2024文化財センター学芸員コラム
最終更新日:2025年1月22日
文化財センターでは埋蔵文化財の発掘調査と調査によって出土した土器や石器などの整理作業、民俗文化財の保管・管理を行っています。
普段目にすることがない業務の状況や収蔵品の話題などを文化財センターの職員が不定期にご紹介します。
消防訓練を行いました 1月22日更新
1月26日は「文化財防火デー」です。昭和24年に法隆寺金堂壁画が焼損したことを機に制定され、この日を中心に全国各地で文化財防火運動が展開されています。文化財センターにおいても新潟市西消防署と共同で消防訓練を実施しました。
通報訓練、避難訓練、初期消火訓練など、ひと通り職員の訓練を終えると、旧武田家住宅(市指定文化財)を対象に、消防隊による検索救助訓練、一斉放水訓練が行われました。消防隊員のテキパキとした行動を見ていると、とても心強く安心感を持つとともに、まずは火災を起こさないことが大事なのだと、職員一同改めて感じていました。
文化財センターには多くの貴重な文化財や古い民具などがあり、すべて市民の貴重な財産です。これからも貴重な財産を守るため、日頃から火災予防に努めてまいります。
指揮本部があっという間に立ち上がります
放水訓練の様子
一瞬の晴天で現れたものは? 12月5日更新
12月に入り、悪天候が続いています。天気予報を見ても雨か雪マークがずらり。
しかし、一日中降り続くわけではありません。ほんの一瞬、雲が切れて陽が差すことも。
そんな時、運が良いと素敵な虹を見ることができます。旧武田家住宅にかかる素敵な虹をぜひ見てください。
旧武田家住宅と虹(12月4日撮影)
珠洲焼の寄贈を受けました 12月3日更新
先日、市民の方から珠洲焼の壺2点の寄付申込みをいただきました。
珠洲焼は現在の石川県珠洲市周辺で平安時代末から室町時代にかけて生産された焼物です。日常生活で使用された壺・甕・擂鉢が主に生産され、福井県以北の日本海側を中心に流通し、新潟市の遺跡からも多く出土しています。生産地から消費地へは主に海路や内水面を船で運搬されていました。
今回、寄贈された珠洲焼は、昭和の初め頃に佐渡沖での底引き網漁の際に引き揚げられたものだそうです。おそらく運搬途中に何らかの理由で海に沈んだものと考えられ、割れずに完全な形をしています。2点のうち1点を常設展示コーナーで展示しています。このほかにも文化財センターには海から引き揚げられた珠洲焼の甕や擂鉢を展示していますので、ぜひご覧ください。
珠洲焼の壺(高さ約35センチ、右側を常設展示中)
茶院A遺跡 接合作業の様子をご紹介 11月21日更新
茶院A遺跡の現地での調査は終了しましたが、これから発掘調査報告書の作成に向けての整理作業が始まります。土器の水洗いと注記(土器に出土地点を書くこと)が終わったあと、破片同士をくっつける接合作業を行います。
接合作業のコツは、なるべく大勢の目で根気よく行うことです。出土地点が近いところ同士を探したり、少し範囲を広げて似た色や文様の土器を集中して探したりします。時には、作業者同士で「私、この土器を探しているけど、似たもの見なかった?」「これ、そうじゃない?」と情報交換の会話が聞かれることも。破片がくっついて土器の形に近づくと達成感がありますね。
接合作業
時には情報交換
馬堀上組遺跡 快晴の下で調査が進みます 11月14日更新
11月は、時雨れることが多く、発掘調査が思うように進まないものですが、今日(11月14日)は快晴で弥彦山の紅葉がかなり麓まで降りてきているのがよく見えました。気温も快適で、発掘調査が捗ります。
馬堀上組遺跡では、現在のところ中世の井戸が6基確認できていて、直径が2メートルを超える大きなものが目立ちます。井戸の中からは、中国産の白磁や珠洲焼、漆器・草履の芯などの木製品が出土しています。
発掘調査も終盤戦です。雪が降る前に終わらせたいですね。
快晴の馬堀上組遺跡
井戸がたくさん見つかりました
南北方向の溝
茶院A遺跡の発掘調査が無事に終わりました 11月11日更新
夏の真っ盛りに始まった3年目の茶院A遺跡の発掘調査が無事に終了しました。始まった頃はまだ若木だった調査区隣の大豆畑も、すっかり刈り取られています。
今年は思いのほか、雨に悩まされて作業が手戻りしてしまうことが何度もありましたが、作業に慣れたチームの下で遅れを取り戻し、ほぼ予定の期間で調査を終えることができました。
現地での発掘作業は、これで終了ですが、これから報告書にむけての作業が始まります。整理作業の経過についてもこのコラムでお届けできればと思います。
茶院A遺跡調査スタッフ
「にいがた秋の文化財一斉公開2024」開催中 10月23日更新
現在、新潟県では県内のバラエティに富んだ文化財に親しんでいただけるよう、市町村や文化財所有者から協力を得て「にいがた秋の文化財一斉公開2024」を開催しています。一斉公開は10月31日までです。
文化財センターでは、県指定文化財「的場遺跡出土品」を展示公開しています。
的場遺跡は、平成元年と平成2年に発掘調査された遺跡で、大型の倉庫を含む14棟の掘立柱建物が見つかったほか、奈良・平安時代を中心とする大量の土器や漁具等の遺物が非常によい状態で出土しました。
文化財センターでは的場遺跡のほかにも市内の遺跡から出土したたくさんの出土品を展示公開していますので、秋のひと時、それら出土品を鑑賞しながら昔の人のくらしなどに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。「にいがた秋の文化財一斉公開2024」に関するホームページ(外部サイト)
的場遺跡出土品展示コーナー
的場遺跡出土木簡の複製品
茶院A遺跡の現地説明会を開催しました 10月21日更新
10月19日(土曜)に茶院A遺跡の現地説明会を開催しました。説明会では、お客様に細長い調査区をぐるっと一周していただき、鎌倉時代の水田跡、奈良時代の竪穴建物で調査員による説明を行いました。
午後からは雨が強くなり、遺物の展示のみになってしまいましたが、57名の方からご参加いただきました。雨の中、足をお運びいただきありがとうございました。
現場での説明
出土品の展示
企画展2「水田下に沈んだ縄文時代の遺跡」の土器展示をもっと知るために 10月10日更新
企画展2が始まり、はや1か月になろうとしています。この間、沢山の方にご覧いただきました。さらに多くの方に見どころなどの情報発信をしたいと思っています。
第1会場である文化財センターでは下越地域の縄文時代晩期の始まりから終わりまでの土器を古い順に並べ、土器の移り変わりがわかるように展示しています。
刻々と変わる土器の移り変わりを理解するマニュアルとして冊子「みんながわかる土器の移り変わり」を用意しました。
これを見ながら土器を観察すれば、難しい土器の移り変わりがわかるようになっています。皆さんもぜひお手に取ってご覧ください。
縄文時代晩期の始め頃の土器
縄文時代晩期の終わり頃の土器
冊子「みんながわかる土器の移り変わり」
五番田遺跡発掘調査たより2 縄文時代の遺構が見つかる 10月9日更新
縄文時代の土器・石器が含まれる層(遺物包含層)は地表下2.0から2.5メートルの深さであることから、この深さまでの土を除去するのに苦戦しています。
調査面積の8割ほどで土器・石器が含まれる層まで掘削が終わり、終わったところから縄文時代の人々が地面に残した穴などの痕跡(遺構)を探し始めました。30センチ前後の穴(ピット)、1メートル前後の穴(土坑)、乳児や胎児などを埋葬した可能性のある土器埋設遺構などが見つかっています。
遺構の土は、周囲の土と色や粘性・しまり具合などが異なります。土を薄く削りながら、この違いを慎重に見分けて遺構を見つける難しい作業に入りました。
ジョレンを使って丁寧に土を削り、遺構を探します
遺物包含層から石鏃(石製の矢じり)が見つかりました
土器埋設遺構が見つかりました
髪結い道具「こうがい」 10月7日更新
茶院A遺跡の近世以降の溝から「こうがい」が出土しました(画像1)。長さ約19センチの銅製で、中心には家紋が彫られています。「こうがい」とは、元々は髪をかき上げるために使っていた箸に似た細長い道具で、後世に女性の髷に横に挿して飾りとして使用されました。素材は銀やべっ甲などさまざまなものがありました。今回出土した「こうがい」は先端が丸く耳かき状になっており、反対側は鋭く尖っています。この形状のものは、女性の髪結い用ではなく、刀剣のしつらえ(装飾)にみられます。
あまり出土することのない珍しいものだったので、調べてみると、文化財センターの民俗資料収蔵庫にも1点収蔵されていました(画像2)。収蔵されていた「こうがい」は、文化財センターのある西区木場で収集されたもので、大正時代に使用され、先端にはべっ甲の装飾があります。こちらは、髪を結うための道具で間違いなさそうです。
文化財センターでは考古資料や民俗資料を収蔵し、その一部を展示しており、無料でご覧いただけます。
画像1:出土した「こうがい」
画像2:民俗資料の「こうがい」
1300年前のキッチン 9月27日更新
茶院A遺跡では、下層の調査がはじまりました。最も標高の高い場所から、奈良時代の住居と考えられる竪穴建物が見つかりました(画像1)。調査区の幅が狭いため建物の全体を調査することはできませんが、建物の南端には赤く焼けた土があり、そこが炉跡(今のキッチン)であったことが想定されます。この竪穴建物からは、8世紀(奈良時代)頃の土師器の長甕とカマドの部材とされる棒状の土製品が出土しています(画像2)。
1300年前に、ここのキッチンでは、どんな料理が作られていたのでしょうか。収穫したての新米かな?それとも鎧潟の近くでとれた魚かな?そんな想像をしながら調査を進めています。
画像1:竪穴建物と炉跡
画像2:竪穴建物から出土した土師器(左3点)と棒状の土製品(右2点)
五番田遺跡発掘調査たより1 9月19日更新
春から準備を進めていた五番田遺跡の発掘調査が9月から始まりました。
江南区茅野山に所在する縄文時代の遺跡です。
整備が進められている主要地方道新潟中央環状線道路改良事業に伴う発掘調査になります。
調査区は新潟中央環状線が国道460号と交差する東側で、今年度は1,415平方メートルを調査する予定です。
現在は、縄文時代の土器や石器が含まれる層の上まで掘り下げた段階で、現地表下2.0から2.5メートルでの調査になります。
どんな縄文遺跡が現れるのでしょうか。適宜、発掘調査の様子をお伝えしたいと思います。
バックホーによる表土除去
縄文時代の土器・石器が含まれる層の上まで掘り下げた状態
企画展2開催中です 9月19日更新
9月14日(土曜)、新潟市文化財センター・史跡古津八幡山弥生の丘展示館の合同企画展が始まりました。
テーマは「水田下に沈んだ縄文時代の遺跡 新潟市江南区道正遺跡・岡崎遺跡」です。
2024年3月に発掘調査報告書が出来上がり、その成果を公開します。今回は縄文時代に焦点を当てました。
「わかる」「楽しめる」企画展になるよう心掛けました。
たくさんの方々のご来館をお待ちしています。
第1会場:新潟市文化財センター(西区木場2748-1)
第2会場:史跡古津八幡山弥生の丘展示館(秋葉区蒲ヶ沢264)
展示室全景(下越地域の縄文時代晩期の土器をたっぷりと展示しています)
道正遺跡出土の縄文土器(縄文時代晩期中葉の土器をケースいっぱいに展示しています)
茶院A遺跡 発掘調査にチャレンジ 8月21日更新
8月6日(火曜)に新潟市広聴相談課、8月9日(金曜)に中之口公民館との共催で、小学生向けの発掘調査体験を行い、2日間で合わせて12組25名の方にご参加いただきました。
今年度は遺物包含層という土器がたくさん埋まっている場所を掘るほか、出土した遺物(土器)を洗う作業を行いました。事前に「土器は柔らかくて壊れやすいので竹べらで慎重に掘ってください」と案内していたからか、参加者からは「思っていたより土器が硬かった」「竹べらに土器があたる感触が面白かった」といった感想が聞かれました。また、土器を洗う体験では、友達と見せ合い「この土器とその土器の模様が同じじゃない?」と学芸員さながらの会話も聞かれました。今後もこのような体験の機会を作りたいと思います。
親子で発掘調査体験
土器を洗う作業
何の足あと 8月21日更新
茶院A遺跡で、中世もしくは近世の田んぼ遺構で何やら足あとを発見しました。柔らかい田んぼを踏み込むと元の土とは違う土で埋まるので、足あとが残る仕組みです。
見つかった足あとは、下駄のような平行した2本線で人の足あとではなさそうです。これは偶蹄目であるウシの足あとと考えられます。耕作機械がなかった時代に、ウシがトラクターのように田んぼを耕していたことが絵図からもわかっています。茶院A遺跡では、このほかにもウマの歯などが出土しており、さまざまな動物の力を利用して農業を営んでいたことがわかりました。
茶院A遺跡で見つかった足あと
足あと部分(黒い2本線が足あと)
やっぱりお金が好き 8月8日更新
茶院A遺跡で、中世の土坑から古銭が2点出土しました。いずれも中国の古銭で、唐から北宋にかけて作られたものです。茶院A遺跡の周辺では、昭和30年代の耕地整理の際に埋納された中世の古銭が大量に出土したという記録もあるので、今後の調査でもさらに多くの古銭が出土するかもしれません。古銭が出土すると、作業員さんたちが「見せて見せて」と集まってきます。やっぱりみんなお金が好きなんですね。
なお、これらの古銭を含む出土品は、発掘調査が終わってから地元の警察署に通知します。
出土したてのお金
新潟市の歴史を体験しようinイオンモール新潟南 7月31日更新
新潟市内には800を超える遺跡が存在しており、そのうちの一つに「駒首潟遺跡」があります。そこは現在、イオンモール新潟南店がある場所で、建設前に発掘調査が行われた平安時代の遺跡です。
遺跡からは多くの出土品が見つかり、文字が書いてある珍しい道具やたくさんの人やものが集まる賑やかな場所だったのでしょうか。
イオンモール新潟南店では、8月2日から6日まで新潟県と連携した「新潟フェア」が開催されます。その一環で8月4日(日曜)、2階フロアの一角をお借りして「新潟市の歴史を体験しようinイオンモール新潟南」を開催します。
歴史博物館(みなとぴあ)、文書館、文化財センターが協力し、遺跡から発掘された出土品の展示や古い文書・写真などのパネル展示に加え、土器パズルやぬり絵が体験できる、学んで遊べるコーナーとなっています。お買い物の際には是非お立ち寄りください。
展示パネル画像1
展示パネル画像2
茶院A遺跡のホソの達人 7月26日更新
皆さんは「ホソ」という道具をご存知でしょうか。近世農書の『農具便利論』(原文は漢文)では「ホソは踏鋤の一種で、粘りのあるやわらかい土を掘りあげるのに適している」とあります(現代語訳は『黒埼町史』資料編6 民俗 234ページを参考)。粘土質の土を掘ったり削ったりするのに使う農具で、新潟では農業が機械化される前まで使われていました。遺跡の調査でも粘土質の土を掘るためには欠かせない道具です。実は筆者は県外出身で、新潟に来て初めてホソを見ました。
現在調査している茶院A遺跡の作業員さんにも、ホソの達人がいらっしゃいます。達人たちは、リズムよく排水用の溝を掘ったり、簡単そうに土層観察用の壁を整えたりしていますが、実際に私がやってみるとホソの歯に粘土がくっついて離れなかったり、まっすぐに粘土を削れなかったりうまくいきません。このような達人たちのおかげで現場がまわっています。
ホソで排水用の溝を削る
ホソで調査区の壁を削る
新潟市西蒲区で発掘調査の準備中です 7月26日更新
今年、発掘調査を行う馬堀上組遺跡についてご紹介します。
馬堀上組遺跡は、新潟市西蒲区の馬堀地区にある中世(鎌倉時代から室町時代)の遺跡です。今年の冬まで農地と農道部分の発掘調査を行います。現在調査のための準備中で、どのような成果があがるのかまだ分かりませんが、当時の村の跡や水田跡などが見つかるのではないかと期待しています。
10月頃には現地説明会を開催予定です。見つかった当時の建物などの痕跡や出土した品々を展示しますので、是非お越しください。現地説明会の日時は市報・ホームページ等でお知らせします。
7月現在、発掘調査作業員(アルバイト)を募集中です。興味・関心をお持ちの方は、下記連絡先の担当者までご連絡ください。(新潟市の業務委託を受けた会社との雇用になります)
馬堀上組遺跡現場携帯電話:080-2210-0076(担当:新潟市文化財センター 長谷川)
受付時間:平日8:30~午後5時30分
馬堀上組遺跡位置図
西蒲区茶院A遺跡の調査が始まりました 7月16日更新
西蒲区打越で茶院A遺跡の発掘調査が始まりました。令和4年度から開始して今年で3年目になります。
初日は、コンテナ倉庫から発掘道具を運び出したり、調査区に掛けるブルーシートの重石などに使う土のうを作ったりと準備作業の一日でした。土のうは今日だけで500個も作りました。
作業員さんも継続して来てくださっている方ばかりなので、初日から息ピッタリのチームワークです。これから暑い時期となりますが、約4か月安全に頑張りたいと思います。
使用する道具をコンテナ倉庫から出します
土のう作りの様子
中央図書館ほんぽーとで企画展「国指定史跡 古津八幡山遺跡 よみがえった弥生の丘と県内最大の古墳」がはじまりました 7月4日更新
7月4日(木曜)から8月6日(火曜)まで、中央区にあるほんぽーと(新潟市中央図書館)のエントランスで新潟市文化財センターが企画した展示「国指定史跡 古津八幡山遺跡 よみがえった弥生の丘と県内最大の古墳」を行っています。
秋葉区に史跡公園として約2000年の時をこえてよみがえった古津八幡山遺跡と、そのガイダンス施設「弥生の丘展示館」の魅力や活動内容など、パネルを中心に紹介しています。また、かつて開催したフォトコンテストの受賞作品や、考古イラストレーター早川 和子さんによる古津八幡山遺跡の復元画なども展示しています。
ほんぽーとで展示をご覧いただき、ぜひ秋葉区にある史跡公園や展示館へも、自然や歴史を体感しにお越しください。
展示の様子
顔出しパネルもありますよ
弥生の丘展示館の企画展関連講演会に参加して 6月24日更新
現在、弥生の丘展示館では企画展「日本遺産『なんだ、コレは!』信濃川流域の火焔型土器」を開催中です。
日本遺産とは文化庁が認定する、日本のさまざまな地域にある、国や地域の文化や歴史を語る「物語」のことです。現在104件が認定されています。
新潟市・三条市・長岡市・魚沼市・十日町市・津南町で構成する「信濃川火焔街道連携協議会」は信濃川流域の火焔型土器と雪国の文化を主題に地域の物語を作成し、申請。平成28年に日本遺産として認定されました。
信濃川流域の火焔型土器は物語の、そして地域のシンボル的縄文土器です。今回はその中核となる「国宝 笹山遺跡出土深鉢形土器」について、6月15日(土曜)に十日町市博物館の前館長である石原正敏さんから講演いだたきました。
題して「笹山遺跡出土の火焔型土器が国宝となるまで」。
下の写真のNo.6(高さ34.5センチ)は火焔型土器の標準的なサイズとのこと。No.1はNo.6の1.5倍くらいの大きさがあるとのことです。
日本遺産「なんだ、コレは!」信濃川流域の火焔型土器と雪国の文化 ガイドブック25頁より(No.加筆)
そして、このNo.1について、以下のお話がありました。
- 開発事業の都合から、発掘調査範囲を広げたところで出土したこと。
- 遺物等がないように考えていたが、1981年7月7日から8日朝にかけて雨が降り、土の色が変わって見えたことから念のため掘り下げて見つかったこと。
- 調査の最終段階で時間のない中、担当者の頑張りが大きかったこと。
- 遺物の全体がわかるまで4年にわたって接合作業が続けられたこと。
また、国宝に至るまでには、
- 文化庁が縄文時代の土器で国宝にふさわしい出土品群としての物件を調査していたこと。
- 考古学者や先学が当初から高く評価をしていたこと。
- 芸術家の岡本太郎氏による縄文土器に対するさまざまな発言が書籍等で広められたこと。
- 哲学者の梅原 猛氏から「国宝にふさわしい」と後押しを受けたこと。
- No.1の出土により際立って見えるようになったこと。
などが挙げられましたが、石原さんからは「時流に乗れたことが大きかったのではないか」とのお話もありました。
私たち文化財業務を担う職員は、どうしても出土品を「資料」という観点でとらえてしまいます。そのため、資料に優劣をつけることはとても苦手です。
しかしながら芸術家や哲学者がそれぞれの視点から出土品をあるがままに見て、縄文人の精神(こころ)を見出して、「これは良いものだ」「日本の文化芸術を代表せしめるにふさわしい」と推してくれた。それほどの力のある土器なのだなあ、と思った次第です。
企画展の会期は9月8日(日曜)までありますので、ぜひ実物をみていただければ、あるがままを見ていただければと思います。
参考 国宝までの経緯
昭和55(1980)年 第1次調査
昭和56(1981)年 第2次調査
昭和57(1982)年 第3次調査 No.1ほか出土
昭和57(1982)年 第4次調査
昭和57(1982)年 第5次調査
昭和59(1984)年 第6次調査
昭和60(1985)年 第7次調査
発掘調査の総面積:15,460平方メートル
平成4(1992)年 国重要文化財指定(火焔型土器)・王冠型土器を含む縄文時代の遺物982点)
平成10(1998)年 発掘調査報告書の刊行
平成11(1999)年 国宝指定
保存処理室のお仕事を紹介します 5月30日更新
今日は、文化財センターにある保存処理室をご紹介します。名前のとおり遺跡から出土した土器以外の木製品・金属製品を理化学処理し、長期保存ができるようにするための設備がある部屋です。
下の写真は、鉄製品の保存処理の様子です。処理前のX線写真撮影と計測の後、余分なサビを顕微鏡で見ながら物理的に落とします。よく見ると手袋の指先にテープを巻いている職員がいました。話を聞くと、指先に力が入ると金属製品の突起などで手袋が破れてしまうので、手袋を長持ちさせるためにテープを巻いているとのこと。何事も工夫は大事ですね。
顕微鏡をのぞきながらの作業
サビ落とし作業1
サビ落とし作業2
職員向けの展示解説を行いました 5月14日更新
開催中の企画展「考古資料にみる人と物の動き」は文化財センターの職員が専門とする時代ごとに分担して展示をしています。縄文時代から江戸時代までの各担当者が、普段、整理作業に従事している職員と事務職員向けに企画展の展示について説明を行いました。展示室に入る機会の少ない職員もおり、熱心に聞き入っていたようです。
企画展展示解説を6月30日(日曜)午後3時から開催します。申込み不要となりますので、どうぞお気軽にお越しください。
テレビ放送の日時が決まりました 5月8日更新
4月22日更新のコラムの続きです。番組の詳細が届きましたので、お知らせいたします。
番組名:東北ココから「古代史ミステリー東北古墳調査最前線」(外部サイト)
放送日:5月10日(金曜)午後7時30分から午後7時57分
再放送:5月11日(土曜)午前10時30分から午前10時57分
残念ながら東北6県のみでの放送となります。
NHKプラスにて2週間ほど配信される予定ですので、新潟ではNHKプラスでの視聴が可能とのことです。
絶賛開催中 企画展第1弾 5月1日更新
文化財センターと弥生の丘展示館では現在、令和6年度第1弾の企画展を絶賛開催中です。
西区木場の文化財センターでは「考古資料にみる人と物の動き」と題し、考古資料を通じて時代によって変化する人と物の動きについて紹介しています。
また、秋葉区蒲ヶ沢の弥生の丘展示館では、「日本遺産「なんだ、コレは!」信濃川流域の火焔型土器」と題し、火焔型土器などを通じて雪国の文化の物語について紹介しています。「日本遺産」とは、文化庁が認定した地域の歴史的魅力や特色を通じて文化・伝統を語るストーリーのことです。
どちらの企画展も職員が厳選したとても興味深い遺物が展示されていますが、中でも弥生の丘展示館で展示されている土器は国宝級で、それらを一堂に会して鑑賞することができる絶好の機会です。
ぜひ、文化財センター及び弥生の丘展示館に足を運んでみてください。
日本遺産『「なんだ、コレは!」信濃川流域の火焔型土器と雪国の文化』特設ウェブサイト(外部サイト)
文化財センター展示室
文化財センター企画展縄文時代コーナー
弥生の丘展示館展示室
弥生の丘展示館に展示中の火焔型土器
テレビ局による取材がありました 4月22日更新
先日、古墳時代をテーマにした番組制作のため、文化財センターにてNHKによる取材がありました。山谷古墳(西蒲区)から出土した土器やガラス小玉などのほか、南赤坂遺跡(西蒲区)出土の続縄文土器の撮影でした。
残念ながら、番組は東北地方での放送になりますが、新潟ではNHKプラスでの視聴が可能だそうです。番組名や放送日等の詳細は、後日改めてお知らせします。
南赤坂遺跡出土の土器を撮影しています
工夫を凝らして写真撮影 土居内遺跡 4月15日更新
遺跡の発掘調査は、掘って終わりではなく、どんな遺跡だったのかを発掘調査報告書という本にまとめることでようやく完了します。この本は、遺跡の考察のほか、出土したものの図面や写真などが掲載される遺跡のカタログのようなものです。
今回は、土居内遺跡(江南区)で昨年出土した橋の橋脚とみられる柱の写真撮影の様子をご紹介します。とても長い柱だったので、櫓を組んで上から撮影しました。報告書に掲載するための写真ですが、上手に撮れたので実物大に拡大して文化財センターのエントランスに展示しています。長さを実感してみてください。
櫓に上がり写真を撮影しています
模様替え 文化財センターの今 4月10日更新
文化財センターでは、エントランス展示されていた出土品などの模様替えを行いました。縄文文化の魅力を国内外に発信する「なんだ、これは!」信濃川流域の火焔型土器と雪国文化に関する展示、昨年度行われた発掘調査の速報展示、土器作りの会の方の作品展示となっています。
また、展示室内では、昨年度、文化財センターに体験学習に来てくれた小学生たちからいただいた、うれしくもあり楽しい「お礼のことば」を展示しています。そんなお手紙を仕事の励みにしながら、将来の考古学者が出てきたらいいなとワクワクしています。
新年度最初の企画展は4月27日(土曜)から始まります。20日(土曜)からは企画展準備のため臨時休館となり、速報展示と土器作品展示は撤収しますので、お早めにご来館ください。
信濃川火焔街道連携協議会関連展示
速報展示(土居内遺跡現場模型)
土器作りの会作品展示
子どもたちのお礼の手紙
机に紙筒を並べて何をしているのか 4月8日更新
4月1日、令和6年度が始まりました。文化財センターの各職員は、それぞれの持ち場で張り切っています。
令和5年度は、必死こいて道正遺跡・岡崎遺跡の発掘調査報告書を作っていました。3月中旬に報告書が出来上がり、調査成果の一部を9月14日(土曜)からの企画展にて公開します。企画展テーマは「水田下に沈んだ縄文時代の遺跡」ということで、縄文時代に焦点を当てます。
しばらくは、他施設から借用予定の土器をどのように並べるのかを実際の大きさに拡大した土器の図を紙筒に貼り付けてイメージしたり、展示内容の検討と展示品選びをしています。皆さんが「わかる」「楽しめる」企画展になればと思いながら作業を進めていますので、ご期待ください。
発掘調査報告書と原寸大にコピーした土器の図
道正遺跡出土の縄文土器