(6-16)防風林の管理に関する不備について
最終更新日:2025年4月22日
(6-16)防風林の管理に関する不備について
令和7年2月4日 苦情申立書受理
申立ての趣旨(要約)
私の自宅に隣接する防風林、防砂林の松の木の老木化と手入れを行わないことで、強風時には大きな枝が折れて自宅の壁に当たったり、屋根や付近の小路に多量の松葉が積もり、清掃をすると30キログラムの米袋で10袋ほどになります。また、自宅の雨どいが詰まったり、20センチメートル程度の折れた小枝が窓を叩くなどの被害が生じていたため、2023年1月に被害の状況を示す写真を添付した改善要望文書を担当課に提出しました。また、自治会の協力も得て担当課に請願書を提出していただきました。
その後、何ら改善されないため引き続き担当課に相談をしてきましたが、担当職員は「他にもっと大変な個所がある」というだけで、その個所も解決した様子も見えず、取り組まなければならない事案を先送りしているとしか思えません。
令和6年9月にも自治会長、担当課長、担当課職員で話し合いを行い、全体的な対応策を策定することとなったと思いますが、今になっても具体的なことが決定されていない様子で、適切な対処をいつ行うのかも全く分からず、担当課の対応はあまりにもスピード感が無く不誠実であることから苦情を申し立てます。
所管部署
A区建設課(以下「所管課」という。)
調査の結果の要旨
令和7年4月14日決定
申立人の主張及び所管課の説明と双方から提出のあった資料に基づき、当審査会では以下のとおり判断し調査結果とします。
第1 事実経過
(1)令和5年7月、申立人が所管課に要望書を提出。内容は「強風や降積雪で枝が折れて家に当たる。松の葉が屋根に落ち樋が詰まる。家屋より低くなるよう松の木上部の伐採を要望する。」というもの。本要望に関して所管課からは未回答であった。なお、枝折れについては過去に処理済みであった。
(2)同年10月17日、申立人が所管課に上記要望書について、所管課から反応がないため状況について電話で問い合わせを行った。(あわせてコンクリート杭破損についても連絡した。)これに対し、所管課は、後日現地確認を行うので可能であれば立会いを依頼したい旨申立人に伝えた。
(3)同年10月18日、申立人と所管課が両者立会いのもと現地確認を実施。所管課としては現状緊急的に対応が必要となるものはないことを確認するとともに、破損したコンクリート杭については破片を撤去した。所管課は申立人に口頭で、一般的に枝折れや越境など緊急対応が必要と判断したものについては市民個人からのものも対応しているが、緊急的でないものや、要望内容が地域や公園全体にかかるものについては、自治会などの地域単位での要望とするよう、自治会長に相談してほしいこと、限られた予算の中で〇〇公園を含めたA区全体の公園(約270公園)の維持管理を行っているため、他の地域で越境や枯木など緊急性があるものがある場合はどうしてもそれらを優先せざるを得ない状況であること、申立人からの要望は保安林の機能維持に関わるものであり、申立人以外の家屋や他の地域との公平性から、申立人の住宅付近を限定して対応することは難しいこと、今年度(令和5年度)、〇〇公園にかかる住宅際の樹木について調査を行い、その結果をもとに予算の範囲内で順次対応していくことを考えているため現状で何か対策することは難しいこと、状況が変われば、その都度対応したいと考えているので、何かあれば連絡してほしい旨を説明した。
(4)同年11月2日、申立人が所管課に要望書を提出。内容は、10月18日の立会いのお礼とあいかわらず屋根等に松葉がたまる量が多いことの苦情、今後について課長の考えを知りたいこと、同年7月の要望書に対して書面による回答を希望するもの。これに対し所管課は、電話で、松葉の処理については難しいが、再度現地確認を行うので、可能であれば立会いを依頼したい旨連絡した。
(5)同年11月9日、申立人と所管課が両者立会いのもと2回目の現地確認を実施。所管課としては10月18日の1回目の現地確認のときと状況は変わっていないことを確認し、所管課担当者が申立人に口頭で1回目の立会いのときと基本的な考えは同じであること、これまでは担当者としての考えを伝えてきたが、所管課としてどこまで対応可能であるか課内で協議した上、書面にて後日回答することを約束した。
(6)同年12月6日、申立人、所管課担当者及び造園業者同行の下、3回目の現地確認を実施し、所管課が申立人に回答書を提出した。回答書の内容は、現在、〇〇公園にかかる住宅際にある樹木の調査を実施中であり、緊急性があるものは順次対応していく予定であること、前回伝えたとおり当初、対応は難しいと考えていたが、住宅への影響を踏まえて所管課として検討した結果、要望通りとはいかないかもしれないが、可能な範囲で対応する旨の内容であった。また、現地で、作業内容を確認した結果、要望12本に対し、6本を剪定することにした。その他、現地で所管課から申立人に口頭で、所管課で現状対応可能な対策は行うこと、今後はこれでしばらく様子をみてもらうこととし、状況が変わればその都度連絡をもらい対応を考えることとする旨回答した。
(7)同年12月末、所管課・造園業者が現地で剪定作業を実施し、申立人の要望12本に対し、6本を剪定した。
(8)令和6年9月、〇〇町目自治会(以下「自治会」という。)が、所管課に対し要望書を提出した。要望書の内容は、住宅に影響のない海側の樹木はそのままとして防砂・防風効果を維持しながら、倒木、落枝、落葉などから住宅を守るため、住宅と隣接する樹木を低くすることを要望するもの。(段階型林型化による隣接住宅への災害回避に関する要望)これに対し所管課は自治会に口頭で、今年度について、緊急的なものがあれば対応すること、パトロール等でも確認すること、保安林であることから伐採などについては制限があるため、伐採して低く植え替えることについては困難であること、他の箇所も含め、倒木や越境の可能性があるといった緊急性が高いものを優先する必要があることのほか、予算も含めてA区内の公園全体を捉えた上で検討していく必要があることから、方針決定には時間を要すること、今後については、〇〇公園全体の課題として捉え、検討していくことを回答した。
(9)令和7年1月20日、申立人が所管課に電話で連絡をした。内容は、令和5年に剪定してもらったが、松葉が自宅に飛散してくる状況については変わらないこと、春までになんとかしてほしい等とし、1週間を目途に返事がほしい旨であった。これに対し所管課は、現地確認し、越境枝があれば対応すること、回答については、以前に自治会から要望書をもらっていることから自治会長へ連絡する旨回答した。
(10)同年1月27日、所管課が現地確認を実施した。越境やその可能性があるもの、枝折れ、枯木などは確認できなかった。
(11)同年1月28日、所管課が自治会に電話で連絡した。内容は、上記1月20日の申立人からの要望に対する回答であり、緊急的なものはなかったため作業は行っていないこと、前回要望書の回答のとおり、公園全体を捉えた課題として検討していく旨伝えた。
(12)同年2月3日、申立人が本審査会に本件苦情申立書を提出した。
第2 審査会の判断
1.申立人は、上記のとおり、所管課が申立人の自宅に隣接する防風林、防砂林の松の木の老木化と手入れを行わないことで、強風時には大きな枝が折れて自宅の壁に当たったり、屋根や付近の小路に多量の松葉が積もる。(清掃をすると30キログラムの米袋で10袋ほどになる旨)また、自宅の雨どいが詰まるなどの被害が生じていたため、令和5年1月に改善要望文書を担当課に提出したほか、自治会の協力も得て所管課に請願書を提出したが、その後、何ら改善されず、問題を先送りしている。令和6年9月にも自治会長、所管課長らで話し合いを行い、全体的な対応策を策定することとなったはずだが、今になっても具体的な決定がなされていない様子で、適切な対処をいつ行うのかも全く分からず、所管課の対応はあまりにもスピード感が無く不誠実であるというものです。
2.これに対する所管課の回答概要は次のとおりです。
〇〇公園の松林は、飛砂防備保安林として海岸付近の住宅はもとより、背後の市街地を守る機能を維持する必要があり、また、都市公園として利用者や周辺住民の安全を優先としながら、公園機能を維持する必要がある。申立人の要望は自宅の屋根や雨どいへ飛散する松葉の清掃に対する負担軽減が理由と思われるが、飛砂防備保安林としての機能の観点から樹木の伐採には制限がかけられているため、松葉飛散解消のみを理由とした松の伐採は難しい。公園に接する住宅に対しては、倒木や越境など緊急性のあるものについては優先して剪定などを行いながら対応しているが、樹木の伐採など景観や機能、一定の予算確保をふまえ、他の場所との公平性の観点から地域の課題への要望として受理して検討することとしている。検討の際には、要望の理由や現状確認を行いながら、他の要望や予算状況から対応の必要性や度合いを決定していくが、複数本の伐採など規模が大きくなった場合、整理には時間を要する。〇〇公園においては、今回の申立人と同様に公園と近接した家屋が多数あることから、状況に応じた緊急対策や定期パトロールを実施していくとともに、公園全体として現在把握している危険性がある樹木については、優先度を見極めながら、予算の範囲内で順次対応していく。もっとも今回は申立人や地元自治会との調整が不足していたことは反省しているため、今後は住民や地元自治会と必要に応じて情報共有を行っていく。
3.以上の内容を踏まえた当審査会の判断は次のとおりです。
まず、本件で問題となっている防風林・防砂林は、飛砂防備保安林として、新潟県が指定しているものです。その目的は、海岸の砂地を森林で被覆することにより、飛砂の発生を防止し、また、飛砂が海岸から内陸に進入するのを遮断防止することで、住民の生活環境の保護を図るためであり、そのため、この飛砂防備保安林に対しては、森林法に基づく伐採制限や伐採許可、植栽の義務等が課せられています。(森林法第34条本文)
本件申立人の要望内容は、同条但書に定められている伐採制限除外事由にあたるべき事情ではなく、そのため所管課が申立人等の要望に基づき、その判断で本件の飛砂防備保安林を早急に伐採することはそもそも法令上困難なものと言えます。加えて、本件の飛砂防備保安林は、その面積が約57ヘクタールと非常に広大で、樹木も約38万本と非常に多く、これは上記のとおり海岸の砂地を森林で被覆することにより、飛砂の発生を防止し、また、飛砂が海岸から内陸に進入するのを遮断防止することで、住民の生活環境の保護を図る目的があります。加えて、本件飛砂防備保安林は、樹木数約38万本と非常に多いものの、その生育環境には場所によって違いがあります。したがって、この飛砂防備保安林伐採の判断にあたっては、残念ながら申立人自宅付近の状況のみで判断できることではなく、〇〇公園全体の樹木に対して計画的な伐採や剪定等を行う必要があり、申立人の要望に添った伐採を行わなかったからといって、所管課の市政運営に過誤等の不当な状態があるとは言えず、また運用の改善が必要とは言えないものと考えます。
他方、飛砂防備保安林の伐採などについては、前述のとおり法律による制限もあることを説明した上で、理解を求める工夫も必要であったと考えます。
所管課も反省として述べているとおり、申立人からの連絡に回答をしなかったり、回答が遅れるなどしたことについては、所管課として調整不足があったものと考えます。この点については今後、申立人ら住民等や自治会との間で適切な調整を求める旨付言致します。
なお、申立人は高齢になってきたため、自宅屋根に積もった松葉の清掃が自身では難しくなってきたと述べています。実際に屋根に堆積した松葉の状況を示す写真を見ると、切実な問題であるように思います。
この問題を解決する方策として、例えば、豪雪地域では除雪ボランティアを募り除雪作業の援助を行っていますが、このような取り組みを参考にした仕組みづくりができないか、また、そういった作業を行ってくれる専門業者を市で紹介し、可能であれば作業に要した費用に対し一部補助金を交付するなど、何らかの対応ができないものか検討をしていただくことを希望します。
以上、調査の結果、当審査会は、本申立てについて、新潟市行政苦情審査会規則第16条第1項に基づく市長等に対する意見表明ないし提言をする必要性はないものと判断致します。
規則第16条第1項
審査会は、苦情等の調査の結果、必要があると認める場合は、市長等に対し、当該苦情等に係る市の業務について、是正その他の改善措置(以下「是正等」という。)を講ずるよう意見を表明し、又は制度の改善を求める提言をすることができる。
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