(28-1-4) 福祉電話の貸与中止の経緯及びあんしん連絡システムとの整合性について納得のいく説明を求める

最終更新日:2017年1月19日

(28-1-4) 福祉電話の貸与中止の経緯及びあんしん連絡システムとの整合性について納得のいく説明を求める

平成28年9月26日 苦情申立受理

申立ての趣旨

 福祉電話の性急な返還要求と長期中断を生じた「あんしん連絡システム」との整合性について、市から納得のいく説明を求める。

申立ての理由

1 福祉電話を10日以内に停止するという横暴さについて
 本年7月上旬に、7月22日を提出期限とする「身体障がい者福祉電話等現況届兼同意書」(以下「現況届」という。)が送付されて来たので、7月20日にA区健康福祉課に持参したところ、その場で携帯電話の所持を理由に市から貸与されている福祉電話の停止と返還を求められた。そして、2、3日後に7月末で電話を止めると同課から連絡があった。期日までは1週間、書類の提出期限から数えても10日もなかった。
 障がい福祉課へ確認したところ、現況届についは、本年4月の「新潟市身体障がい者福祉電話等設置事業運営要綱」(以下「福祉電話要綱」という。)の改正で初めて規定され、利用者に提出を求めたものであることが分かった。
 性急な電話回線の停止の影響は甚大で、様々な契約の連絡先を直ちに失うことになり、クレジットカード、公共料金の支払い及び銀行口座開設等の契約について連絡先の変更手続きをしたり、何よりもそのハンディを補うために健常者とは比較にならないほどインターネットに依拠した生活を送っている申立人のような障がい者が、これらの変更作業をするために膨大な時間と労力を要し、時間の十分な確保が必要であることを障がい福祉課はきちんと認識するべきである。
 なお、福祉電話の回線をそのまま利用できるように障がい福祉課に福祉電話の回線の有償譲渡を申し入れたが、市の所有であるとして拒否された。ひかり回線の有効性を認識しながらも、当方で勝手に回線をいじることができず、また手続きが煩雑である等の理由でひかり回線への移行をこれまで幾度となく断念してきた。福祉電話は利用者の利益になることを目的に考えられた施策であるはずなのに、利用者の生活実態を反映していない。
 また、平成8年当時、私は電動車いすで外出する機会が多く、介助者やヘルパーとの連絡には携帯電話の所持がどうしても必要であったため、障がい福祉課に事情を説明して携帯電話の所持については了解をもらっていた。携帯電話を持つと福祉電話は貸与しないということであれば、私が20年以上携帯電話を利用していた状態は誤った状態であったはずであり、この間何の調査も行わず、何の警告も行わなかった市は行政の無作為という責任が問われなければならない。また、市がこの誤った状態を確認した場合には、障がい者の利益を最優先し、最大限の激変緩和措置を講じて正しい状態に戻すというのが正しいやり方ではないのか。1週間程度で返還を要求するなどはもってのほかであり、少なくとも数か月の猶予を設けるべきである。現況届に始まる福祉電話に係る一連の施策はあまりに性急すぎて到底納得できるものではない。
 また、福祉電話要綱第3条の「福祉電話の貸与対象者」で、同条第1項第3号に規定する「電話(携帯電話を含む)が設置されていない世帯に属する者」のかっこ書きの「携帯電話を含む」という文言は本年4月の改正により初めて明示されたものであり、かつ同要綱第14条の「現況届の提出」は、本年4月に新たに加えられた規定である。そして、これらの規定に基づく今回の福祉電話の貸与中止に基づく一連の処理については、利用者に対して十分な周知を行わないまま実施されたものであり、日常生活に関わる重要な事柄で知らないうちにルールが変更されたら安定した生活を維持することは難しい。
 障がい福祉課は、障がい者の自立を支え、社会参加を促す部署であるのに、今回のやり方は到底納得ができない。

2 あんしん連絡システムの中断について
 新潟市の「身体障がい者あんしん連絡システム」(以下「あんしん連絡システム」という。)は、在宅で緊急事態が生じた時に、緊急通報装置の発信によって24時間体制で現在はB社が「あんしん連絡センター」として緊急対応を行うというものである。
 ところが、8月6日にKDDIのauひかり回線の工事を行うことをB社に連絡したところ、同日にB社が来宅し、既存システムの解除手続きを行った。本来は同時にauひかり回線に対応した新システムへの移行が必要であったが、B社は「市から連絡がないので新システムに移行できない」として、あんしん連絡システムが使えなくなった。その後16日間の中断を経て8月22日に、B社の工事により新システムが稼働した。
 24時間体制で連絡センターが緊急対応をすると謳っていながら、約400時間という長い間緊急対応が不可能な状態が継続していたことになる。
 今回の福祉電話の引き上げについては、あんしん連絡システムを中断させるだけの緊急性があったとは思えず、あんしん連絡システムを中断させることなくスムーズに移行することは可能であったはずである。現にB社が解除工事に来ていながら、市から連絡がないために、同日中に新システムを設置できなかっただけのことであるから、市が福祉電話の撤去のみに躍起となり、あんしん連絡システムとの整合性など念頭にないまま作業を進めていた結果ではないかと思わざるを得ない。
 障がい福祉課はこれまでの回線を7月いっぱいで打ち切ると言っていたが、私の抗議により、確かに新回線への移行までの猶予を与えてはくれた。しかしこれは、猶予というより、障がい福祉課自身が、回線を停止するとあんしん連絡システムが停止してしまうという自己矛盾に陥り、回線を停止することができなかっただけではないのか。
 これらのことから、今回の福祉電話やあんしん連絡システムに係る一連の障がい者施策が極めて場当たり的なもので、障がい福祉課は、障がい者の生活実態を無視し、自分たちの都合だけで障がい者の生活を混乱させたと言える。

3 結論
 今回の福祉電話の貸与中止に関連して、本年4月の福祉電話要綱の改正で、現況届の規定が新設された経緯及び貸与対象者となる「電話が設置されていない世帯」という規定の「電話」にかっこ書きで「携帯電話を含む」の文言が加わった経緯、また、改正された同要綱の内容について周知がきちんとなされなかったことや提出期限日から間もない7月いっぱいという性急な返還期限を設定した経緯について、そして、あんしん連絡システムとの整合性についての考え方等について、市から納得のいく説明をしていただきたい。

所管部署

障がい福祉課、A区健康福祉課

調査の結果

平成28年12月5日 決定

意見の趣旨等

1 福祉電話について
 要綱その他制度の改正、制定等、従前の内容が実質的に変更される場合の運用にあたっては、対象となる障がい者の生活に与える影響等を十分考慮し、事前説明・周知を徹底し、猶予期間を十分設けるなどして、障がい者の生活に支障が生じないように配慮していただきたい。

2 あんしん連絡システムについて
 システムの工事を行う際には、今回のようにシステムが稼働しない期間が生じることがないように十分注意し、改善措置を講じられたい。

意見の理由

1 調査の結果、以下の事実が確認できた。
 新潟市では、次の(1)及び(2)の制度を設けている。
(1)ひとり暮らしの重度身体障がい者等に対して、日常生活における安全の確保と社会活動の便宜供与をし、福祉の増進を図ることを目的として福祉電話を貸与する制度
(2)在宅のひとり暮らしの重度身体障がい者に対して、緊急時に24時間体制で連絡できるようにし、福祉の向上を図ることを目的として自動通報装置を給付する「あんしん連絡システム」制度。新潟市はこの事業をB社に委託している。
 (1)及び(2)は、NTTの回線を使用するものであったが、申立人はその利用者であった。
 福祉電話要綱では、「電話が設置されていない世帯に属する者」が福祉電話の貸与対象者とされているが、申立人は、同要綱が施行された平成2年4月以前から、既に従前の制度から引き続いて貸与を受けており、また平成8年頃から携帯電話を所持していた。
  その後、携帯電話が普及したため、新潟市は、平成25年度から「電話」に携帯電話を含むとしたが、携帯電話所持者から福祉電話廃止の届出がなされないため、平成28年4月1日に同要綱を改正し、利用者から現況届を提出してもらうこととした。
 所管部署では、福祉電話の利用者が携帯電話を所持していることが判明した場合にはすぐに福祉電話廃止の手続をとっているとのことで、本年7月20日に提出された現況届により携帯電話を所持していることが判明した申立人に対して、7月末で貸与解除となる旨を伝えた。
 申立人は、福祉電話回線でインターネットを利用していたが、その利用ができなくなることから、KDDIに回線開設の申込をした。
 あんしん連絡システムは福祉電話のNTT回線を使用していたため、障がい福祉課は、申立人宅のKDDIの工事が完了するまではNTT回線を撤去しないこととした。
 8月1日、A区健康福祉課は、自動通報装置解除依頼書と同設置依頼書をB社に提出した。
 8月6日、KDDIがauひかり回線の工事に入った。B社は、従前の自動通報装置を解除したが、ひかり回線対応の機器が調達できておらず、同日に設置することができなかった。
 8月22日、B社が、申立人宅に自動通報装置を設置した。
 そのため、8月6日から22日までの間、申立人宅のあんしん連絡システムは稼働していなかったが、この点について、B社から新潟市に対して、毎月の実績報告書提出までは特段の報告はなされなかった。
 障がい福祉課は、B社に対して、電話で、今後このようなことがあった場合は障がい福祉課に連絡するよう依頼し、了承を得たとのことである。

2 福祉電話の撤去について
  申立人は、次の(1)及び(2)について指摘する。
(1) 携帯電話所持者は福祉電話を持てないことの問題
(2) 福祉電話撤去が性急すぎることの問題
 (1)については、確かに、申立人の言うように福祉電話は固定電話のため自宅内のみしか利用できず、外出時に携帯電話が必要であることは理解できるが、固定電話のほかに携帯電話を所持することが障がい者の当然の権利とまでは言えず、新潟市の福祉施策として福祉電話が提供されていることからすれば、福祉電話要綱に携帯電話を含めたことに非があるとは認められない。
 (2)については、確かに、障がい福祉課の言うように、携帯電話があるから直ちに福祉電話を止めても連絡手段がなくなる訳ではないことから、支障がないとも言えそうである。障がい福祉課では、現況届の提出については事前に市報に掲載して周知したうえ、1週間余り猶予したので、柔軟に対応したという。
 ところで、申立人は電話回線を利用してインターネットを利用しており、福祉電話の撤去によって回線の新設・電話番号の変更手続等が必要となり、健常者でも相当の猶予期間が必要なところ、障がい者に対してはより配慮が必要と思われる。
 障がい福祉課では、現況届の提出について市報に掲載したというが、「現況届を提出し携帯電話を所持していることが判明した場合には福祉電話の貸与が解除される」旨を予告しているものではない。
 また、障がい福祉課では、資格喪失理由が判明した場合には速やかに廃止してもらっていると言うが、猶予期間が1週間程度というのはいかにも短く、障がい者の生活に支障を生ずる恐れがないとはいえず、さらなる配慮が必要というべきである。

3 あんしん連絡システムの停止について
 A区健康福祉課は、委託先であるB社に対して従前機器の解除依頼書と新しい機器の設置依頼書を一緒に送付したが、工事日程は申立人とB社とで決めたことで、新潟市には非がないと主張する。
 B社は、新潟市との業務委託契約に基づき、緊急対応業務を24時間体制で実施するものとされているところ、本件では8月6日から22日までの間申立人宅に機器が設置されておらず、そのことをB社は、新潟市に速やかに報告せず、その結果、あんしん連絡システムは16日間稼働していなかったものである。申立人は、障がい福祉課から回線の廃止を求められたためKDDIの工事日を早くしてもらったと言う。B社は、申立人が電話回線工事日を6日としたために交換機手配が間に合わなかったと言い、責任を感じていないかのようである。
 障がい福祉課は、B社に対して、電話で、今後このようなことがあった場合は障がい福祉課に連絡するよう依頼し、了承を得たというだけで終わっている。
 あんしん連絡システムは、障がい者が「緊急時に24時間体制」で通報できるよう、事業主体である新潟市が「新潟市身体障がい者あんしん連絡システム事業実施要綱」(以下「システム事業実施要綱」という。)を定めて、この事業をB社に委託した。新潟市とB社との委託契約書では、B社はシステム事業実施要綱及び事業実施仕様書のとおり業務を受諾しており、同要綱及び同仕様書にはいずれも「24時間体制」で実施するとあるところ、本件では、あんしん連絡システムが16日間も稼働していなかったのであり、同要綱及び契約に違反する事態が生じたことは明白である。
 今回は何事も起きなかったから良かったものの、システムが稼働しない状態でもし不幸な事態が生じた場合には、事業主体である新潟市の責任問題ともなりかねない。
 このような要綱及び契約違反が生じたことについて、事業主体である新潟市の所管部署としては、これを重く受け止めて、原因を究明し再発防止の対策を講ずべきではないかと思われるが、積極的な対応や意向が示されなかったのは残念である。
 
 以上のことから、上記のとおり意見の表明を行う。

所管課の処理方針

平成29年1月11日 障がい福祉課、A区健康福祉課
1  福祉電話について
 要綱その他制度改正等により、従前の内容を実質的に変更する場合は、事前説明・周知を徹底し、対象者へ十分に配慮するとともに適正な事業実施に努めます。
2  あんしん連絡システムについて
 工事日確定後、業者から担当区へ別紙(注記)により工事日の報告をすることとします。また、機器交換は原則同日付で行い、同日付でできない事態が発生した場合は、業者が担当区へ連絡し、稼働していない期間が生じることのないよう利用者・業者・市で協議することとします。

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市民生活部 広聴相談課

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