第4章 生物多様性の保全

最終更新日:2023年1月10日

現状と課題

新潟市の自然環境

 本市は、信濃川、阿賀野川の2つの大河をはじめ、福島潟や鳥屋野潟、佐潟、上堰潟などの里潟を有する、水辺環境に恵まれた都市です。その水辺環境の広がる越後平野に飛来するコハクチョウや国の天然記念物であるオオヒシクイの越冬数は日本一であり、晩秋から冬季にかけて見られるこれら渡り鳥がいる水辺や水田の様子は、本市を代表する景観のひとつとなっています。また、里潟で見られるオニバスは、本市が国内の自生の北限となっています。福島潟では、地域住民をはじめさまざまな主体が参加して、オニバスが生育できる水辺環境の保全活動を進めています。

飛翔する市の鳥「ハクチョウ」
飛翔する市の鳥「ハクチョウ」
オニバス
オニバス

図表4−1 県内におけるコハクチョウの飛来数の経年変化
図表4−1 県内におけるコハクチョウの飛来数の経年変化
出典:ガンカモ類の生息調査(環境省生物多様性センターホームページ)から抜粋して編集

 本市の水田面積は約28,300ヘクタール(農水省HP統計情報より)で市域の約4割を占め、市町村別では日本一となっています。田園環境は、食糧生産や良好な景観の形成といった役割を担うとともに、稲刈り後は落穂や二番穂を餌とするコハクチョウやオオヒシクイの餌場となるなど、生命をつなぐ大切な役割も担っています。

 オオタカやギフチョウなどの希少種をはじめ、多様な動植物が生息・生育するにいつ丘陵や角田山、多宝山などの里山が都市部に隣接しており、市民が自然とふれあう機会や、保全活動などに参加する機会が身近にあります。

 飛砂・高潮や強風からの被害を防ぐために植林されたマツ林は、本市の農地や住環境を守る役割があります。また、海岸部の砂浜を中心とした砂丘地には、希少な海浜植物が生息するなど多様な自然環境が形成されています。

 このように、本市にはさまざまな自然環境が形成されており、今後も、これらの豊かな自然環境を守るため、市民やさまざまな主体と連携・協働しながら保全活動を進めていくことが必要です。

新潟市における生物多様性の危機

 里山の雪割草や砂丘地の貴重な植物の盗掘による希少種の減少・消失のほか、農業用水路(用水路、排水路)や河川の整備、道路整備によるコンクリート化、市街化区域の拡大を要因とした動植物の生息・生育環境や移動経路の消失に伴う種及び個体数の減少などが確認されています。

 また、海岸保安林等のマツノザイセンチュウによるマツ枯れ被害地域の拡大、里山の利用減少による荒廃が課題としてあげられ、正確な現状調査および関係機関と連携した対策が必要です。

アレチウリ
アレチウリ

 人の活動により持ち込まれた外来生物や化学物質も生態系に影響を与えます。路傍や河川敷で見られる外来生物のオオキンケイギクやアレチウリなどの分布拡大により、在来種の生育域の減少がみられます。また、飼いきれなくなったペットの野外への遺棄による在来種の生息環境への悪影響も懸念されています。農業では、農薬や化学肥料を原因とした動植物の個体数の減少や種の消失などがあげられます。

施策展開

1 在来の動植物の生息・生育環境の保全・再生

(1) 在来の動植物の保護

新潟市レッドデータブック
新潟市レッドデータブック

絶滅のおそれのある動植物の保全

 里潟や里山では、地域住民を中心として、環境分野の市民団体やNPO、企業などさまざまな主体が関わり、自然環境と人との共存を図る地域づくりを行っています。また、「新潟市レッドデータブック」に掲載されている種の保護を図るため、希少な動植物の生息・生育状況に関する情報を公表して周知を図るとともに、開発行為に伴い希少動植物の生息・生育環境に影響を与える場合は、環境への負荷の低減や移植、生息地の創出などの対応策を事業者に伝えました。

佐潟市民探鳥会
佐潟市民探鳥会

在来の動植物の保全

 本市の豊かな自然環境を知ってもらうために、自然体験会や観察会を開催しているほか、水の駅「ビュー福島潟」や佐潟水鳥・湿地センターでは、レンジャーや解説員による自然環境・生きものに関する解説を通して、啓発活動を行っています。
 怪我や病気の野生鳥獣に関しては、動物病院に搬送するなど救護を行いました。また、巣から落ちた鳥のひなをはじめとした野生鳥獣との関わり方などを市民へ啓発しました。

外来生物の対策

 在来種の生息・生育の阻害となる外来種については、分布状況などの情報を共有するとともに、必要に応じて各主体とも連携しながら駆除作業に取り組みました。また、佐潟では、在来植物への被害状況の把握や防除のための基礎資料を得るために、外来生物の分布状況の把握を行いました。令和3年度までに本市で確認された特定外来生物の種類は、14種となっています。

(2) 動植物の生息・生育環境の保全・再生

里潟での取り組み

 里潟の周辺で見られる粗大ごみや農業用廃プラスチックなどの投棄に対して、福島潟、鳥屋野潟、佐潟などでは、それぞれ地域住民をはじめとした市民、市民団体、事業者、行政が一体となって、地域清掃やクリーン作戦を行い、自然環境の保全に努めました。令和3年度の福島潟クリーン作戦では、約600人の参加がありました。
 佐潟においては、佐潟の自然環境保全を検討するために平成18年に設置した「佐潟周辺自然環境保全連絡協議会」を令和3年度は2回開催し、保全策の協議や佐潟周辺自然環境保全計画の進行管理を行いました。主要な里潟においては、定期的に水質調査を行い、水質の常時監視を実施しました。

上堰潟ガイドブック
上堰潟ガイドブック

里潟研究ネットワーク会議の取り組み

 平成30年度まで新潟市潟環境研究所が培ってきた潟のネットワークを活かし、情報共有や各潟が抱える課題解決に向けた意見交換を行い、潟の保全と賢明な利用を推進するため、令和元年度に「新潟市里潟研究ネットワーク会議」を立ち上げました。令和3年度は、会議を2回開催し、各潟の取り組みや市の事業の報告等を行いました。また、本会議による里潟保全事業の取り組みとして、西蒲区にある上堰潟と仁箇堤を調査しガイドブックを作成しました。

田園での取組み

 本市では、化学肥料や農薬など化学的に合成された資材の使用量を低減する「環境保全型農業」を推進しています。令和3年度の環境保全型農業を実施する農地の割合は、24.70パーセントとなりました。
 本市の水田は、人への恵みをもたらすだけでなく、さまざまな動植物の生息・生育場所としても重要です。例えば、潟などの水辺をねぐらとするコハクチョウやオオヒシクイなどの水鳥にとって、周辺の水田は大切な餌場となっています。このようなさまざまな生きものが生活する場所として市民が農業や生物多様性の大切さを認識してもらえるよう、市の鳥「ハクチョウ」をシンボルとして、啓発活動に取り組みました。

朝日の森里山整備(秋葉区)
朝日の森里山整備(秋葉区)

里山での取り組み

 にいつ丘陵や角田山、多宝山では、市民団体やボランティア、地域住民などによって間伐や枝打ち、下草刈りのほか散策道の点検・整備などが行われました。

海岸保安林での取り組み

 保安林の維持・再生に関しては、必要に応じて地域住民や市民団体などと連携し、協働による植栽や除伐、下草刈りなど生物多様性に配慮した維持管理を実施するとともに、マツ枯れの予防に関しては、防除薬剤の散布を計画的に実施しました。

(3) 動植物の生息・生育情報の収集・蓄積

動植物の生息・生育状況の実態把握

 多くの動植物が生息・生育する里潟や里山などを対象に、動植物の生息・生育状況のモニタリング調査を実施し、情報の収集・蓄積を図っています。佐潟では専門家と連携して希少植物調査を実施し、その結果を佐潟周辺自然環境保全連絡協議会で報告しました。

自然環境情報の蓄積・利用

 多様な主体によって得られた調査結果やモニタリング結果については、適切に管理し、情報を蓄積しています。また、情報の共有化など利活用を進めました。

2 自然環境の持続可能な利用

鳥屋野潟市民探鳥会
鳥屋野潟市民探鳥会

(1) 生物多様性の保全に配慮した暮らしづくり

市民が潤いと安らぎを得られる機会の創出

 鳥屋野潟の市民探鳥会や市民団体と連携した生きもの観察会の開催、家庭で植物に親しむための園芸相談などを実施したほか、初心者向けの野鳥観察ガイドブックを配布するなど自然環境に関する知識を深め、自然を尊び・親しむ気運を醸成しました。令和3年度は、自然観察会・体験会への参加が45人、園芸相談が5,178件ありました。

(2) 事業者などへの自然環境の保全に配慮した事業活動の推進

生物多様性の保全に配慮した事業活動の推進

 大気・水・音・地盤環境を良好に保ち、公害を未然に防止し生物多様性を保全するため、環境監視や調査、発生源対策などを実施しました。

3 人材育成・協働の推進

(1) 人材育成・協働の推進

環境教育・環境学習の推進

 「いくとぴあ食花」では、体験を通して、子どもたちの心と身体の健康や豊かな人間性を育むことを目的に、食育・花育センター、食と花の交流センター、こども創造センター、動物ふれあいセンターが連携したプログラムを提供しています。令和3年度は304団体が実施しました。
 また、子どもたちによる田植えや草取り、稲刈りといった一連の米づくり作業を行う「学校教育田」や、日本初の公立教育ファームである「アグリパーク」などにおいて、市内全ての小学校が農業体験学習を実施し、地域の食や風土、生物多様性と農業の関わりについて学びました。
本市の生きものや自然情報を紹介する「にいがた生きものファンクラブ」では、Facebookやメールマガジンを通して、さまざまな情報を発信しています。令和3年度末の生きものファンクラブ登録者数は770名でした。また、生きものファンクラブは令和3年度末で終了となるため、登録者には潟のデジタル博物館への移行を促しました。

評価指標の達成状況

新潟市環境基本計画での指標項目 計画策定時点(平成25年度) 実績(令和3年度) 目標(令和4年度)
生物多様性の象徴としてのハクチョウとの共存 日本一の越冬数 現状を維持 現状を維持
特定外来生物の種類 10種 14種 現状より減少
環境保全型農業を実施する農地の割合※1 34.4パーセント 24.7パーセント 50パーセント

1 主食用水稲作付面積に占める化学合成農薬・化学合成肥料を5割以上削減した栽培面積の割合

評価

  • ハクチョウとの共存は、日本一の越冬数を継続して維持していることから、良好と判断できるものの、特定外来生物については、従来記録になかった種が、市外及び県外などから本市に侵入し、確認種数が増加している傾向が見られます。
  • 環境保全型農業を実施する農地(栽培面積)については、平成30年の米の需給調整の制度変更や、需要に応じた米生産の一環として推奨されている業務用米の取組の拡大等により、取組面積が引き続き減少しました。

課題・方向性

  • 特定外来生物については、持ち込ませないこと、野生化(定着)させないことが重要であり、県や周辺市町村と特定外来生物情報を共有し、連携した対応をとっていきます。また、既に定着してしまった特定外来生物については、市民への駆除協力を呼びかけます。
  • 令和5年度に「にいがた命のつながりプラン」-生物多様性地域計画-の改定を控えており、過年度実績の評価や課題、令和5年4月に策定予定の第4次環境基本計画の成果指標等を踏まえて、計画内容の見直しや新数値目標の見直しを実施します。
  • 環境保全型農業については、有機資源を活用した土づくりなど、生産性を維持しながら環境負荷を低減した農業を実践するため、各種施策を推進します。

このページの作成担当

環境部 環境政策課

〒951-8550 新潟市中央区学校町通1番町602番地1(市役所本館2階)
電話:025-226-1363 FAX:025-222-7031

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