新潟市遺跡発掘調査速報会2021を開催しました
最終更新日:2022年3月30日
最新調査成果が語る新潟市の歴史
2021年度の発掘調査速報会を令和4年2月27日(日曜)に開催しました。
昨年度に引き続きコロナ禍での開催ということで、会場の市民プラザ以外にZoomウェビナーを活用しオンライン配信も行いました。当日は会場が97名、オンラインで78名の参加がありました。
発表内容
発表タイトル |
発表者 |
時間 |
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講演 |
角田浜妙光寺山古墳をめぐる諸問題 | 橋本博文氏(新潟大学名誉教授) | 午後1時10分から |
報告1 | 古津八幡山遺跡 発見された弥生時代のお墓(古津八幡山遺跡最大の方形周溝墓) | 相田泰臣 |
午後2時50分から |
報告2 |
道正遺跡 水田下に埋没した砂丘の遺跡 |
高橋保雄 (新潟市文化財センター) |
午後3時15分から |
当日の発表スライド
報告の部
報告1古津八幡山遺跡「発見された弥生時代のお墓(古津八幡山遺跡最大の方形周溝墓)」相田泰臣(PDF:8,146KB)
報告2道正遺跡「水田下に埋没した砂丘の遺跡」高橋保雄(PDF:6,655KB)
講演の部
講演の部のスライドについては準備が整い次第掲載いたします。
講演会で寄せられた質問について橋本博文先生よりご回答いただきました
質問 | 橋本先生からの回答(一部文化財センター回答) |
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ジョー山って何ですか。 | 角田山北麓にある標高281メートルの円錐形の山です。角田岬沖から見るとランドマークとなりうる形状をしています。(文化財センター回答) |
古墳と塚の区分は外形からどう見ればわかりますか。 |
古墳と塚の区分は外見上、区別がつきづらい場合が多々あります。「富士塚」や「十三塚」など地名や伝承なども参考に見分ける場合や、発掘調査の結果、納経などがあって「経塚」と判断される場合もありますが、古墳を利用して「経塚」とした新潟市 |
幕末の開港時に新潟の川港の天気が悪い場合に佐渡の両津港が予備港だったようですが、古墳時代も角田浜妙光寺山の予備港として対岸の佐渡に港があったのでしょうか。 | 古墳時代の後の時代である古代の奈良・平安時代には現在の新潟県地域は、越後国と佐渡国に分かれていました。すなわち二つの国に分かれていたわけです。それを遡って、統一されたエリアがあったとは考えづらいので、「予備港」という考え方は採りにくいものと思われます。 |
網野銚子塚古墳の場所は潟湖のため、日本海側を運行する船に適した港の場所と思いますが、角田浜妙光寺山古墳も同じ理由で作られたもので、日本海沿岸と共に佐渡への港と考えるべきでしょうか。 | 角田浜妙光寺山古墳の場所は潟湖ではなく外洋に臨んでおり、冬季を始めとして悪天候時には波が高く、安定した港湾にはなり得なかったものとみられます。最初は、佐渡への最短の場所として重視されたものの、それは長続きせず、結局安定した内水面交通の潟湖に古墳の立地は移動したものと考えられます。 |
・海の交易・交流以外にも川を使った交流はあったのでしょうか。 |
・当然あったものと考えられます。 |
ご講演の最後に「鳥獣の被害から守ることも課題」とおっしゃっていましたが、今後、具体的にどのような対策が必要とお考えでしょうか。 | 最近は人里や住宅街にもクマやイノシシが出没し、農作物への被害のみならず人的被害も多数発生し社会問題となっています。新潟市内の遺跡でもイノシシが餌を探す際に開けたとみられる穴が見つかっています。こういった被害には金網を張り巡らすなどの対策が考えられますが、広い遺跡では現実的に難しいのが現状です。まさに課題と言わざるを得ない状況です。(文化財センター回答) |
資料3ページ上から15行目、5ページの表1で |
9期を4世紀中ごろを含む後半(第3四半世紀)、10期を第4四半世紀、11期を4世紀末から5世紀初頭と考えています。 |
後円部頂が墳丘の大きさに対して広いように感じましたが、他の県内の古墳と共通しそうでしょうか。前方部の長さも後円部に対してどれくらいあるのか、気になりました。前方部の向きもどこへ向いているのか、佐渡へ向いているのか、気になりました。 | 後円部の墳頂平坦面が広い特徴は前期古墳に特有なものです。そこで盛大な葬送儀礼を行ったものとみられます。胎内市 |
古墳を造営した人々の集落はどのあたりにあったのでしょうか。当時の海岸線なども知りたいです。 | 角田浜妙光寺山古墳を造営した直接の基盤集落は、それが見える角田浜辺りにあったものと考えたいところで、角田浜の中世の銭原遺跡の下層に眠っている可能性はあると考えています。五ケ浜にある同時期の遺跡の状況などから判断すると当時はもう少し海岸線が遠くにあり、遺跡は広がっていたことも考えられます。 |
各地域に見られる前方後円型弥生墳丘墓と |
各地域に見られる前方後円型弥生墳丘墓は、前方部が長く、 |
周辺にも古墳は存在するのでしょうか。 | 角田山東麓には古墳時代前期の古墳が点在しています。前方後円墳である |
古墳は単体なのか、それとも周囲にまだ未知の古墳が存在する可能性があるのでしょうか。 | 周囲に未発見の古墳が存在する可能性はあります。(文化財センター回答) |
関東沿岸地域はもとより、東海地域にも海浜型前方後円墳が多くあると思いますが、日本海側から太平洋側への人やモノの移動も当然あったと考えてよろしいでしょうか。又その痕跡はあるのでしょうか。 | あったと考えられます。太平洋側でも北陸系の土器が出土しています。(文化財センター回答) |
・今後、(学術)調査などの予定はあるのでしょうか。いつごろ本格発掘調査ができるか、見通しはあるのでしょうか。 |
現時点では学術目的の発掘調査の予定はございません。発掘調査に際しては、古墳の適切な保存・活用にふさわしい学術水準と客観的視点を確保し、外部専門家などとの連携を図りながら、調査方法や体制、時期について検討していくことになります。(文化財センター回答) |
古墳にいたる登山道の入り口の墓地には、「墳墓」と刻まれた墓石が複数ありました。 この意味するところはなんなのでしょうか。古墳の存在を地域の人が古くから知っていて、古墳の被葬者を祖先とする信仰の対象だったのか、単なる宗教上の慣習なのかその由来がとても気になります。 | 現代のお墓の墓石であることを示す意味で単に「墳墓」と刻んだものと思われます。(文化財センター回答) |
資料の配布について
当日配布資料については、下記からダウンロードいただけます。
製本された資料が必要な方は、文化財センターまでお越しください。
郵送をご希望の場合は、郵送分の切手(1冊の場合140円、2冊の場合210円)を同封し、〒950-1122新潟市西区木場2748-1 文化財センターあて「2021速報会資料希望」と明記の上、送付先の住所・氏名を記載し郵送ください。
当日資料ダウンロード
新潟市遺跡発掘調査速報会2021当日資料(PDF:3,243KB)
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