にいがた共育通信 令和4年度 第104号

最終更新日:2022年10月31日

新潟市立幼稚園の取組

幼児期の教育

 幼児期の教育は「教育基本法」において、「生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なもの」とされています。幼児教育から義務教育、高等学校教育までを見通して、生活や学習に必要となる資質・能力が育まれるよう、幼児教育段階については次のような「資質・能力の基礎を一体的に育む」こととされています。

幼児期の教育イメージ

 また、幼稚園、保育所、認定こども園といった施設類型を問わず、共通に、小学校以上の教職員との連携や、地域、家庭等との連携の手がかりとするため、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を明確にしています。

幼児期の終わりまでに育ってほしい具体的な姿イメージ

 小学校学習指導要領においても、幼児期の学びから小学校教育に円滑に移行できるよう、各教科等の指導において、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿との関連を考慮することが求められています。

各幼稚園の取組

 幼稚園教育はいわゆる早期教育ではなく、算数、音楽、体育などの小学校教育の前倒しではありません。遊びを通して学ぶこと、すなわち、「自ら考え、主体的に行動し、感じて気付く」という、幼児期の特性を踏まえた教育が、その後の小学校教育の最も大切な基礎を培っているのです。
 今回は、新潟市立幼稚園8園のうち、結幼稚園、市之瀬幼稚園、小須戸幼稚園、西幼稚園の4園の取組について紹介します。
 ほか4園については、前回第103号で紹介しています。

1 結幼稚園

 結幼稚園では、自分、お互いを大切な存在と感じながら、主体的に人、もの、ことに関わる子どもに育ってほしいと願っています。

  •  一人一人のありのままを受け容れ、よさを認めて発信し、子ども同士がお互いを認め合い大切な存在と感じ合う雰囲気づくりを大切にしています。
  •  日々の保育を振り返りながら、子どもたちの興味や関心に基づいた保育活動の工夫に努めています。その中で、「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」の視点をもった「振り返りシート」を用い、エピソードで子どもたちの姿を伝えることで、全職員で幼児理解を深めたり、援助について共通理解したりしています。
  •  一人一人のよさを多面的に理解していけるように、日々気が付いたことを付箋に記入し職員間で情報共有しています。

 子どもたちは、好きなもの・好きなこと・楽しいことを共有する中では、一緒にいるうれしさを感じ、自ずと声を掛け合い、そうした友達に対して、共感し、思いやりのある行動をするようになります。一緒に試行錯誤したり、ときにはけんかをしたりしながらも、友達と一緒に力を合わせる楽しさを感じ、最後まで諦めない気持ちをもつ等様々な経験していきます。
 結幼稚園では、学年を超えたメンバーで飼育ケースに頭を寄せ合って生き物を見たり触れたりしている姿が日常的に見られます。家で捕まえた虫を大事そうに持って登園してきた年中児の、「○○くん、もう来た?」と“虫仲間”の年長児に見せたくて仕方がないという表情一つからも、相手を大切な存在と感じていることがとてもよく伝わってきます。このような温かい心情をベースに、保護者の皆様と共に子どもたちの成長を支え育んでいます。

2 市之瀬幼稚園

「もっと〇〇したい!」と自ら動き出す子どもの育成を目指して
 市之瀬幼稚園は、豊かな自然環境に恵まれた幼稚園です。子どもたちは、広い園庭を駆け回り、四季折々の草花や虫たちに触れながら、色水作りを楽しんだり、虫取りをしたりして過ごしています。また、畑では季節の野菜をたくさん育て、その収穫を楽しみながら、多くのことを学んでいます。
 例えば、野菜の苗を植える時には、「この葉っぱはチクチクするな。」「こっちは、もう花が付いているよ。」「畑の土はあったかいね。」など、自分で植えたからこそ気付く発見がいっぱいありました。また、育てていく過程では、「せっかく咲いたカボチャの花が実がならずしぼんでしまうのはなぜ?」と、疑問を抱き、地域の野菜の先生に相談に行ったところ、「受粉の必要性」を丁寧に教えていただき、野菜のお世話は水やりだけではないことを学びました。
 こうした、本物との出会いが、子どもたちの心に火を点け、その結果「もっと大きく育てたい。」「いっぱい収穫したい。」「大変だけど大切に育てたい。」という気持ちに繋がっています。そしてこの「もっと〇〇したい!」という気持ちこそ、幼児期に育てたい「学びに向かう力」であると考えています。

 このように市之瀬幼稚園では、子どもたちの「もっと〇〇したい!」という気持ちを何よりも大切にして、その思いがさらに広がっていくように保育をしています。そして子どもたちが、人・もの・ことと関わりながら、好奇心や探求心を膨らませて自ら動き出す姿を目指して、全職員で環境構成の工夫や援助の工夫を日々話し合っています。
 これからも、少人数の幼稚園ならではのよさを最大限に生かし、一人一人の思いや願いが実現できるよう、子どもたちを、認め、励ましていきます。
 そして、全職員が「愛のシャワーで子どもを包む」を合言葉に、保護者の皆様と喜びを共有しながら子どもたちの成長を支えていきます。

3 小須戸幼稚園

思考を温める時間(幼児期に大切にしたいこと 10月園だよりより)
 ある日の降園後。掃除をしながら廊下を歩いていると保育室に子どもの気配がします。おやっと思い保育室をのぞいた私は「うわぁ!」と思わず叫び声をあげてしまいました。その後は驚きと可笑しさでお腹がよじれるほど笑いました。そこにいたのはろくちゃん。子どもたちが作ったろくろっくびの人形だったのです。
 絵本やテレビ、自分たちの経験などからおばけ屋敷に興味をもち、ビニールから手だけを出したり、目玉をいくつも付けたり、口から大きな舌を出したりなど、おばけを作ったり、なりきったりすることを楽しんでいく中で誕生したのが、ろくろっくびのろくちゃんです。そこにいるだけで「ぎょっ」とするのですが、よりリアルに驚かせたいという気持ちが高まり、子どもたちは知恵を出し合って、日々ろくちゃんに改良を加えていきました。
 「目玉は怖い感じにしよう」と白黒ではなく赤黒にし、吊り上がった目にしました。「首はもっと長くしよう」とビニールをつなげ、本当の子どもに見えるようにお腹には新聞紙を入れてふくらみをもたせました。そんな中「誰かが頭をもって首を伸ばしていたら驚かせたことにならない」ということに気付き、「ひとりでに首が伸びていくようにする」という新たな課題が生まれました。ではどうすればいいのでしょう。この時の子どもたちには、「これが実現したら絶対に驚くはずである」という仮説があります。その仮説を検証するために取り組みます。子どもたちには「できない」とあきらめる姿はありません。「どうしたらできるだろう」と常に課題に向かってわくわくしながら思考し、言語を使って伝え合い、共有し合います。そして試行錯誤を繰り返す中で、歓喜の声をあげたり、落胆したりしながら納得がいくまで取り組むのです。このような場面で教師は、子どもたちは何を実現しようとしているのか、課題は何か、課題解決のためにどんな技術や素材が必要かを読み取り、試行錯誤に揺れる内面をどのように支えるのかを考え、必要な援助をします。
 この時期の年長組への援助は、直接的な援助よりも、間接的な援助の比重が大きくなります。大人がすぐに結論を出したり、方法を示したりするのではなく、成功・失敗や正解・不正解にこだわらず、子どもが「〇〇したい」「なぜだろう」「こうしてみよう」という思いにじっくりと付き合う「思考を温める時間」を保障することが大切だと考えます。遊びに主体的に取り組み、自分たちの力でやりたいことを実現させていく姿には、「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」が様々にからみあっています。幼児期の教育が「環境による総合的な教育」と言われる所以です。

 というわけで、ろくちゃんはどうなったでしょうか。子どもたちが「ひとりでに首が伸びていくようにしたい」という目的に向かって考え抜いてたどり着いた方法は、「ろくちゃんの頭の上にひもを付けて、別の場所(見えない所)から引っ張る」という仕掛けでした。思考を温める時間が十分に保障されたことで、引っ張るという自分の行為が離れた場所で別の現象を起こすことの面白さ、仕掛けの面白さという科学的思考の芽にもつながっています。

4 西幼稚園

 「しなやかに たくましく」を教育目標に、西幼稚園の子どもたちは、自分のやりたいことに取り組み、友達と楽しく関わりながら伸び伸びと遊んでいます。自然豊かな環境の中で、豊かな心と体を育むために、以下の3点に力を注いで保育や活動を展開しています。

多様性を育む異年齢保育の推進
 年少児から年長児までの成長や発達を考慮しながら、異年齢保育を展開しています。年少児は、年中児や年長児の遊びを傍で眺めながら、憧れを抱きます。年中児は、年長児と共に活動する中で、心遣いや優しさに触れ、遊びを豊かにしていきます。年長児は、年中児や年少児と一緒に遊んだり、お世話をしたりする中で、年長児としての責任感や「自分ってすごい。」という自己有用感を高めています。

子育てを支える活動の充実
 西幼稚園が立地する西内野地区で行われている「こばとの会」を、今年度からは西幼稚園でも開催しています。幼稚園独自の「つぼみの会」も毎週開催し、地域とともに子育てを支えています。未就園児が楽しく遊べるよう、遊びの場や環境も工夫しています。また、在園児と関わりながら幼稚園の楽しさを体験してもらっています。

西幼稚園独自の預かり保育の展開
 「今日、預かり?」「やったぁ。」。登園時、玄関入口にある預かり保育掲示板前での親子の様子です。当園では昨年度から最長17時までの預かり保育を行っています。今年度は、約7割の園児が預かり保育を利用し、夏休み期間も預かり保育を実施しました。保護者のニーズも高く、好評だったため、場所や時間を検討しながら、来年度も継続していきたいと考えています。

新潟市立幼稚園のホームページ

 各幼稚園の取組については、各園のホームページをご参照ください。

令和4年度新潟市立幼稚園ポスター

(問合せ先 教育総務課 電話:025-226-3178)

令和4年度 「わたしの主張」新潟市地区大会(報告)

令和4年度「わたしの主張」新潟市地区大会が開催されました。

  •  日時 令和4年8月20日(土曜)
  •  会場 黒埼市民会館
  •  主催 新潟市青少年育成協議会・新潟市教育委員会
  •  参加者 中学生、青少年健全育成団体関係者、教育関係者、一般市民等

大会の様子

 中学生が日ごろ考えていることや体験したこと、地域社会と関わることなどから生まれてくる中学生らしい考えを発表する「わたしの主張」新潟市地区大会が開催されました。
 この大会は、多くの市民に現代の中学生への理解や関心を深めてもらい、青少年の健全育成の機運を高めることをねらいとしています。
 新潟市内の中学校から応募された802作品の中から、選ばれた中学生8人が発表を行いました。会場には発表者のほか、家族や引率の先生、70人以上が来場し、中学生の発表に耳を傾けました。日々の学校生活や友達、家族との関わりなどを通して、気づいたことや考えたことを感性豊かに表現し、来場者に向けて堂々と発表しました。全ての発表が、素晴らしい「わたしの主張」でした。
 最優秀賞に選ばれた江口 蒼さん(曽野木中学校1年)は、9月17日(土曜)燕市文化会館で開催された「わたしの主張」新潟県大会で発表し、優秀賞を受賞しました。
 また、アトラクションとして国際交流協会の大学生による留学体験発表が行われました。
 参観者からは、「どの発表者の方も素晴らしい内容で、発表の仕方もそれぞれ個性があり、興味深く聴かせていただきました。」「毎年、感心して聴いています。今年も楽しみに来ました。まだ、年齢的に少ない人生の中で、いろんな面での気づきや体験があり、よく考えるものだと、子どもたちの存在に感動します。」「アトラクションの留学体験発表を聴いて、留学にかなり興味をもちました。」などの感想をいただきました。
 詳しくは、下記のリンクページからご覧ください。

(問合せ先 地域教育推進課 電話:025-226-3277)

このページの作成担当

教育委員会 教育総務課

〒951-8554 新潟市中央区古町通7番町1010番地(古町ルフル4階)
電話:025-226-3149 FAX:025-226-0030

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