策を進めています。