にいがた共育通信 令和4年度 第103号

最終更新日:2022年9月30日

新潟市立幼稚園の取組

幼児期の教育

 幼児期の教育は「教育基本法」において、「生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なもの」とされています。幼児教育から義務教育、高等学校教育までを見通して、生活や学習に必要となる資質・能力が育まれるよう、幼児教育段階については次のような「資質・能力の基礎を一体的に育む」こととされています。

幼児期の教育イメージ

 また、幼稚園、保育所、認定こども園といった施設類型を問わず、共通に、小学校以上の教職員との連携や、地域、家庭等との連携の手がかりとするため、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を明確にしています。

幼児期の終わりまでに育ってほしい具体的な姿イメージ

 小学校学習指導要領においても、幼児期の学びから小学校教育に円滑に移行できるよう、各教科等の指導において、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿との関連を考慮することが求められています。

各幼稚園の取組

 幼稚園教育はいわゆる早期教育ではなく、算数、音楽、体育などの小学校教育の前倒しではありません。遊びを通して学ぶこと、すなわち、「自ら考え、主体的に行動し、感じて気付く」という、幼児期の特性を踏まえた教育が、その後の小学校教育の最も大切な基礎を培っているのです。
 今回は、新潟市立幼稚園8園のうち、牡丹山幼稚園、沼垂幼稚園、新津第一幼稚園、新津第三幼稚園の4園の取組について紹介します。
 ほか4園については、次回第104号で紹介します。

1 牡丹山幼稚園

「心の根っこ」を育む 
 牡丹山幼稚園は、住宅街に立地しつつ、緑豊かな自然に囲まれた環境があります。幼稚園は、保護者、地域とともに子どもの心に寄り添い、子どもの「心の根っこ」を育む保育に努めています。
 「心の根っこ」とは、思いやりや悔しさ、友達同士で折り合いをつけるための心もち等の「心情」や、周りに目を向け自分から取り組もうとする「意欲」、諦めないで最後までやり遂げようとする「態度」等、園に入園してから修了までの三カ年の間に育まれる「生きる力の基礎」となるものです。
 当園の目標は、「自分大好き・友達大好き・みんな大好き~ぼたんやま~」です。このような子どもに育ってほしいと願いを込めて、幼児期にふさわしい環境を整えています。四季折々の美しい花や実をつける樹木、当園自慢のぴよぴよ文庫。また、保育室にある教材は、子どもたちが必要な時に必要なものを使って遊びます。そして、大好きな友達と思いや考えを交わし合ったり、ときに喧嘩をしたりしながら、力を合わせてやり遂げる達成感を味わいます。幼稚園には主体的に関わる子どもの姿でいっぱいです。昨日から今日、今日から明日へと連続した日々を子どもたちと教師とで織りなす生活の中で、一人一人の子どもがそれぞれのストーリーを展開しています。
 教職員は、下記のことを大切に保育に取り組んでいます。

  • 子どもがやりたいことを見付けて、夢中になって遊ぶこと
  • 本気と本気がぶつかること
  • うれしいことやいやなことの両方を体験すること
  • 「どうしようか」と考え合う時間を保障すること
  • みんなが大切にされていると感じられること

 子どもを取り巻く人との信頼感を基本に、幼児期の発達に必要な力を十分に身につける生活を通して、子どもの遊びや経験を価値づけ、確かな学びにつなげます。

2 沼垂幼稚園

乗り越える力を育む
 年長組は、5月からグループで育てたい野菜を1つ決め、苗を植え、世話をしてきました。初めて1本のきゅうりが食べごろになった日、収穫は全員そろった日にすると決まりました。ところが、次の朝、その大切なきゅうりがカラスに食べられていました。子どもはとてもがっかりしました。「だから昨日収穫すればよかったのに」という子どももいました。それを聞いた担任が「昨日、みんなで収穫しようって、みんなで決めたのよね」と優しく話すと、子どもたちははっとします。そして、前向きに、きゅうりを守るためにどうすれよいかを話し合いました。カラスから守るために、まず、銀紙で光を反射するきらきらを作ってつるしました。9時にきゅうりを発見してから、きらきらが畑に下げられたのは、11時半近くでした。ところが、次の日もきゅうりがカラスに食べられます。子どもはさらにTシャツや帽子などでかかしを作りしました。きゅうりを守るために、自分たちで考え、何とかしようとしたのです。ついに、カラスから守り切ったきゅうりが収穫されたとき、子どもが言いました。「やっととれた」。その短い言葉に、やり遂げた満足感が表れていました。ところが、しばらく経ったある日、再びきゅうりがカラスに食べられます。子どもは、「カラスは、カラスの死骸には近寄らない」という情報を得て、黒いビニール袋でカラスを作り、支柱につり下げました。さらに、暴風雨で支柱やプランターごと全てが倒れていた日がありました。子どもは、力を合わせて自分の背よりもずっと高い支柱の付いたプランターを起こし、園舎の壁側へと移動して固定したのです。
 担任は、野菜の収穫のために必要なことや、困難が生じそうな状況を想定しつつ、決して、先回りしてネットをかけたりしません。子どもに考えさせ、相談させ、決めさせます。そして、子ども同士で試行錯誤しながら一緒に解決しようとする様子を丁寧にとらえ、一人一人の思いや考えを深く理解し、全体に広めたり、よさを伝えたりすることにより、子どもを支援し力を伸ばします。
 このように、沼垂幼稚園では、みんなで話し合い、できることを自ら考え、一つ一つ進んで行動して、全力で課題を乗り越える学びを大切にしています。友達と一緒に課題を解決することで、一体感、満足感を味わいます。共通の目的の実現に向けて、試行錯誤し、力を合わせてやり遂げる中で、「協同性」が育まれていくのです。この力は将来へとつながり、その力を小学校でも必ず生かしていくはずです。

3 新津第一幼稚園

子どもの成長のあかしと、10の姿 
 新津第一幼稚園では、 個別懇談会の際に、担任から資料として提示するものがあります。新津第一幼稚園の教育ビジョン(右のQRコードを参照)を基に、お子さん一人一人に合わせて、担任が作成した個人の資料です。

 新津第一幼稚園の教育ビジョンには、幼稚園教育要領で示されている『10の姿』、すなわち幼児期の終了までに育ってほしい「新津第一幼稚園としての具体的な姿」を示しています。当然、新津第一幼稚園の教育ビジョンなので、包括的な書きぶりとなっています。しかし、子どもは年少から年長まで年齢幅があります。さらには同じ年齢であっても、当然、個人差もあります。そこで、各学年で目指す姿をさらに書き直すとともに、それぞれの子どもの具体的な様子を文面で示しました。写真についても、一人一人の子どもそれぞれの成長を振り返りながら、10枚の写真を選んでいます。まさに、一人一人の(写真付き)「成長のあかし」となっているのです。
 新津第一幼稚園では、保護者の皆様と一緒に、子どもの成長を喜び合いながら、 一人一人を大切に、成長を支え、遊びをとおして「資質・能力の基礎」を育んでいます。

4 新津第三幼稚園

 「自己発揮」「言語表現」「協同体験」の視点から、各学年の目指す子どもの姿を具現化します。
各学年の実態に合わせて学期ごとに目指す子どもの姿を設定し、保育実践、評価へとつなげます。

わくわくふれあいタイム
 異年齢交流を通して、友達とかかわる楽しさを感じる子どもを育成します。自ら心を動かし、やりたいことを好きな場所で、学年を越えた友達と関わりながら遊びます。園舎内外すべてを開放して遊ぶひとときです。
シャッフルタイム
 担任が交代して保育を行う時間を設けます。子どもたちを「多面的」「多角的」に捉え、一人一人の姿を考察し、職員間で情報共有します。より一人一人の良さに気付く大切な取組です。
成長の記録
 幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿を視点に子どもたちの成長を写真とともに具体的に記録します。それを「成長の記録」として、学期末に一人一人に配付します。学年末には、1年の成長の記録が1枚の「成長の記録」にまとまり、保護者の方と子どもたちの成長を共有します。

  • 自己発揮しながら主体的に遊ぶ
  • 友達と関わる楽しさを感じる
  • 自分なりに考え、表現する

新潟市立幼稚園のホームページ

 各幼稚園の取組については、各園のホームページをご参照ください。

令和4年度新潟市立幼稚園ポスター

(問合せ先 教育総務課 電話:025-226-3178)

先生方が生き生きと子どもたちと向き合うために(多忙化解消の取組)

第3次多忙化解消行動計画

 教職員が自らのワーク・ライフ・バランスを確立し、心身ともに健康であることは、生き生きと子どもに向き合うための基盤です。本市は第3次多忙化解消行動計画に基づき、教職員の多忙化解消に取り組んでいます。本計画のキーワードは「協働」と「分担」です。
 取組は「3つの窓」から構成されており、全部で35あります。

  • 窓1 地域・保護者・外部人材等との協働・分担 7の取組
  • 窓2 同僚との協働・分担 9の取組
  • 窓3 教育委員会との協働・分担 19の取組

 今回は、「窓3-19 小学校高学年における教科担任制の推進」の取組について紹介します。

小学校高学年における教科担任制のしくみ

 小学校高学年教科担任制は、大きく分けて次の2つのパターンがあります。

図1

図1学級担任同士で授業を交換する方法

(1)学級担任同士で授業を交換する方法
 図1は、5年生(3学級)の例です。1組担任のA先生が理科、2組担任のB先生が社会、3組担任のC先生が音楽と家庭について、自学級だけでなく学年の全学級を担当しています。どの教科を担当するかは、それぞれの担任の得意教科等を勘案し決定します。

(2)専科教員が授業を行う方法
 図1では、英語専科の教員が各学級に週2時間ずつ授業に入っています。このように専科教員が専門の授業を行う方法があります。専科教員は学級担任以外の「級外」と呼ばれる教員です。学校によっては、算数や理科、体育等、英語以外の教科で専科教員が配置されている場合があります。

小学校高学年における教科担任制の効果

 小学校高学年における教科担任制は、多くの小学校が取り入れるようになりました。次のような効果が報告されています。

(1)教材研究・準備・評価等についての学級担任の負担軽減

 教員は1時間の授業を行うために、単元や題材について研究したり、授業で使用する教材の準備をしたり、学習課題や発問を吟味したりする時間が必要です。また、授業後には児童が作成したレポートや作品を評価したりする時間も必要です。

 担当する教科を特定し、自身が得意な教科を中心に担当することにより、準備等の負担が軽減されます。また、そのことにより、休憩時間等に児童と関わり合う時間が増えたという声も聞こえています。

 また、同じ単元を複数回実施することにより、アプローチの仕方を学級の実態に応じて変えてみたり、児童の思考を引き出しやすい発問を吟味したりして、授業力の向上につながっているという報告もあります。

(2)複数の教員による多面的・多角的な児童理解

 教科担任制を実施すると、一日の中で複数の教員が代わる代わる教室に入ってくることになります。複数の目で学級を見ることにより、学級担任が気づかなかった小さな変化に気付く機会が増えます。このことは、問題行動や人間関係のトラブル等の早期発見につながります。

 また、複数の目で一人の児童を見ることにより、学級担任が気づかなかった児童の良さを発見したりする機会も増えます。児童の立場からすると、学級担任以外に複数の相談の窓口ができることになります。

 教科担任制の取組によって問題行動やトラブルの早期発見・早期解決につながれば、教員にとって時間的・精神的な負担が軽減されることになります。

(問合せ先 学校人事課 電話:025-226-3239)

このページの作成担当

教育委員会 教育総務課

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