映像ホール

大きな平釜に原油を入れて、下の釜に熱を加えると、石油の蒸気は上に昇り、その上から覆っている釜で冷やされ、灯油が流出口から出てきます。柄目木の真柄家は、明治初期、採掘した原油からランビキで灯油を製造し販売しました。

坑口から入るわずかな自然光を頼りに、展示されているようなつるはしなどの用具で掘り進みました。作業は短時間で交代しますが、交代時には酸欠などで意識不明になることもありました。坑夫はブリキの小笠状のヘルメットをかぶりましたが、これは落下物の防護のほか、上からのわずかな光を手元に反射させる役目もありました。

ガスが溜まっている朝は、大勢でたたらを踏んで大量の空気を送り込み、通気と換気をおこないました。大変危険な作業で常に死と隣り合わせですから、この作業は絆の強い家族や親族で行われました。また、たたらから坑底に伸びる風トヨは送風だけでなく、坑夫との通話にも利用されました。

採取された原油は、おもに女性が原油の入った樽を背でかついで能代川の船つき場へ運びました。 船着き場からは油船で能代川、小阿賀野川、信濃川を下り、日宝町や新潟の製油所に運ばれました。

坑口の真上にシーソーのように動くウオーキングビームの一端があり、そこからワイヤーロープで刃先を吊り下げ、その上下動で坑底を破砕しながら掘り進みました。ウオーキングビームを動かす動力には蒸気機関が使われていましたが、明治の終わりころからしだいに電動モーターに代わっていきました。

原油で黒くなった油樽は、明治中期には採取された原油を樽に詰めて、主に女性が背負って集油所や油船の船着き場まで運んでいましたが、大変な重労働だったと思います。 昭和10年頃、中野興業の石油輸送の主力は、パイプラインを敷設してポンプで矢代田駅や信濃川の船着き場まで送油しました。矢代田駅からは油槽車で長岡や柏崎の製油所へ、また信濃川の船着き場からは油船で新潟の製油所まで運びました。

新津の町は、大八車のガラガラという音で朝が始まり、にぎやかでした。また、明治30年に開通した新津駅の構内には、石油積込用の専用線が敷設されました。新津の街は「鉄道の街」としても知られるようになりました。 一方、柄目木や滝谷などでは製油所が立ち並び、煙突から出る亜硫酸ガスを含む煙で樹木が枯れるなど、煙害で住民の苦情があいつぎました。 当時の暮らしで使用していた瓦、油瓶、アカシンダイ、行灯、燭台型ランプなども展示しています。

昭和初期、このような誘蛾灯のあかりが多くみられました。 また、くそうず竹筒も展示されています。この竹筒に石油を入れ、水田の中を歩きながら振り回すと小さな穴から石油が出ます。その後、稲を棒などで叩いて稲につくウンカなどの害虫を落とします。 「水面に落ちた害虫は石油がついて飛べずにそのまま駆除できる」という道具です。

その結果、熊沢鉱場は多くの石油業者が掘削を行い、開発ラッシュになりました。 明治42年、新津油田全体の産油量が年産12万KLになり、新津の町は空前の「石油景気」に沸きました。その後、ロータリー式掘削機が導入され、より深くより速く掘削することができるようになりました。 展示棚の後ろの壁側には、機械掘りで使用した目的を異にする各種の掘り鉄管や工具を展示しています。手前の展示台の上には、当時使用していたロータリー式掘削機の各種ビットを展示しています。

中野家は、文化元年に石油の採掘権を得てから石油を稼業としました。中野貫一は明治7年、手掘りから始めましたが、相次ぐ失敗など苦難の道をたどりました。しかし、強い意思と熱い情熱で成功し、日本石油、宝田石油に次ぐ大産油業者となり、日本で5本の指に数えられる財閥となり、その業績は後世に語り継がれています。平成8年、諸般の状況の変化により最後まで石油生産を続けた中野家の丸泉石油興産は、約200年の石油の採取を停止しました。 平成30年に「新津油田金津鉱場跡」が文部科学省から史跡に指定されました。 史跡に指定されたエリアには、集油タンクや水切りタンク、ポンピングパワー、石油井戸、櫓、継転機、引張り線など石油生産システム全体が保存されています。このような貴重な石油産業遺産群が保存されているのは、世界の中でもこの「新津油田金津鉱場跡」だけです。お時間のある方は「遺産めぐり」のウォーキングコースをお楽しみ下さい。