(2-1-6)日本赤十字社への町内会を通じた募金に関して

最終更新日:2021年1月27日

(2-1-6)日本赤十字社への町内会を通じた募金に関して

令和2年9月23日 苦情申立受理

申立ての趣旨

  新潟市B区健康福祉課では、日本赤十字社の活動資金を、町内会に封筒で募金を求めています。封筒には、個人情報保護違反となる名前を書く欄がありますが、募金封筒に名前を書く欄を作らないようにしてください。
 また、市と係わりのない民間団体の募金をやめて、集めた募金を区役所に届けさせるようなことはさせないでください。

申立ての理由

1) 7月末日、新潟市から町内会を通して隣組長である私のところへ「令和2年度日本赤十字社活動資金(協力金)の取りまとめについて」の文書と封筒が届きました。8月1日までに、隣組に回覧して、募金を町内会長に届けるよう求められました。
2) 封筒には、個人情報である個人名を書く欄があります。任意としていますが、町内会、新潟市B区、日本赤十字社は個人情報保護法に違反しています。隣組長として苦痛です。
ア 町内会は、個人情報保護法の改正(2015年)によって、件数5,000件未満の適用除外が撤廃となったため、一定の保護規定や対策を取らない限り、個人情報を取得できなくなりました。A町町内会にはそのような規定もなく、町内会として個人情報を集めることができません。それにもかかわらず、B区健康福祉課は、個人名が入った封筒現物を町内会に返しているとのことです。これは、本来持てない第三者である町内会に情報を提供していることとなり、書かれている保護規定に反しています。必要であれば、領収印のところだけ渡せばよいのです。町内会では、この封筒をさらに再回覧しており、個人情報を隣近所に暴露しています。つまり「誰々さんは募金したが、誰々さんは募金していない世帯(家庭)」「誰々さんは500円寄付したが、誰々さんは幾らだった」とかを近所に晒しています。世帯においては、貧困や年金暮らしなど、様々な理由で寄付ができない事情があります。私を含め、これらの家庭にとって、名前入りの封筒を再回覧されることは人権侵害として恐怖を感じます。「氏名の記載は任意です」と書かれています。任意であっても、集められた個人を特定できる氏名は保護されなければなりません。ましてや本人の同意なくして第三者に渡してよいものではありません。それなのに、何故、新潟市は町内会に個人情報を渡すのでしょうか。B区職員は、町内会から要請があるから封筒を渡していると答えています。しかし、実際に町内会から要請された文書はなく、誰がそのような要望をしたのかの書類や根拠もありませんでした。B区職員は、社会的変化、法律の改定があったにもかかわらず、漫然と仕事をしていたことになります。B区健康福祉課は、このように氏名の収集をするため、法令に違反して封筒に氏名欄を作っています。個人情報を書かせることに脅威を感じます。隣組長としては、このような封筒を配ることは苦痛であり、侵害を受けています。氏名欄がなくなるよう申立てるものです。
イ 配布する封筒は、B区職員が作っていました。担当者は「新潟市は個人情報を集めていない」と言っていました。この配布する封筒はB区の職員が作っていました。証拠は、1回目の情報公開請求に対する回答、8月11日の通知第1517号の2による「情報一部公開」で明らかです。公開された支出調書では、日本赤十字社B区地区に対して、新潟市職員が事務員として封筒を作り、支出をしたことが記載されています。しかし、新潟市職員が日本赤十字社の仕事をしてもよいとの規定は、新潟市の条例・規則のどこにもありません。後で問合わせて分かったことですが、条例、規則の根拠はなく、「昔からの慣例」で仕事をしているとの返事でした。市民は、職員が法令・条例・規則で仕事をしていると思っている訳ですから、呆れるばかりにひどいことです。仮に新潟市職員が、日本赤十字社新潟市B区地区事務員として仕事をしていたとしても、身分は市職員です。仕事をした時間に対して、日本赤十字社から報酬が支払われている訳ではありません。新潟市職員が、新潟市で規定している個人情報保護条例に違反して、不必要な情報を取得することはしてはならないはずです。この協力金納入封筒には、個人情報の保護をうたうかのような記入いただいた情報は・・(略)・・第三者に提供したりすることはありません」と書かれています。しかし、この記載では、新潟市が保護するのか、日本赤十字社が保護するのか、一見分からない記載です。集めた個人情報を保護するのであれば、法令の定義にあるように、封筒に何のために個人情報を収集するのか、の目的が書かれていなければなりません。しかし、個人名を収集する目的が書かれていません。そもそも規定は、募金額が2,000円以上の者の氏名を日本赤十字社新潟県支部に知らせるために氏名欄があると職員が話していました。第2回情報公開請求によって公開された8月28日の通知第1896号の2による「情報一部公開」によれば、B区で該当者はたった2人しかいませんでした。2人は「別口で窓口納付」をしており、封筒に記載した者でなかったということでした。ということは、実質的に氏名欄は不必要で、無意味なものであった、ということになります。B区健康福祉課では「新潟市は個人情報を集めていない」と言っています。第2回情報公開請求で「A町の納入袋コピー」が公開されました。氏名欄が白く塗りつぶされていました。氏名欄は張り紙をして控えを取っており、コピーされていないことが分かりました。だとするならば、いったい何のために氏名欄がある封筒を作っているのでしょうか。このことからも、実質的に氏名欄は必要なく、無意味なものであると思われます。新潟市は、募金額2,000円以上の者の氏名を聞き取りして、日本赤十字社県支部に知らせています。B区の担当係長は、この情報の控えがないと話していました。しかし、公開された書類「令和元年度地区・分区における協力金2,000円以上の支援者報告」(令和2年2月10日起案)に、支援者氏名、住所、協力年月日等の個人情報が取得、保存されていました。新潟市は「個人情報を集めていない」と言っていましたが、矛盾しています。本当に「個人情報は集めていない」と言えるのですか。この個人を特定できる氏名情報は新潟市個人情報保護条例に基づいて非公開となっています。新潟市は、日本赤十字社新潟県支部に係る個人情報を書類として保存していると認めるべきです。協力金封筒に書かれている「保護規定」は新潟市として併記する必要があります。
ウ その後、B区健康福祉課の斡旋により、8月19日に協力金と封筒について説明したいとのことで、日本赤十字社県支部と話し合いをしました。話し合いに出席された方は、職員AとBでした。B区職員2名が同席されました。「何故、このような封筒に氏名欄を記載しているのか」という理由については、はっきりした回答がありませんでした。昔からお願いしていると言うだけで、法的根拠はありませんでした。敢えて言えば、日本赤十字社は、氏名欄を作ることにより寄付が多くなるから作っているというニュアンスを感じました。言わば、隣組で右倣えという同調圧力が働き、全体として「寄付が増える」ということを望んでいるものと伺えました。氏名欄の設置と個人情報の保護は、そもそも2,000円以上の寄付者に対するものだそうです。2,000円以上の寄付者は日本赤十字社の会員となります。会員の名前を把握するため氏名欄があるとのことでした。日本赤十字社は、500円の活動資金(協力金)の寄付者について氏名の報告を求めていないそうです。そうすると、「いただいた個人情報は・・・第三者に提供したりすることはありません」と書かれた保護規定は、一体何のために、誰に対するものなのか、と疑問だらけです。日本赤十字社は、日本赤十字社法に基づき設置された認可法人で一般社団法人等の規定を準用する法人だと聞きました。このような民間の認可法人が、何故自治体職員に仕事をさせたりできるのでしようか。日本赤十字社はどうして市長を市地区本部長に、区長を地区長に任命できるのでしょうか。1回目の情報公開請求で公開された「新潟市における日本赤十字社の組織に関する規程」が根拠だそうです。これは日本赤十字社の規程であり、新潟市の条例、規則ではありません。B区職員である健康福祉課長Dを日本赤十字社新潟県支部の地区事務局長として委嘱しています。どうして民間法人の社長が勝手に市職員に「委嘱状」などを発行することができるのでしょうか。日本赤十字社は、国や県と違い行政機関ではありません。何故、上部行政機関でもない法人が、こんな指示を勝手にできるのでしょうか。戦前、日本赤十字社は、陸軍・海軍大臣が管轄し、国策として働いた団体でした。今はそんなことはないはずです。新潟市は、日本赤十字社が決めた規定や委嘱で市職員を働かせ、町内会に協力金を集めさせています。私は隣組長として、日本赤十字社の会員集めを手伝わされ、集金させられています。日本赤十字社は、行政を使い、封筒に氏名を書かせることにより、町内会や世帯の貢献度を試しています。圧迫感と苦痛を受けている者として苦情を申立てます。国内に限らず、国際的な救援組織、災害資金等を集めている団体は日本赤十字社に限ったものではありません。これらボランティア団体は自ら様々なファンド・レイジングを行い、資金集めをしています。私たちは、自分の意思で自由に寄付をすることができます。このような募金は、市長をはじめ区長(B区地区長)が町内会を通して、あたかも日本赤十字社に協力せよと述べているようで苦痛です。私たちは寄付を自由に、任意で募金できます。このような募金は町内会を通して行わないでください。日本赤十字社新潟県支部は、B区で9,336千円(令和2年度)のお金を集めています。新潟市全体では69,941千円(平成30年度実績)の協力金があったようです。このB区協力金は、自治会・町内会長が現金を区役所の窓口に持参しています。市の職員が公金でないお金を扱い、その管理を任されていることは異常です。過去において、日本赤十字社の現金取扱い管理過程での事故や事件が報道されています。新潟市職員が他の団体の金を取り扱うことにより、事故・事件があった場合、公務員としての身分に影響を及ぼします。日本赤十字社は、町内会に現金を届けさせるようなことを直ちにやめるべきです。日本赤十字社新潟県支部は、県内各自治体の自治会・町内会を通して239,762千円(平成29年度)を集めています。募金(協力金)は、様々な活動に使われています。災害救援活動や物資、AEDの設置、交通安全帽の交付、赤十字ボランティア活動に使われ、支援しています。その活動を否定するものではありません。しかし寄付は、日本赤十字社新潟県支部の人件費に使われ、各地区の交付金として配布されています。B区担当の話では、寄付金9,336千円(令和元年度)の内20%が還元され、地区本部の配分を除いた約18.5%が交付金として戻っています。この交付金から町内会に10.0%(5%が協力金収納人件費、もう5%が広報活動費)が、その場で現金で渡されています。日本赤十字社は協力金の実態を市民に知らせないでいます。寄付は全てが「災害から、いのちを守る赤十字」として使われている訳ではありません。チラシやホームページでは、これらの情報を明らかにしていません。市民の善意が様々に中抜きされて、自治会の運営費にまで使われていることを、どう弁明できるのでしょうか。 
3) 新潟市は、日本赤十字社の依頼について、市職員の職務専念義務に反して仕事をさせています。赤十字社の仕事をすることは慣例としていますが、条例等の規定がなく、市民に損害を与えています。新潟市は、職員を日本赤十字社新潟県支部の仕事をさせる条例・規則等の規定を持っていません。しかし現実は新潟市職員を勤務時間中に民間団体である日本赤十字社県支部の仕事をさせています。勤務時間に対する対価・報酬が支払われている訳ではありません。職員の職務専念義務に反しています。新潟市職員は、地方公務員法第30条で職務専念義務が課せられています。第25条ではその職務専念義務が免除されるのは「法律又は条例に特別の定めがある場合を除く」と定められています。法律で定められている休暇、あるいは条例で定められている研修、厚生等の場合以外に、職務以外の仕事をすることはできないものとなっています。8月中旬に、福祉部福祉総務課職員(新潟市地区本部事務局)に「市職員が日本赤十字社新潟県支部の仕事をすることができる根拠は何か」と聞きました。担当係長Cは、特に「職務専念義務の免除(職専免)の規定や手続きを取っていない」と回答しました。担当係長Cは「担当となった8年前からずっと職専免の手続きを取っていない」と答えました。市の職員としての職務と日本赤十字社との仕事が曖昧になっており、グレー化していたという返事でした。何時から「職務専念義務の免除(職専免)」の手続きを取っていなかったのかは、はっきりと分かりませんでした。新潟市は日本赤十字社の仕事と市の職務を区分できず、過去から麻痺していたことになります。特別職を含めて全ての区役所職員は、根拠なく条例に反して日本赤十字社の仕事をしていたことになります。これは市民に対する裏切り行為であり、重大な地方公務員法違反です。いったい誰に責任があってこんなことを続けていたのでしょうか。何時から市職員は日本赤十字社職員として許可されたのですか。私たち町内会、そして隣組長は、こんな違法、条例の違反をして募金活動をしていたとは知りませんでした。驚きであり、苦情を申立てるものです。今後、新潟市は日本赤十字社の活動について、「職務専念義務の免除」を検討されるのでしょう。しかし長期にわたり事業まで展開し、多額の金額を扱っていることから、職専免などという一時の職務適用除外で済む話ではないはずです。大阪市では、市長がこのような協力依頼を断ったという事例があります。新潟市は職員が日本赤十字社の職員となるような組織活動は止めるべきです。公務優先の原則に照らし、支障がないかどうか十分に判断し措置すべきです。新潟市は、日本赤十字社の活動を、単に職務免除とするような安易な方法でなく、規則で定め、関係書類(定款、規則、依頼文書等)を添付し、公務に支障がないよう求められます。この職専免における事件や事故が、地方公務員による責任や処分との関係においてどうなるのか、明確にすることが必要と思われます。私たち町内会としては、市と係わりのない他団体が募金を求め、集めた募金を区役所に届けさせるようなことをさせないよう要望します。
4) これらの苦情理由は、情報公開請求と聞き取りによって明らかになりました。
 申立ては下記で公開された「新潟市情報公開請求通知書」において明らかになりました。
 1回目情報公開請求 2020年7月28日 8項目請求 一部公開 8月11日通知第1517号の2 情報一部公開 
 2回目情報公開請求 2020年8月14日 5項目請求 一部公開 8月28日通知第1896号の2 情報一部公開 

所管部署

 B区健康福祉課(以下「所管課E」という。)、福祉部福祉総務課(以下「所管課F」という。)

調査の結果

 令和3年1月25日 決定

 所管課の対応に非があるとは認められない。

調査結果の理由

 当審査会では、申立人、所管課E並びに所管課Fからそれぞれ資料を提出してもらい、聞き取りを行った。
 申立人の苦情の内容は多岐にわたるが、その要旨は申立書の趣旨に記載のとおりであり、これを整理すると次のとおりになる。
1 所管課EはB区内の自治会に対して、封筒を配布した上で日本赤十字社の会費(活動資金)の募集(募金)を行うように求めているが、配布する封筒には、募金者氏名の記載欄が印刷されている。この氏名の記載欄は個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という)に反するから、封筒に氏名の記載欄を印刷すべきでない。
2 新潟市の職員が、民間団体である日本赤十字社の事務、募金活動を行うことはやめるべきである。

 そこで、当審査会では上記1及び2について検討した。
1について
(1) 所管課Eは次のように説明する。
 1) 会費(協力金)の納入袋については、かつて自治会から氏名の記載欄が必要であるとの要望があり、それ以降、氏名の記載欄を設けるようになった。
 2) 所管課Eが自治会に対して封筒を利用して募集(募金)を行うように求めたことはない。
 3) 封筒は自治会の要望に応じて配布しており、所管課Eが用意した封筒を不要とする自治会に対しては配布していない。
 4) (日本赤十字社の会員資格を持ちうる2,000円以上の募金者を除き)B区として募金者の氏名の報告は求めていない。
 5) 封筒には「協力金の納入と氏名の記入は任意です」との文言も記載している。
(2) 上記の説明によれば、所管課Eが用意した封筒を使用して募集(募金)を行うか否かは自治会の判断に任されており、所管課Eが自治会に対して、封筒を使用して募集(募金)を行うように求めているものとは認められない。
(3) 所管課E作成の封筒に印刷されている氏名の記載欄については、氏名の記載欄を利用して自治会によって収集された個人情報(氏名)の取扱い方法が個人情報保護法に違反することはあり得るし、場合によっては自治会が個人情報(氏名)を収集すること自体が個人情報保護法に違反することもあり得ると考えられる。
 しかしながら、氏名の記載欄を設けること自体が個人情報保護法に違反することになるとは考えられない。
 なお、所管課Eにおいては、他の区の状況も踏まえて、封筒利用の見直しについて検討するとのことである。

2について
(1) 所管課Fは次のように説明する。
 1) 日本赤十字社は、日本赤十字社法に基づき、中立性を持った人道的な活動を行う認可法人であり、民間団体ではあるが、災害救助法に基づいて行政が行う災害救護事務に従事するなど、地方公共団体に協力し、補完的な役割を果たしている。
 2) 具体的には、日頃から、各地区にある奉仕団との連絡調整や、火災で被災した方に救援物資を届けるなどの仕事をして頂いている。また、災害発生時の救護など、日本赤十字社が行う業務は新潟市の業務と密接に関連している。
 3) 旧厚生省の事務次官通知や厚生労働省社会・援護局長名の協力依頼等においても、各自治体に対して日本赤十字社の活動への協力要請・依頼がなされている。
(2) 申立人は、新潟市の職員が、業務時間中に日本赤十字社のための事務を行うのであれば、当該職員について職務専念義務の免除の手続きを取るべきところ、同手続きが取られていないことを根拠として、新潟市の職員が日本赤十字社のための募金活動をすることはやめるべきであるとしている。
(3) 日本赤十字社の活動内容が公益に資するものであること、また、行政が行う援助活動等の各種業務と密接に関連していることは、上記説明を待つまでもなく、いわば公知の事実と評価できる。
 したがって、新潟市の職員が日本赤十字社のための事務を行うことは公益に資するものであるし、加えて、国からの協力依頼等もなされていることに鑑みれば、新潟市の職員が日本赤十字社の事務を行うことは認められて然るべきである。
 確かに、申立人が指摘するように手続的な疑義はあるものの、上記のとおり新潟市の職員が日本赤十字社のための事務を行うことは公益に資するものであり、そうであれば、手続的な疑義を解消すべきであって、手続的な疑義を理由として公益に資する活動を否定することは本末転倒であると考える。
 なお、所管課Fにおいて、手続的な疑義の解消に向けて、必要な検討を行われることを望むものである。 

 よって、調査結果のとおり判断する。

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