食中毒の原因となる微生物について

最終更新日:2012年6月1日

 食中毒の原因となる微生物には細菌やウイルスがあります。細菌性食中毒の原因となる主な病原体は以下のとおりですが、これらの菌はそれぞれ特徴があるので、それにあった合成培地を使って目的とする菌を効率よく見つけます。
 ところが微生物が原因と考えられる食中毒でも、原因となる細菌が検出されないものもあります。その多くがノロウイルスによるウイルス性食中毒であることがわかりました。ウイルスは生きた細胞がなければ増殖できず、細菌のように合成培地では増殖することができません。しかし、ノロウイルスは生きた細胞を用いた方法でも増殖させることができません。そこでウイルス粒子を直接見つける電子顕微鏡による方法や、遺伝子を検出する方法が行われます。

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)

症状

吐き気、嘔吐、腹痛、下痢

潜伏時間

1~3時間

過去の原因食品

乳・乳製品、卵製品、畜産製品、穀類とその加工品(おにぎり、弁当)など

特徴

人や動物に常在します。食品に付いた菌が増殖するときに産生する毒素(エンテロトキシン)を食品とともに摂食することにより症状が起きます。食品中で産生された毒素は耐熱性であるため、一度増えてしまうと再加熱しても食中毒は防げません。予防には手指の洗浄、調理器具の洗浄殺菌、手荒れや手に傷のある人は食品に直接触れないなどの汚染防止策と、食品の低温保存により菌を増やさないことが有効です。

サルモネラ(Salmonella)

症状

腹痛、下痢、発熱、嘔吐

潜伏時間

6~72時間

過去の原因食品

卵、卵加工品、食肉調理品(牛レバー刺し、鶏肉)、いか乾燥菓子など

特徴

動物の腸管、自然界(水、土壌)に広く分布しています。生肉(特に鶏肉)と卵を汚染することが多く、他のグラム陰性桿菌に比べて、乾燥に強い菌です。肉・卵は十分に加熱(75℃以上、1分以上)することにより菌は死滅します。卵の生食は新鮮なものに限り、保存温度にも注意が必要です。

腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)

症状

腹痛、水様下痢、発熱、嘔吐

潜伏時間

8~24時間

過去の原因食品

魚介類(刺身、寿司、魚介加工品)、漬物(浅漬け)などの二次汚染による各種食品

特徴

海(河口付近の汽水域など)に生息しています。魚介類から手指や調理器具を介した二次汚染にも注意が必要です。腸炎ビブリオは3%程度の食塩濃度を好み、室温でも速やかに増殖します。魚介類は真水でよく洗い、短時間でも冷蔵庫に保存し、菌の増殖を抑えることが予防対策として有効です。

セレウス(Bacillus cereus)

症状

嘔吐型と下痢型があるが、ほとんどが嘔吐型である

  • 嘔吐型:吐き気、嘔吐
  • 下痢型:下痢、腹痛

潜伏時間

  • 嘔吐型:潜伏期は30分~3時間
  • 下痢型:潜伏期は8~16時間

過去の原因食品

  • 嘔吐型:米飯類(ピラフ、チャーハン)、麺類(スパゲティ)など
  • 下痢型:食肉、野菜、スープ、弁当など

特徴

土壌などの自然界に広く生息し、芽胞※をつくる菌です。芽胞は食品の加熱処理後でも死滅しないことがあります。加熱処理後に室温で長時間放置すると菌が増殖し、毒素を産生します。嘔吐型は、毒素(嘔吐毒)を食品とともに摂食することにより症状が起きます。下痢型は、増殖した菌を食品とともに摂食し、腸管内で菌が増殖するとともに産生する毒素(下痢毒)により症状が起きます。予防には米飯類や麺類は作り置きしないで調理後すぐに食べ、保存する場合も室温に放置しないことが有効です。また、嘔吐毒は耐熱性であるため、一度増えてしまうと再加熱しても食中毒は防げません。

腸管出血性大腸菌(EHEC)

症状

腹痛、水様性下痢、血便
重症例では溶血性尿毒性症候群、意識障害

潜伏時間

1~10日間

過去の原因食品

牛肉調理品(レバー刺し、ハンバーグ、サイコロステーキ、タタキ、ローストビーフ)、サラダ、井戸水など

特徴

ウシ、ヤギ、ヒツジなどの動物の腸管内に生息していて、糞尿を介して食品、飲料水を汚染します。食中毒の原因となる腸管出血性大腸菌は血清型O157が多くを占めます。わずかな菌量でも発症することがあります。食肉は中心部まで十分に加熱する(75℃、1分以上)ことにより菌は死滅します。手指や調理器具を介した二次汚染にも注意が必要です。

ボツリヌス(Clostridium botulinum)

症状

めまい、頭痛、脱力感、筋肉麻痺などの神経症状

潜伏時間

8~36時間

過去の原因食品

缶詰、びん詰、はちみつ

特徴

空気(酸素)があると発育しない嫌気性菌で芽胞※をつくり、自然界に広く分布しています。密封した容器の中で増殖し、神経毒を産生します。この食中毒はほかの菌と違い、神経障害をおこします。

ウェルシュ(Clostridium perfringens)

症状

下痢、腹痛

潜伏時間

8~12時間

過去の原因食品

食肉調理品、煮込み料理(カレー、肉じゃが)など。

特徴

人や動物の腸管や土壌などに広く生息します。酸素のないところで増殖し、芽胞※をつくります。下痢原性ウェルシュ菌が増殖した食品を摂食することにより、菌が腸管内で増殖し、芽胞をつくるときに産生する毒素により症状が起きます。加熱処理後でも食品中の芽胞は死滅しないことがあり、大量調理食品では加熱処理後に室温で長時間放置すると、徐々に冷却していく間に、加熱処理により酸素の少なくなっている食品中で菌が増殖します。菌の増殖を防ぐため、加熱調理食品の冷却は速やかに行い、再加熱する場合にも十分に加熱し、調理後速やかに食べるなどの注意が必要です。

カンピロバクター(Campylobacter jejuni/coli)

症状

発熱、倦怠感、頭痛、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢

潜伏時間

1~7日。少ない菌量でも発症。

過去の原因食品

食肉調理品(鶏肉関連食品、牛レバーなど)、飲料水、生野菜など。

特徴

家畜やニワトリなどの家きん類の腸管内に生息していて、鶏肉では食鳥処理施設での処理工程で汚染される場合があります。乾燥に弱く、通常の加熱調理で死滅します。潜伏期間が長いので、原因食品が判明しないこともありますが、鶏タタキやレバー刺しなど食肉の生食または加熱不足が疑われる例が多いです。手指や調理器具を介した二次汚染にも注意が必要です。

ノロウイルス(Norovirus)

症状

下痢、嘔吐、吐き気、腹痛、38℃以下の発熱

潜伏時間

24~48時間

過去の原因食品

貝類(カキなど)
食品取扱者による二次汚染

特徴

ノロウイルスは汚水の流入する河口付近に生息するカキなどの二枚貝の体内に蓄積されます。これらを生や加熱不十分の状態で摂食することにより感染します。しかし、ノロウイルスを原因とする食中毒では、貝類などの原因食品と思われるものを直接摂食していない事例も多くあります。それらの多くは食品取扱者を介して汚染された食品などが原因として推察されています。また、食中毒ではありませんが、病原体保有者の排泄物等を原因とする、ヒトからヒトへの感染事例も多く報告されています。

ノロウイルス 電子顕微鏡写真
電子顕微鏡写真

用語解説

芽胞

培養(生育)条件が悪くなった時の耐久型で、100℃の加熱や乾燥に耐えるものもあります。死んではいないので、適当な環境になると、また栄養型となって増殖します。

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