新潟市内企業のDX事例「株式会社NSGアカデミー ~個別指導のオンライン化を実現。AIで子供の感情を読み取り成績アップ~」

最終更新日:2023年6月23日

新潟市内企業のデジタル化による業務効率化や新事業創出などDX推進事例をご紹介します。身近な市内企業におけるDXの取り組みの過程や結果、人材育成や組織づくりなどの事例を自社の取り組みにお役立てください。
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株式会社NSGアカデミー

新潟市中央区の教育業「株式会社NSGアカデミー」は、遠隔で生徒の顔や手元を同時に確認できるオンライン教育の仕組みを構築し、従来の講師が通える地域にしか教室を作れないという課題をオンラインを活用して可能にしました。オンラインを活用することで既存のサービスの付加価値値を向上させるとともにさらなる事業拡大につながる事例です。

  • 取材した方 株式会社NSGアカデミー 代表取締役社長 小川 善弘様、NSG PLATS個別指導事業本部 本部室室長 古川 智詞様、株式会社BSNアイネット 産業ビジネス事業部 大橋 岳彦様
  • 取材日 2023年2月3日

企業概要、ビジネス、事業の強みをお聞かせください。

〈小川〉 弊社は、新潟県そして福島県、山形県で小学生から高校生までを対象とした学習塾を76拠点運営しています。形態も集団指導、個別指導そして、IT指導の東進衛星予備校と多岐にわたっています。様々なニーズに合わせて、それぞれのお子様の志を達成する通過点である志望校へ合格に導いているということが弊社の事業内容です。

DXの取り組みを始めることとなった理由や経営課題は何でしょうか

〈小川〉 弊社のDXの取り組みの1つが個別指導のオンライン化になります。我々、個別指導をひとつの事業ドメインとして運営しているのですが、実際に教える先生は、多くの大学生が講師として活躍しています。しかし、新潟県、山形県、福島県において、大学生が通いにくい場所に拠点を展開することができませんでした。弊社にとっては拠点を展開できないという課題があり、お客様にとっては良質な個別指導を受けることができないという課題がありました。それをオンラインで解決したいというのが我々の取り組みになります。
 弊社の個別指導は先生1人に生徒1人という、1対1指導にこだわって運営をしているんです。WEB会議システムがコロナ禍で広がったのですが、我々は単に顔が映るだけでは十分な教育ができないと考えていました。我々がこだわっているのは、例えば、子どもたちが解らないで手が止まっているのか、あるいは考えて手が止まっているのかを判断できるようになるということです。顔と手元両方を確認できるオンラインのシステムを実現したいと考えておりました。

それはうまく実現できたのですか

〈小川〉 顔と手元を両方映すことができないかといろいろな方法で試しました。ある時はタブレットを使ったり、ある時はスマートフォンを使ったり、またある時にはメガネのようなウェアラブルで試してみたんですけれども、理想通りにはならなかったんです。
その時にBSNアイネット様から顔と手元を映す仕組みができそうだというご提案があり、そして、やっと理想の形が実現できました。

理想の形を使いこなすための人材育成はどのようにされたのですか

〈小川〉 学習塾というのは、講師の腕1本でやっているので、オンラインとか、デジタルを使うことにどうしても抵抗がある社員が多かったです。
 それを解決するにはリアルよりオンラインの良さを伝えるということでした。オンラインでやると便利なこと、オンラインでしか実現できないことを我々自身が体験し、そしてお客様がやっているところを目で見て納得感を生むことが重要でした。
 また、全員がオンラインを使いこなすのは難しいので、専属の担当者を配置しました。専属担当者がいかにオンラインやデジタルの良さを実現できるかを専念できる組織づくりも必要だと考え、取り組んできました。

これからの経営や事業で目指していること、変革したことはありますか

〈小川〉 個別指導のオンライン化に取り組む中で、当初は、対面と変わらない教育成果、学習効果を生み出したいと取り組んできたんですけれども、実はリアルよりもオンラインのほうが優れているそういう部分も見えてきています。今後はデジタルだからこそできる教育の価値を追求していきたいと考えています。

今回の取り組みの前後で御社変わったことや効果、メリットはありますか

〈古川〉 オンラインでやるということは、先生と生徒が隣に居るのではなく、画面を通して生徒と先生が向き合う形になるので、先生の気持ちがしっかり伝わるのか、しっかり子どもたちの気持ちが読み取れるのか、ということが1番の課題でしたね。
 でも、試行錯誤していく中で、生徒の手元と表情をしっかり読み取ることができるようになりました。また、AIを組み込んでいて、子供たちの表情から、感情を読み取ることが可能になりました。AIのサポートも加わって、より的確に、生徒のことを指導できるようになっていると思います。結果として、子どもたちの定期テストの点数が対面でやっている指導と同等、もしくはそれ以上の点数が残せているんですね。

デジタルの活用で意思疎通ができるようになるということですか

〈古川〉 やってみて解ったことですが隣に先生がいるときよりも子供たちが活き活きしゃべっているなというのを感じたのです。先生が隣にいた時のほうが緊張感ってあったんですかね。デジタルになると普段は口数の少ない子がもっとしゃべってくれるようです。意図したことではなかったのですが、オンライン化の副産物でした。

DXに取り組んで社員の皆さんや講師に変化はありますか

〈古川〉 今までの塾ですと来てくれる生徒と働きに来てくれる講師、この両方を育成しなければいけなかったんです。生徒に向かうべき時間を講師の育成に使わざるをえなかったのです。それが今回、講師側とオンラインの教室とに分けることによって、生徒に向かう時間を多く作れるようになりました。
 その結果、今まで以上にもっとよく生徒のことがよくわかるようになりました。子どもたちから疑問を投げかけられる前から、こっちから「こうなんじゃないの」「ああなんじゃないの」という的確に言いあてて指導ができるようになったのは大きな変化だと思います。

システム開発を行ったベンダーの視点からお聞かせください。今回提供したサービスはどのようなものですか

〈大橋〉 弊社BSNアイネットが提供した「マルチアイ」というシステムはカメラを複数使うことができ、その映像をお互いに送りあうことができます。通信方法はクラウド上にサーバーを置かずに、直接P2P通信というパソコン同士を直で繋いで、映像を送りあっています。そのためにネットワーク負荷が軽減され、生徒の手元を非常にクリアな映像にして送ることが可能です。高額なカメラを使えば、当然きれいな映像を映せるんですけれど、安い一般のカメラを使っても、相手に映像をきれいに送れるように工夫してします。

NSGアカデミー様へどのようなご提案をされましたか。また、工夫考慮されたことはありますか。

〈大橋〉 まず現場を見たんですよ。そうしたら講師がいて、生徒さんがいて2人が声を出しながら会話をしている。同じように講師と生徒が会話をしているスペースがいくつもあって、この現場を再現しなきゃダメだなと思いました。そのために、画面上に講師の顔と手元、生徒の顔と手元の4つの情報を画面上に置くことによって会話と手元の動きを相手に伝えていくことを注意して作りました。
 今回のシステムは、少子化だとか地域格差ということもあるので、普通の回線や有線だけではなく、4Gや5Gなどのネットワーク回線にも対応できるように作り上げています。例えば、災害が起こったときにでも、子供の教育を止めることなく、どこでもできることを考慮しています。
 新潟大学の教授のお話しですが、病院の院内学級にいる子どもたちは、学校に行きたいけれどもなかなか行けない、それを表情に出さずに健気に勉強しているのですが、病室から出た後で子供は1人で泣いていたというのです。この話を聞いて、そういったところにNSGアカデミー様と一緒に情熱をもって、オンラインで教育を届けてあげられるシステムにしていきたいという気持ちになりました。

「マルチアイ」を活用するとこんなことができるという活用法や事例はありますか。

〈大橋〉 マルチカメラですので、いろんな場面が考えられますが、教育以外にも料理教室などの手元を見たいという場面、モノづくりやスポーツなど技術的なことを多角的に見ることにも使えます。昨年、マルチアイにAIを取り込んで、顔の表情を読み取って喜怒哀楽を画面上で表せるようにシステムを開発しました。
 それを使うと、今回の生徒さんの感情をみることや例えば面談とか、会議、相手との会話で、今の感情ってどうなんだろうなっていうのを読み取ることもできるようになっています。
 また、もう1つ昨年開発したのが、技能承継という課題を解決するものです。綾瀬はるかさんがピアノを弾いていると遠くから離れた感覚を共有できるっていうようなCMがあります。職人さんの技術を残しておきたいということで、腕に筋変異センサーとマルチアイをつなぎ合わせて、相手に筋肉の動きを伝えるものです。例えば職人さんがトントン叩いている力強さだとか、グッと力を入れる感覚をオンラインで相手に伝えることで、技術を相手に教えることもできるようになっています。今、幅広いオンラインでの使い方が見えてきています。

諸問題を解決できそうなお話しですね。インタビューさせていただき、ありがとうございました。
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