梅毒(Syphilis)

最終更新日:2016年8月31日

梅毒とは

 梅毒は、全身疾患で世界中に広く分布しています。梅毒は段階的に進行する病気で、感染から10年ほどで死亡する恐ろしい病気でした。現在では、ペニシリン系の抗生物質で治療することで完治する疾患です。しかし、症状が出ない「無症候性梅毒」の状態で、永年にわたり気がつかないまま過ごすケースもあります。
 日本では、1987年(報告数 2928)をピークとする流行が見られその後減少傾向でしたが、2012年は83件、2015年は2,638件と急増しています。 

原因と感染経路

 原因は梅毒トレポネーマという病原菌で、通常の明視野光学顕微鏡では視認できず、暗視野顕微鏡で観察されます。現在、試験管内の培養は不可能です。主な感染経路は、感染部位と粘膜や皮膚の直接の接触です。具体的には、性行為等が原因となります。極めてまれですが、多量の菌が手指の傷から排出され、汚染された物品により感染したという報告もあります。

症状

 感染後3~6週間程度の潜伏期を経て、経時的に様々な症状が出現します。その間症状が軽快する時期があり治療開始が遅れることにつながる場合があります。

早期顕症梅毒 第 I 期:[感染部位の病変]

 感染後約3週間後に梅毒トレポネーマが進入した部分に、初期硬結、硬性下疳(潰瘍)が形成されます。無痛性の所属リンパ節腫脹を伴うことがあります。無治療でも数週間で軽快します。

早期顕症梅毒 第 II 期梅毒:[血行性に全身に移行]

 第 I 期梅毒の症状が一旦消失したのち4~10週間の潜伏期を経て、手掌・足底を含む全身に多彩な皮疹、粘膜疹、扁平コンジローマ、梅毒性脱毛等が出現します。発熱、倦怠感等の全身症状に加え、泌尿器系、中枢神経系、筋骨格系の多彩な症状を呈することがあります。第 I 期梅毒と同様、数週間~数ヶ月で無治療でも症状は軽快します。早期顕症梅毒症例で髄膜炎や眼症状などの脳神経症状を示すものは、早期神経梅毒と呼び晩期梅毒の神経梅毒とは区別します。

潜伏梅毒

 梅毒血清反応陽性で顕性症状が認めらないものです。第 I 期と第 II 期の間、第 II 期の症状消失後の状態を主にさします。第 II 期梅毒の症状が消失後、再度第 II 期梅毒症状を示すことがありますが、これは感染成立後1年以内に起こることから、この時期の潜伏梅毒を早期潜伏梅毒と呼びます。これに対して、感染成立後1年以上たつ血清梅毒反応陽性で無症状の状態を後期潜伏梅毒と呼びます。

晩期顕症梅毒

 無治療の場合、約1/3で晩期症状が起こってきます。長い(数年~数十年)の後期潜伏梅毒の経過から、長い非特異的肉芽腫様病変(ゴム腫)、進行性の大動脈拡張を主体とする心血管梅毒、進行麻痺、脊髄癆等に代表される神経梅毒に進展します。

先天梅毒

 梅毒に罹患している母体から胎盤を通じて胎児に伝播される多臓器感染症です。

 早期先天梅毒の発症年齢は、生下時~生後3か月で出生時は無症状で身体所見は正常児が約2/3といわれています。生後まもなく水泡性発疹、斑状発疹、丘疹状の皮膚病変に加え、鼻閉、全身性リンパ節腫脹、肝脾腫、骨軟骨炎などの症状が認められます。
 晩期先天梅毒では、乳幼児期は症状を示さず経過し、学童期以後にHutcinson3徴候(実質性角膜炎、内耳性難聴、ハッチンソン歯(永久上切歯の下縁が半月状に凹陥したもの))などの症状を呈します。

検査

 病変部から直接菌を検出する方法と血液を用いて行う血清学的検査による方法の2通りがあります。

1.梅毒トレポネーマの直接検出

 初期硬結や硬性下疳などがみられる病変部から浸出漿液を採集し、暗視野顕微鏡あるいはパーカーインキで染色して顕微鏡観察し、らせん状菌を検出する方法。

2.血清学的検査

1)非トレポネーマ抗原による検査

 脂質抗原(カルジオリピン)に対する抗体価を測定する方法(ガラス板法・RPR法等)。
 特異的抗原でないので生物学的偽陽性反応があります。

2)トレポネーマ抗原による検査

 菌体成分を抗原とする方法(TPHA法・FAT-ABS法等)。
 特異性が高く、梅毒感染の有無を確認する方法です。

予防

 コンドームを正しく使用することが重要です。ただし皮膚や粘膜に梅毒の症状があると、コンドームでは予防できない場合があります。また、不特定多数との性行為、特に感染力の強い第1期及び第2期の感染者との性行為を避けることが基本です。

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