市報にいがた 平成31年2月3日 2688号 1面から3面
最終更新日:2019年2月3日
みんなで支える 認知症
認知症カフェ「オレンジカフェぷらむ」のクリスマス会の様子。認知症カフェは、認知症の人やその家族、地域の人たちがお茶やコーヒーを飲みながら気軽に交流したり、相談事、悩み事などを話し合ったりする場所です。
問い合わせ 地域包括ケア推進課(電話:025-226-1281)
団塊の世代が75歳以上になる2025年には、高齢者の約5人に1人が認知症になるといわれています。
認知症は誰もがなり得るもので、自分や家族、友人が発症することも決して珍しいことではありません。だからこそ、「誰かのこと」ではなく「自分のこと」として認知症について考えることが大切です。
認知症は早期の発見や治療で進行を遅らせることも可能です。認知症を正しく理解し、日頃から予防に努めていきましょう。また、認知症の人やその家族を温かく見守るなど「お互いさま」の気持ちで支え合いの輪を広げていきましょう。
まち全体で認知症の人とその家族を支え、住み慣れた地域で笑顔で暮らせるような「誰もが安心して暮らし続けられるまち」を皆さんと一緒につくっていきたいと思います。
新潟市長
介護の経験者に聞きました 頼って 支えて
加藤 文子(ふみこ)さん(秋葉区)
夫、康雄さん(62歳の時に認知症と診断)を介護。康雄さんは平成21年6月に68歳で他界。現在は認知症の人や、介護をしている人の相談などに応じる「認知症の人と家族の会」の新潟県支部の世話人として活動。写真は康雄さんが書いた絵を紹介する文子さんの様子。
認知症と診断されるまで
夫は造園関係の卸売業をしていました。業界団体や地域の役員などを務めたり、休日には鍵盤ハーモニカを弾いたりと活発に過ごしていました。
61歳の時に「仕事の約束を忘れる」「会議の席で内容を理解できない」といった症状を本人が心配し病院に行きましたが、脳に異常はみられず飲酒が原因ではないかと診断されました。
お酒をやめて、その後も夫の意志で通院を続けるうちに「おめさん、ばか元気だね!」と言われるくらい、物忘れの症状は軽快したんです。
ところが、その後仕事で使う機械の使い方が分からなくなったり、言葉がうまく出なくなったりしてきて、62歳の時に認知症と診断されました。
認知症と診断されて
お酒の飲み過ぎや物忘れなど、夫の行動の原因が認知症だと分かり、「そうだったのか」と診断を受け入れることができました。
主治医の勧めもあり、夫はできる範囲で仕事を続け、仕事ができなくなった後も鍵盤ハーモニカを弾くなど好きなことを続けていました。
最初は気付かない
認知症の初期の症状は、本人だけでなく家族でも気付かないかもしれません。今思うと、50代後半から症状が出始めていたんだと思いますが、私たちも飲酒が原因だとばかり思っていました。周囲の人の「ちょっと様子がおかしいよ」といった声に耳を傾けて、早く病院に行くことが大切だと思います。
周囲の協力と理解に感謝
私は周囲の人に症状を話しておきました。症状が悪化し、夫が自宅と仕事場を理由なく行き来してしまうようになっても、近所の人や顔見知りの人が「あの辺にいたよ」「疲れてたみてだすけ車に乗せてきたよ」と助けてくれたことは今でも感謝しています。
通院途中のランチがデート
68歳で亡くなるまでの6年間、介護で苦労したこともたくさんありましたが、うれしかったこともありました。
通院途中のファミリーレストランで二人でよくお昼を食べていました。元気な時は仕事優先で日中に二人で外出なんてできなかったから、なんだかデートみたいで。とてもおいしそうに食べるんですよ。
あと、入院中に夫が何年かぶりに絵を描いた時も。若い頃の夫を思い出して、この時もとてもうれしかったですね。
康雄さんが入院中に描いた花の絵
経験を生かし支える側に
夫が亡くなった後、認知症の介護家族の力になりたいと思い「認知症の人と家族の会」の世話人として活動を始めました。会では、介護の悩み相談をしたり、情報交換をしたりする「つどい」を毎月開催しています。
介護家族に「また来たい」と思ってもらえるように、初めて来た人の名前と顔をしっかりと覚えて、次に来たときには「また来てくれてありがとう」と声掛けできるようにしています。
「つらいのは私だけじゃない。今日は来てよかった」と参加された人に言われるとうれしいですね。
認知症と向き合う皆さんへ
私が介護をしていた頃に比べれば認知症に対する理解は進んでいると思います。サポートしてくれるところも充実してきていると思います。頼るところはしっかりと頼ってほしいですね。
「つどい」の様子
認知症の人と家族の会
当事者の方が在宅で幸せに暮らすためには、介護しているご家族が心身共に健康であることが大切です。
負担を軽減するために、介護サービスの利用に加え、家族の会で心のケアもしませんか。
詳しくは
問い合わせ (公社)認知症の人と家族の会
新潟県支部副代表(下越エリア担当)等々力(とどりき)さん
(電話:025-269-2282)
お医者さんに聞きました 生活習慣病の予防を
医療法人新成医会
総合リハビリテーションセンターみどり病院 院長 成瀬 聡さん
「おれんじサポート中央」に認知症専門医という立場で参加しています
認知症とは
「記憶する」「物事を順序立てて行う」「人や社会と適切に関わる」などの認知機能が低下して、日常生活に支障を来す場合に「認知症」と診断されます。
認知症にはさまざまな疾患が含まれますが、その半数以上がアルツハイマー型認知症です。そのほかに、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあります。
早期診断・早期介入が重要
一昔前までは、認知症になっても医療・介護につながらない人がたくさんいました。その結果、重症化して激しい認知症の症状(暴言・暴力、徘徊(はいかい)、幻覚など)が出てしまい、本人も周囲の人も大変苦労をしました。
そうならないために、早期発見・早期介入は重要です。
早期発見をすれば、薬物治療も早期に行え、本人も自覚をもって進行予防に取り組むことができますし、自分の今後の人生を考えることもできます。
家族も、認知症の対応で非常に重要な介護についての知識を、余裕を持って増やしていくことができます。
また、早期からさまざまな職種の人が見守り体制を構築することもでき、円滑に介護保険サービスなどを利用できます。
認知症の予防法
一番におすすめするのは「生活習慣病の予防」です。生活習慣病とは糖尿病、高血圧、肥満などです。これらの予防が血管性認知症(脳卒中による認知症)やアルツハイマー型認知症の予防になることが分かってきました。
また、「軽い運動」も有効です。運動がアルツハイマー型認知症の予防につながるというデータが次々に出てきています。魚や野菜を多く取る食生活(日本食がよい)、他人との交流なども認知症の予防に有効とされています。※絶対に認知症にならないという予防法は現段階ではありません
認知症カフェ
オレンジカフェぷらむ(亀田地区コミュニティセンターで開催)の神田さん(介護支援専門員)に聞きました。
ぷらむではクリスマス会、ピアノ演奏会などの楽しめるイベントのほか、1カ月置きに認知症の勉強会も行っています。
ぷらむでは認知症かどうかといった確認はしません。カフェをきっかけに、認知症があってもなくても気に掛け合い、困ったときに「お互いさまだよね」と支え合える、より身近な関係づくりができるといいなと思います。また、カフェを通じて認知症に対する偏見を無くして、認知症かどうかを気にしない「意識のバリアフリー化」が進めばと願っています。
新しい場所に行こうと決心することは大変かもしれません。認知症と診断されたら、なおさらです。でも大丈夫ですよ。勇気を持って遊びに来てください。
問い合わせ オレンジカフェぷらむ・神田(電話:090-4946-1816)
オレンジカフェぷらむなど、市内の認知症カフェについて詳しくは市ホームページから
参加者の竹内さん夫妻
カフェで新しい友達ができました。
カフェが出掛ける理由にもなっていいですね。
(取材日はぷらむのクリスマス会でした)
認知症になっても安心して暮らせるまちへ
問い合わせ 地域包括ケア推進課(電話:025-226-1281)
※「認知症かも?」と心配になったら、まずはかかりつけ医や地域包括支援センターに相談してください
認知症初期集中支援チーム 「おれんじサポート」
認知症専門医と介護などの専門職による支援チームで、本市には地域ごとに5つのチームがあります。適切な支援につながっていない認知症の人やその家族に関わり、より良い生活環境を整えることを目的に、受診や介護サービスの利用などをサポートしています。これらの支援を通じ、認知症になっても本人の意思が尊重され、住み慣れた地域で暮らし続けられることを目指します。
連絡・相談先
お住まいの地域にある「地域包括支援センター」へ相談してください。
3月リニューアル 認知症安心ガイドブック
認知症の症状のこと、介護サービス・支援についての情報などがまとめられています。新たに軽度認知障がいの情報や認知症を抱える本人のメッセージなどを盛り込みました。3月以降に区役所などで配布する予定です。
あなたもなれる 認知症サポーター
認知症について正しく理解し、認知症の人と家族をさりげなく見守り、支える「応援者」です。特別なことをする必要はなく、できる範囲の支援をします。
認知症サポーター養成講座
サポーターになるには、認知症の症状や、認知症の人との接し方を学ぶ講座の受講が必要です。受講者にはサポーターの証・オレンジリングをお渡しします。 ※講師を派遣
時間 60分から90分
対象 地域・学校・企業など10人以上の団体
参加費 無料
申し込み 開催希望日30日前までに区役所健康福祉課
編集後記~取材を終えて
康雄さんが長女からもらって大切にしていた帽子を、「最期は私と一緒にお墓に入れてほしいと思っている」という文子さんのお話に、変わらない家族への思い、家族の絆を強く感じました。
認知症カフェでは、どなたが認知症の人か分からないくらい、皆さん一緒に楽しい時間を共有していました。「誰もがなるかもしれない」と皆が受け入れることが、認知症への偏見を無くし、住みやすい社会につながるのではと感じました。
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