史跡古津八幡山遺跡 弥生の丘展示館たより
最終更新日:2025年1月19日
古津八幡山遺跡歴史の広場、施設の見どころ・イベントの様子などを不定期にご紹介します。
令和6年12月号
冬期間閉鎖のお知らせ
お知らせ看板
歴史の広場のトイレを以下の期間閉鎖します。
12月1日から2月28日
歴史の広場復元住居内部については下記の日程のみ開いておりますので、ご利用ください。
1月4日・5日・11日・12日・13日・18日・19日・25日・26日
2月1日・2日・8日・9日・11日・15日・16日・22日から24日
詳しくは弥生の丘展示館(電話0250-21-4133)にお問い合わせいただくか、展示館脇の登り口に設置した看板をご確認ください。
雪化粧
雪化粧の様子
12月18日きれいな雪景色です。
いよいよ冬本番ですね。(古津八幡山遺跡登り口より)
冬を前にしたカラムシの刈り取り
カラムシ畑の様子
硬くなったカラムシを刈り取りました。来春の新芽を待ちます。
来年もカラムシを使っての体験イベントを計画しますので、皆様のご来館をお待ちしています。
木臼と縦杵の使用体験
木臼と縦杵
当館では平成25年に弥生時代遺跡からの出土品を参考にして、木臼と縦杵を復元しました。この木臼と縦杵は多くのイベントで活躍しましたが、このほど体験コーナー前に設置し、いつでも体験できるようになりました。
稲穂と籾が置いてありますので、弥生時代の脱穀や籾摺りを体験してみてください。
脱穀は稲穂から籾をはずす作業
籾摺りは籾をはずし玄米にする作業
質問コーナーへのお願い
質問コーナー
展示室入口のホワイトボードの質問コーナーにたくさんの方々から質問を記入していただき、ありがとうございます。
今後とも、わかりやすい回答を心がけてまいります。そこで皆様にお願いがあります。
お願い
●質問者の年齢に沿ったご回答を行いたいので、差し支えなければ、年齢も併せてご記入ください。
●出来るだけ多くの方々の質問をお受けしたいので、質問と回答の掲載期間は概ね3か月とします。その後はホワイトボード前のラックにある『弥生の丘展示館質問と回答』をご覧ください。
広場3号棟が変わります
復元住居3号棟の模型
3号棟内の様子
弥生の丘歴史の広場にある復元住居3号棟(広場中央)の内部に、生活の様子を復元しています。
建物内に当時の道具や食料などの模型、そして作業の様子がイメージできるものを展示し、当時の生活に思いをはせる空間作りを徐々に進めております。
12月時点では囲炉裏を囲む藁の敷物、囲炉裏中央には雑煮が入った甕、梁から吊るされた鮭2匹を展示しました。今後、展示品を増やし、当時の生活状況を再現した空間にしていきたいと思いますので、お楽しみに。
追加の展示品は随時、紹介していきます。
また、展示材料の入手等については、歴史の広場の環境維持にご尽力いただいている、シルバー人材センターの方々をはじめ、多くの方からの援助によるものです。感謝申し上げます。
えざらい
えざらい風景
クワイの収穫
12月7日、弥生の丘展示館裏にある水路のえざらいを行いました。集中豪雨などでたびたび土手を乗り越え、砂利敷きの弓矢体験場が水没していました。
水だけであれば自然に引きますが、溜まった泥も一緒に流れ込むと、泥の除去は容易でなく、雑草の温床にもなります。
当日は寒い日でしたが、沈み防止の板を支持に、20センチほど溜まった泥をすくい上げました。副産物として少量のクワイが取れましたよ。
これで来春から始まる弓矢体験の足場もきれいになり、気持ちよく体験していただけると思います。
からむしコースター作り
制作の様子
作品例
12月7日、『からむしコースター作り』が行われました。
色とりどりに染めたからむしの繊維をヨコ糸として、10センチ四方のコースターを作りました。
青色は藍、淡い水色はクサギ、濃いピンク色は桜の実、黄色と淡いピンク色はベニバナで染めたものです。
編台に糸をセットし、緊張の中、恐る恐る編み始めます。
開始後10分ほど過ぎると、繰り返す編み方にも慣れ、中には片手で手際よくタテ糸を返していく小学生もいました。びっくりです。
終了20分前には、ほとんどの方が目標の長さ10センチほどまで到達し、最後のタテ糸を縛ってヨコ糸を止める作業に入ります。ですがここでもびっくり。
ヨコ糸を止めるため、タテ糸を単純に結び、余分な糸を切りそろえて完成と思っていたのですが、なんと余ったタテ糸をさらに網目状につないで飾りにした方がおられたのです。
職員が逆に多くのことを学ばせてもらった一日でした。ありがとうございました。
令和6年11月号
新たなお出迎えキャラクター
小鹿の様子
これまで木彫りの熊が玄関前で皆様をお迎えしていたのですが、11月から小鹿が加わりました。日頃、歴史の広場の整備に従事している上田さんの作品です。感謝。
ドキドキ土器づくり
作成の様子1
作成の様子2
11月16日、昨年まで当館で勤務されていた田中耕作氏を講師に招き、小型土器の体験イベントを行いました。
縄文時代からの手法である、粘土ひもを積み上げた輪積み法で、本格的な小型土器を作ります。土器表面の文様付けも当時のものがお手本です。
口を波状にしたり外側に広げたりと、それぞれ思い描く形に仕上げていきます。
展示館スタッフは救護班です。ヒビが入った、口が垂れ下がってきた、太っているのでスリムにしたい等々、患者からの要請があれば、粘土の絆創膏でヒビをふさいだり、力技で絞ったりの治療を施し、完成に近づけます。短い時間でしたが、土器作りの楽しさや難しさを体験していただけたかと思います。
土器はその後、乾燥させ、焼成してから参加者に持ち帰っていただきました。
壊れたものはなく、皆さん喜んでおられました。
弥生の御朱印巡りスタート(令和6年10月号)
御朱印画像
全国の日本を代表する弥生時代遺跡と、その関連施設が連携した、御朱印巡りが10月30日から開始しました。
本州と九州にある35遺跡と関連施設38館を巡り、地方色豊かな弥生文化を体感し、その素晴らしさを隣人に語り継いでもらおうと企画したものです。
遺跡に付随する施設で独自の御朱印を無料で押印しますので、勉強や旅の合間に御朱印集めをされてはいかがでしょうか。
古津八幡山遺跡は日本海側最北の弥生時代高地性環濠集落で、御朱印巡り最北の遺跡でもあります。
集落の構造や生活の様子、近隣地域との関係など、九州や本州南半との違いを御朱印巡りを通じて体感してみてください。
令和6年9月号
体験コーナーのテーブルを改装しました
体験コーナーの様子
今まで座卓だった体験テーブルを長脚のものに替えました。大人や膝の不自由な方には不便をおかけしていましたが、今回の改装で長時間でも楽に体験してもらえるものと思います。
ミニチュア土器にトライ
ミニチュア土器づくりの様子
制作の様子
焼成後の作品
9月21日にオーブン陶土でミニチュアの土器を作りました。オーブン陶土を材料とした土器作りは、当館で初の試みです。
展示館スタッフは、事前に陶土の柔らかさや成形の具合、文様付けのタイミング、焼成方法を知るために試作を重ねましたが、当日うまくいくかドキドキでした。
イベントは大盛況で参加希望者が多数となり、2回に分けて行いました。
成形は輪積み、形押し、手づくねなど自由選択としましたが、子供は型押しが多かったようです。
型押しの場合、器壁の厚さが分かりづらく、薄く作ったものは形から外すと変形してしまうことから、底部と器壁を厚めに作ってもらいました。陶土は比較的硬くヒビが入り易いので、水を足したり丁寧な調整も必要となります。
土器は各自持ち帰って、自宅のオーブンで焼いていただきました。
焼き上がりがどうか心配でしたが、最近、参加された方が自宅で焼いた土器を持ってきてくださいました。(右上画像)
令和6年7月号
貝の腕輪を作ろう
作成の様子
作品例1
作品例2
7月20日に縄文時代遺跡から出土する二枚貝(ベンケイ貝)での腕輪作りに挑戦しました。当館での貝輪作りは初の試みです。
貝の内側をたたき砕いて外縁をできるだけ細く残し、砕いてあれた部分を磨って滑らかにします。手首まで通せる穴を作るのが目標です。貝の内側は石の台を利用し、鹿角や石でたたきました。
参加者の皆さんは、内側の穴を細かく砕いて広げていくことに苦戦し、途中で大きく割れたり、大きな穴をあけられずそのたびに、大きなため息があちこちで聞かれました。それでも幾度となく挑戦です。
スタッフからは実演で子供の手首まで通る貝輪をプレゼント。手首に入らない貝輪は小さな貝と組み合わせて首飾りにしました。
子供たちは自分の作品を身に着け、写真撮影にこたえてくれました。
からむし収穫・おひき体験
カラムシの収穫1
カラムシの収穫2
お引き体験
7月6日、縄文時代から利用され続けてきたからむしの収穫と、繊維を取るおひき体験を行いました。
弥生の丘展示館裏のからむし畑で、150センチ以上に成長したからむしをハサミで切り取り、葉と茎の芯を取り除き、外皮だけにした後、水付して準備OK。
いよいよおひき体験です。
まな板のようなおひき台の上にからむしを置き、専用の金具を使って繊維を取り出します。
最初は手間取りましたが、徐々に慣れてきた様子で、次々とからむしをひいていき、たくさんの繊維が取れました。
この後、昨年取ったからむしを使い、思い思いにストラップを作り、持ち帰っていただきました。
みんな集まれ~布を染めるよ(令和6年6月号)
染め方の説明
染色の様子
乾燥中
6月15日エコバックの染め体験を行いました。
毎年違う種類の植物を使い染めていますが、今年はベニバナです。
まずはエコバックの上に土器や土偶など好きな模様の型紙を置き、スティックのりで写し取っていきます。
糊が乾いたらいよいよ染めです。
べニバナ液に浸してしばらくすると、とても鮮やかなピンク色に染まっていきます。
あちこちから「きれい!」と歓声が聞かれました。
最後に水洗いし乾かして完成です。
可愛らしいバッグに仕上がり、大成功でした。
発掘体験(令和6年5月号)
発掘体験の様子
接合1
接合2
好天に恵まれた5月18日、展示館の敷地内にある砂場で発掘体験を行いました。
まずはスライドで発掘調査について学んだ後、さっそくスコップで砂を掘り起こしていきます。
ピンポールで狙いを定め掘り進めていくと、土器片が現れてきました。
1片ずつ丁寧にカゴに拾い上げ、ブラシで砂やごみを取り除いた後、館内に戻り接合していきます。
職員から接合の方法を聞き、机に土器片を並べていきますが、なかなか思うように接合できず、手間取ったようです。
中には再度砂場へ戻り、さらに土器片が残っていないかと必死に探す参加者もいました。
それでも最後は何とか土器の形に仕上がり、ほっと一安心の様子でした。
皆さま暑い中お疲れ様でした。
史跡古津八幡山弥生の丘展示館の朝の珍客(令和4年7月号)
羽化直後のオニヤンマ成虫
史跡古津八幡山弥生の丘展示館の横に、幅50cmくらいの小川が流れています。6月後半のある日、展示館のコンクリート壁の下の方で、ヤゴの抜け殻の上にしがみついた、大きなトンボのいることに気付きました。羽が乾くのを持っているようです。
トンボは長さ10cmくらいで、黄色と黒のストライプ模様が入っています。図鑑で調べると「オニヤンマ」のようです。
オニヤンマは、昆虫少年だった筆者にとってあこがれのトンボでした。トンボの中でも、アキアカネは、秋になると田んぼにあふれるほど飛んでおり、採集するのも容易でしたが、オニヤンマは丘陵近くの川沿いにしかおらず、高い所を猛スピードで飛ぶので、採集するのに難しかった思い出があります。
こんな身近な所に大型のトンボが生息していることに驚きました。オニヤンマのヤゴは、小魚もいない小川で何を食べて成長するのでしょうか。それが不思議です。弥生の丘展示館へ来られた際には、皆さんもオニヤンマのヤゴが生息する小川を見て、謎をといて下さい。
春遠からじ弥生の丘展示館の様子(令和4年2月号)
展示館と裏山の着雪した広葉樹
広葉樹の様子
今年(2022年)、古津八幡山弥生の丘展示館周辺は、昨年(最高積雪量116センチメートル)に比べて積雪量が少なく喜んでいたところ、2月の立春を過ぎた2月5日(土曜)に積雪量15センチメートルほどの降雪に見舞われました。そのため、今冬初めて展示館前の駐車場は、除雪車による除雪作業が行われ、開館前には玄関先の除雪も人力で行い、お客さんを迎える準備を整えることができました。当日は、朝5時の気温がマイナス2度まで冷えた影響もあり、展示館裏山の広葉樹に樹氷状に着雪し、とても幻想的な景色となりました。
現在、展示館では企画展3「新津丘陵の縄文遺跡文様と形のうつり変わり」を3月27日(日曜)まで開催中です。縄文時代の冬景色に思いをはせて、見学に訪れてみてください。運が良ければ冬の里山のきれいな景色が見られるかもしれません。春が待ち遠しい季節です。
遺跡内の昆虫からみた今冬の雪予測(令和3年12月号)
雪に覆われた復元竪穴住居(令和3年1月)
カマキリの卵嚢(らんのう)
今年(2021年)の1月初旬は大雪の影響で、史跡古津八幡山弥生の丘展示館は雪に覆われ、来館者の安全が確保出来ないため、何年かぶりに臨時休館とした日がありました。秋葉区では、1月11日(月曜)には積雪量116センチメートルになり、過去10年間で最深の積雪を記録しました。写真は、雪に覆われた復元竪穴住居の様子です。弥生時代もこのような大雪におそわれたかもしれません。
さて、今冬の雪の様子はどうなるのでしょうか。遺跡のある八幡山の丘陵にいる昆虫の中で、カマキリが本能的に雪の積雪量を予測できると言われています。子孫を残すために、寒さや天敵から守る卵嚢という薄茶色の繭状の中に卵を入れ、木や枝に産みつけます。その際に、雪の最大深度より上に産みつけるそうです。今年、展示館のすぐ隣で薪に使う木の切り株に、産みつられているのを見つけました。形からオオカマキリの卵嚢のようです。高さは50センチメートル位の所にありました。このカマキリの予測を信じれば、昨年より小雪となりますが、実際はどうなるでしょう。
史跡古津八幡山遺跡内のおそうじ屋さんセンチコガネ(令和3年11月号)
史跡をより大切に保存・活用していくため、2017(平成29)年から標高約25メートルの遺跡北東域の史跡指定地の外側で確認調査という発掘調査を実施しています。幅2メートル、長さ3メートル、深さ0.5メートル位の「トレンチ」と呼んでいる調査坑を10か所ほど平坦な尾根筋に設けて、遺跡の広がりを調べる目的で行っています。今年度も7月から11月まで発掘調査を行っています。
朝、トレンチにかけてある遺跡を保護する青いシートをめくると、様々な生き物が入り込んでいて驚かされます。カエル・蛇などの爬虫類・両生類の仲間と昆虫の仲間が多く見られます。昆虫の中には甲虫も多く、クワガタやゴミムシの仲間もいますが、秋に多く見られたのは糞虫の仲間のセンチコガネです。糞虫と聞くと汚いイメージがありますが、森の中の生態系では無くてはならない虫です。
センチコガネは、長さ2センチメートルくらいの大きさの甲虫です。小動物の獣糞や動物の死骸を食べて生活し、北海道から九州までに分布します。色は光沢のある黒・紫・紫銅・青紫色・深緑など、地域によってバリエーションがありとてもきれいです。当遺跡に住むセンチコガネの色は、光沢のある深緑色が多く見られます。幼虫は獣糞を食べて育ちます。遺跡内の森の中で、人知れず獣糞や動物の死骸をそうじして、最後は土に戻してくれる大切な役割を果たしています。春先や秋に地上の低い所を飛んでいる姿を見るので、運が良ければ出会えるかもしれません。
発掘調査現場の画像
センチコガネ画像
遺跡内の危険な昆虫スズメバチ(令和3年10月号)
史跡古津八幡山遺跡内には、多くの昆虫がいます。その中には、人にとって恐ろしいスズメバチがいます。今回は、そのスズメバチを紹介したいと思います。
9月中旬に遺跡内の除草作業を行っていたら、芝生と雑木林の境界近くの草地で大型のハチが多数舞う場所がありました。よく見ると頭が黄色で、おなかが黄色と黒色のストライプ模様の4センチメートルくらいのハチで、おなかの先に毒針を持つオオスズメバチのようです。
地面近くを多数のハチが大きな羽音をたてて、人を威嚇するように飛び回っている様子から、巣が地面の穴にあることが多いので、早速、駆除業者に除去してもらいました。取り出されたオオスズメバチの巣は、積み重なった伐採木のすき間に造られていました。直径40センチメートルくらいで重さ3.5キログラム、5段の部屋がありました。数百匹の働きバチが世話をしていたようです。
オオスズメバチは昆虫の仲間では生態系の上位にいます。夏にカブトムシが集まるクヌギなどの広葉樹の樹液をなめに飛んできている所をよく見ます。人が何も手を出さなければおとなしくしているのですが、一旦、刺激を受けると集団で襲いかかります。また、オオスズメバチの行動範囲は広く、2キロメートルにもおよぶと言われています。歴史の広場では、スズメバチの巣を発見しだい駆除しています。しかし、古津八幡山遺跡の林の中には、多くの巣があると考えられます。広場内を散策される方は、ハチに出会ったら刺激しないように静かに通って下さい。
オオスズメバチの巣(直径約40センチメートル)
最近の温暖化を示す蝶(令和3年9月号)
遺跡の斜面を覆うクズ(ウラギンシジミの食草)
ウラギンシジミ(オス)
史跡古津八幡山遺跡では、晩夏から秋にかけて、クズが生い茂る斜面を銀色にきらめき、俊敏に飛びまわる小型の蝶をよく目にします。大きさはモンシロチョウを一回り大きくしたくらいです。翅の先端がとがり、表面はオスが茶色の縁取りに朱色の紋、メスが茶色の縁取りに青灰色の紋があります。翅の裏面は白銀色の金属光沢をはなち、この特徴からウラギンシジミと和名で呼ばれます。幼虫はクズやフジの花芽を食べて成長します。
ウラギンシジミは、日本では本州以南に生息しています。もともと南方系の蝶で、1970年代までは新潟県で見ることが稀な蝶でした。しかし、ここ30年くらい、温暖化の影響で新潟市内でも成虫で越冬するようになり、春先にも成虫が見られ、晩夏から秋には多くの個体が目立ちます。遺跡では最近、ウラギンシジミと同様の、南方系の蝶の仲間であるアゲハチョウ科のモンキアゲハや、タテハチョウ科のツマグロヒョウモンなども見られます。
史跡古津八幡山遺跡に住むトンボたちパート1(令和3年8月号)
史跡古津八幡山遺跡には多くの昆虫が住んでいます。6月から9月にかけて、トンボの仲間が多数、林間や水辺を飛び回っています。
中でも、大型のオニヤンマが復元竪穴住居の間をぬうように飛んでいます。中型のオオシオカラトンボやコシアキトンボも遺跡内で多く目にします。遺跡東側の池の水辺には、小型のイトトンボ類が生息しています。
7月下旬から8月頃、長さ5cmくらいのグリーンメタリックな胴体から、尾に黒い4本の羽根を持つトンボ10数匹が、復元竪穴住居のまわりを低く乱舞するのを見かけました。夕日に照らされて鈍く光り、とても幻想的な光景でした。おそらく、エサとなる小昆虫の狩りの最中だったのでしょう。名前をハグロトンボと言い、羽根が黒いのが特徴です。遺跡近くの川で羽化し、山の上までとんできたようです。
このトンボは、綺麗な水中でヤゴの時期を過ごします。遺跡周辺の水場が綺麗な証拠です。
ハグロトンボ
史跡古津八幡山遺跡内に住む美麗な蝶パート2(令和3年7月号)
令和2年11月号でも紹介したアワブキは、スミナガシというタテハチョウ科の蝶の食草でもあります。
スミナガシは開長60ミリメートル前後で表裏の羽根が薄墨色でストロー状の口が特徴的な赤色の蝶です。数年前に史跡古津八幡山弥生の丘展示館内のガラス窓付近からスミナガシが見つかりました。残念ながらすでに死んでいたので、標本にしました。おそらくこの蝶も新津丘陵のアワブキで育ったと考えられます。この蝶は現在、新津丘陵ではなかなか見られない貴重な種類です。史跡古津八幡山遺跡は、遺跡だけなく生物多様性の観点でも重要な里山となっています。
なお、遺跡内で昆虫や植物観察されるのはかまいませんが、節度ある行動をお願いします。
アワブキ
スミナガシ
古津八幡山遺跡カラムシ畑の蝶(令和3年6月号)
史跡古津八幡山弥生の丘展示館の裏に、アンギン編みの体験学習のために栽培しているカラムシ畑があります。そこでカラムシの葉がつづられて餃子のような形になっているものを複数発見しました。これを作った正体は、蝶の仲間のアカタテハの幼虫です。写真にあるように、黒い4cmほどの胴体に黄色い棘状の毛が生えています。触れても皮膚にはささりません。幼虫は糸を出して葉と葉を接着し、その中に入って葉を食べます。鳥などに姿を見つけられないための知恵なのでしょう。
アカタテハは成虫になると前翅長(前羽の長さ)が4cm前後、全体は燈色で、前翅の先端が黒い蝶になります。初夏と秋に成虫になり、冬を成虫のまま越します。
縄文・弥生時代から現代まで、カラムシとともに私たちの身近にいる蝶です。古津八幡山遺跡に来られた際には、探してみて下さい。
カラムシの葉とアカタテハの幼虫
アカタテハの成虫
古津八幡山遺跡復元住居の軒下に住む「アリジゴク」(令和3年5月号)
古津八幡山遺跡歴史の広場に、弥生時代の竪穴住居が7棟復元されています。復元住居の屋根は茅葺きで再現されており、奥行き30から50センチメートル程度のわずかな軒下があります。軒下の土は、大部分が粘土質ですが、一部はさらさらした砂質の部分があります。そこに、直径5センチメートル、深さ4センチメートル程度のすり鉢状の穴が所々に見られます。一見雨だれに見えますが、平面形はきれいな逆円錐形になっています。そこに住むのは俗称「アリジゴク」と呼ばれるウスバカゲロウの幼虫です。「アリジゴク」は体長1センチメートルくらいで、全身が毛に覆われ、非常に鋭い上顎を持っています。穴の底に落ちてくる餌となるアリなどの昆虫をじっと待って生活しています。幼虫の期間は2年から3年ほどです。成熟した「アリジゴク」は繭の中で蛹になり、初夏にトンボによく似たウスバカゲロウになります。ウスバカゲロウは1か月ほど生きて、子孫を残します。竪穴住居跡の見学の際に探してみてください。
復元住居軒下にあるアリジゴクの巣穴
野イチゴの魅力(令和3年4月号)
新緑がまぶしく華やいだ季節になりました。この時期の楽しみとなっているのが、クサイチゴです。地表を草のように縦横に這いながら伸びていく様子から、この名がついたとされています。花びらは純白で、道端のあちこちで楚々と咲き誇っています。一見すると端麗で優美な印象のクサイチゴですが、茎にはトゲがあり、バラ科に属する樹木です。草ではなかったのですね。初夏になると甘酸っぱい実が赤く熟し、生でも食べられますが、ジャムなどに加工するとさらにおいしく頂けます。くれぐれも茎のトゲには気をつけて、探してみてください。
展示室の秘密(令和3年3月号)
展示室にあるモニター映像のひとつに「国指定史跡古津八幡山遺跡の歴史」があります。
この映像のナレーションは、アニメ「クレヨンしんちゃん」の園長先生でお馴染みの声優、故納谷六朗さんです。皆さんご存知でしたか?納谷さんは他にも「機関車トーマス」のトップハム・ハット卿、「聖闘士星矢」の水瓶座のカミュなど、数多くの作品に出演されています。
今は亡き納谷六朗さんの懐かしくナイーブな声と共に、弥生時代からの八幡山の変遷を、わかりやすいアニメーションで見ることができます。
これからもテレビやラジオのアニメーションを見る時に、納谷さんの声を探してみてはいかがでしょうか。
雪上観察(令和3年2月号)
雪上の足跡(1)
キラキラ光る雪原で、点々と続く何匹もの動物の足跡を見ることがあります。
まっすぐ等間隔についているもの、二匹が仲良く並んで歩いて(走って)いるもの、しっかり爪の跡が見られるものなどです。
色々なことを想像します。側溝では「ここで思いっきりジャンプしたな?」、「この木に登ったな?」、「エサを探して歩き回ったのかな?」とか。楽しい推理をしてみてください。
- ねらい目は早朝です。と言うのも、夜行性のほ乳類がほとんどで、足跡は強い日差しや風、雨などですぐに変形するからです。
雪上の足跡(2)
さて、ここで問題です。雪上の足跡(2)の画像はどんな動物のものでしょうか?
前足が縦に二つ、それを飛び越えた前方に後ろ足の長い跡が横に並んで二つついています。
(答えは・・・ウサギです。)
ジオラマの世界(令和2年12月号)
展示室の右手奥に進むと、ジオラマ模型があります。ここは弥生時代、約2000年前の古津八幡山遺跡の様子を再現しています。
沢から水を運び、火を起こして煮炊きをする人々、弓矢で獲物を狩り、鉄斧で木を伐る人々など、今にも動き出しそうなリアルな世界が投影されています。
さらに圧巻なのは、古津八幡山遺跡を包み込む背景です。写真のように見えますが、目を凝らしてみると実は絵画なのです。阿賀野市出身でウルトラマン・ゴジラ等の円谷プロ作品や、大林信彦監督の「漂流教室」など、様々な背景画を手掛けている島倉二千六さんの作品です。ぜひ当館にお越し頂き、ジオラマの世界を覗いてみてください。
弥生時代の古津八幡山遺跡を再現したジオラマの写真
史跡古津八幡山遺跡内に住む美麗な蝶(令和2年11月号)
史跡古津八幡山遺跡は重要な遺跡であるとともに、里山として多くの市民の憩いの場所になっています。遺跡を含む丘陵は新津丘陵と呼ばれています。新津丘陵は、多くの昆虫たちが住みかとしています。その中でも蝶類は78種が確認されています。初夏から夏にかけては遺跡内を大型の黒いアゲハチョウを含む多くの蝶が飛び交っています。里山に豊かな植生があるためにほかなりません。
遺跡内に果樹のビワに似た葉のアワブキが自生しています。今年の7月に、葉の先端が2つに巻かれたものを見つけました。中から有名な絵本「はらぺこあおむし」に出てくる頭が赤い幼虫が出てきました。胴体は緑と黒のストライプで「はらぺこあおむし」の色とは、若干ちがいますが、イメージは絵本の世界の「いもむし」です。この幼虫はそっと元の場所に戻しました。成虫はビロード色の青がかった緑の羽根を持ち、うしろ羽根先端が鮮やかなオレンジで開長45mm前後の美麗な姿です。この蝶の幼虫から成虫にいたる色の変化には、驚かされます。蝶の名前は、羽根の色からアオバセセリと名付けられています。
アオバセセリ(成虫)
アワブキの葉
縄文時代の楽器(令和2年10月号)
縄文時代に音楽はあったのか、楽器はあったのか、と聞かれることがあります。木を太鼓のようにたたいたり、草笛・口笛など、音を出す方法はいろいろありますが、楽器と考えられる土器や土製品も遺跡から出土しています。
長野・山梨県の縄文中期には、「有孔つば付き土器」という皮を張って太鼓のように使われたと考えられている土器があります。
また、鶏卵くらいの大きさで、風船状の焼き物の土笛・土鈴も音が鳴ります。土笛は、1個の穴に息を細く吹き込んで音を出し、土鈴は小石や土玉を数個入れて焼き、振ると小さな音がします。県内では、縄文前期の胎内市二軒茶屋遺跡と長岡市大武遺跡で土鈴が出土しています。
弥生の丘展示館の10月の体験では、下の見本写真のように、粘土で土笛・土鈴・土面を作ることができます。電気窯で焼いてお渡しします。好きな形を作りに来ませんか。
土鈴の見本
歴史の広場の紹介(令和2年9月号)
弥生の丘展示館から歩いて10分位の丘の上に、弥生時代のムラが復元されています。新津丘陵西側の尾根に立地する、弥生時代後期と古墳時代中期の遺跡です。弥生時代は、中国の歴史書『魏志倭人伝』に邪馬台国や女王卑弥呼のことが書かれた頃です。戦いに備えて、丘陵の上に集落が作られ、尾根頂上の標高は53メートルです。古津八幡山古墳(円墳)の直径は60メートルで、県内最大の大きさです。越後平野から弥彦山・角田山、天気が良いと佐渡まで見渡せる眺望も素晴らしいです。広場には竪穴住居が7棟復元されていて、中に入ってみることもできます。
そこで歴史の広場をいつも管理されている方々に、お話を聞いてみました。
質問どんな仕事をされていますか?
答え竪穴住居の燻蒸や機械による芝刈り、刈払機で雑草等の除草、その他困ったお客様への誘導などです。
質問今までで一番うれしかったことは?
答え芝刈りの後の広大な美しさにお客様から、「きれいですね」と感動されたことです。
貴重なご意見、ありがとうございました。いつもご苦労様です。
残暑も日ごとに和らいで初秋の季節となり、緑いっぱいの開放的な歴史の広場で、ちいさな発見をされてみてはいかがでしょうか?
芝刈り作業の様子
芝刈り後の広場
なお、継続して発掘調査を行っている遺跡の現地説明会を以下のとおり開催します。
日時令和2年10月3日(土曜日)午前10時から午後3時30分
場所新潟市秋葉区金津(古津八幡山遺跡北側の中腹平坦地)
午後10時からと午後1時から調査員による説明会を開催いたします。多数のご来場をお待ちいたしております。
クワの葉の不思議(令和2年8月号)
弥生の丘展示館から登ったカラムシ畑の裏手にクワの木があります。花期は4月から5月頃で、7月には長さ2センチメートルほどの黒紫色の甘い実をつけます。この実は人だけではなく、鳥や虫達も大好物です。
今回は葉の形に注目してみたいと思います。
クワの葉は、ハート形や、切り込みの入っているものなどがあり、同じ木の中でも大きさや形がさまざまです。どちらも先端がとがり、縁はギザギザになっています。もともとクワには「異型葉」という性質があって、若い木では切り込みが多く、成木になるとハート形になるんです。不思議ですね。
また、「蚕」の餌としても知られていて、葉を煎じてお茶や薬として、昔から親しまれています。
クワの実
クワの葉
来年2月には、当館のイベント「葉っぱで染めよう」が開催されます。クワの葉を使って、すてきな作品を作ってみませんか。
カラムシが風に揺れて(令和2年7月号)
弥生の丘展示館のすぐ裏手、歴史広場へ登る坂道の左側にカラムシの畑があります。背丈くらいの高さに密生しており、シソのように大きな葉は、風に揺れると白く裏返ります。
カラムシはイラクサ科の多年草で、真っ直ぐな茎の皮から繊維を取り出し、糸として利用します。苧麻や苧とも呼ばれ、越後縮や小千谷縮の原料となります。
古くは、約6,000年前の縄文時代の遺跡で確認され、縄文土器に縄目の文様を付ける撚紐や、タテ糸にヨコ糸をからませた編布も作られています。
カラムシの葉
葉の裏側
花づくしの山だよりパート2(令和2年6月19日号)
6月の古津八幡山には、異なる成り立ちをした白い花がたくさん咲いています。
ヤマボウシのトンネル
ヤマボウシ 2020年6月10日撮影
弥生の丘展示館からの登り坂では、ヤマボウシのトンネルがお出迎えです。
白い花びらのように見えるのは、苞という花を守る葉っぱが変形した部分です。
花は、中心の大仏様の螺髪のようなポツポツの部分です。9月頃につける赤い実は食べられます。
スイカズラ 2020年6月3日撮影
史跡名称板の石碑から左に曲がった所には、「あっかんべー」をしているように見える、スイカズラが可憐に咲いています。
滝のように咲くイワガラミ
イワガラミ 2020年6月10日撮影
さらに、舗装道路に入ってすぐ、空を見上げると、コナラの木に巻きついたイワガラミが、滝のように降りそそぎ、ガクアジサイのような白い花をつけています。
花づくしの山だより(令和2年5月14日号)
ウゴツクバネウツギ
タニウツギ
古津八幡山遺跡の植物たちは、いま一斉に花盛り。中でも、あちこちで見かけるタニウツギの桃色の花は、可憐な姿で咲き誇っています。紫色のフジも横へ横へと枝を垂れ伸ばし、甘い香りをあたりに漂わせています。
ふと、小さなラッパのような形をした、白いウゴツクバネウツギを見つけました。花の内側には、まるでオレンジ色の変わった装飾が施されているようです。ウゴとは秋田県羽後地方に多く生息していることから、ツクバネはガクの部分が羽根つきの羽に似ていることから名付けられたそうです。
古墳下のトイレから少し登ったところで見つけました。ぜひ、探してみてください。
史跡古津八幡山遺跡の女神は何処に(令和2年4月24日号)
古津八幡山古墳の満開の桜
ギフチョウ(秋葉区内で撮影)
今年の4月は、例年より早い桜の開花でした。桜の花が咲くころ、黒と白のストライプ模様に尾状突起近くの赤い模様が目立つ小型アゲハチョウ(開帳5~6センチメートル位)が、桜などの花の蜜を求めて、飛び回ります。新津丘陵の里山には少ないながら生息し、名前はギフチョウと言います。早春の3~4月の一瞬だけ現れるため「春の女神」とも呼ばれています。この蝶は、里山の主に広葉樹の林床にはえるカンアオイ類(新津丘陵ではコシノカンアオイ)を食草とし、現在の分布は日本の本州島(秋田県から山口県まで)に生息する日本固有種です。縄文・弥生時代から現代まで人類と共生してきた蝶と考えられます。
史跡古津八幡山遺跡内では目撃情報があるのですが確実に生息していると言えず、未だ、まぼろしの蝶です。(弥生の丘展示館内に展示されているギフチョウ標本は秋葉区内の別産地産です。)。下草の少ない広葉樹の林床に生息をするので、環境さえ整えば、いずれ古津八幡山古墳の桜に多くのギフチョウが吸蜜する姿が見られるかもしれません。
平成31年4月23日号
弥生の丘展示館裏の桜の写真
オオカメノキの写真
弥生の丘展示館から史跡公園へ繋がる園路沿いにある桜や、古津八幡山古墳の周囲にあるソメイヨシノは満開です。オオカメノキの白い花も見頃となり、遺跡は春の花の時期を迎えています。
近接する新潟県立植物園でも桜や椿をはじめさまざまな植物の花が咲いています。ゆっくりと散策しながら1日を楽しむことができる「花と遺跡のふるさと公園」へ是非お越しください。
平成30年4月6日号
園路沿いの桜の写真
桜の花の拡大写真
満開の椿の写真
弥生の丘展示館から史跡公園へ繋がる園路沿いにある桜がほぼ満開になりました。
花の色はソメイヨシノよりも濃いピンク色です。
古津八幡山古墳の周囲ではソメイヨシノが咲きはじめました。
コブシの白い花も見頃となり、古津八幡山遺跡は花の時期を迎えています。
近接する新潟県立植物園でも桜や椿が見頃となっています。
古津八幡山遺跡を含む「花と遺跡のふるさと公園」には見どころがたくさんあります。是非、散策に訪れてみてください。