第六回 オフィスHanako株式会社

最終更新日:2020年2月28日

インタビュー概要

 オフィスHanako株式会社は、建築士をはじめスタッフの多くが女性という住宅建築会社で、「かゆいところに手が届く、女性目線のきめ細かな家づくり」を掲げています。2018年には「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジー」を受賞。見た目のかわいらしさや快適性だけでなく、省エネ性能や安全面にも優れた住宅を提案しています。そんな会社で現場監督として働く進藤愛さんは、今年30歳。男性が多い建築業界の中で現場監督として働く、彼女の夢や目標についてお聞きしました。

インタビュー相手

オフィスHanako株式会社
施工管理 進藤 愛(しんどう あい)さん

進藤さん写真

「大工に興味がありながらも、商業高校へ」

 私は家づくりの全体を統括する施工管理の仕事をしています。いわゆる現場監督です。この立場になる以前は、1年半ほど大工として働いていました。建築業界は男性の割合が多く、女性の大工や現場監督は珍しいため「女性なのに、どうして?」とよく聞かれます。実は子どもの頃から大工の仕事に興味があって、中学卒業後は工業高校へ進学するつもりでした。ただ「将来的に役立つのはPCスキルやIT関連の知識じゃないか」という家族の勧めもあり、商業高校へ進学。大学卒業後、建築とは関係ない業界で働いていましたが、どこか頭の中では建築関係で働きたいという気持ちがあったんです。退職を決めたのは27歳の時。女性であること、年齢のこと、未経験といった状況の中で、働ける場所があるのか不安はありました。ですが、子どもの頃の夢だった仕事を目指そうと考えたんです。

オフィスHanako事務所内


「女性スタッフ中心の建築事務所」

 業界未経験で知識がない私を大工の見習いとして迎えてくれたのが、現在の職場である「オフィスHanako」でした。今でこそ工務担当に男性社員もいますが、当時は社長から営業、設計、工務、経理、WEB担当まで、全員女性でしたね。求人情報でも「女性歓迎」としているのは、県内ではここだけだったと思います。大工の現場において、男性に比べて力がないことはマイナス要因かもしれません。しかし、「塗装や塗り壁、家具づくりなど、女性ならではの感性や丁寧さが生きる仕事がある」と言ってもらえ、とてもうれしかったです。社長も建築が好きな女性が働ける環境づくりに力を入れているので、この会社と巡り会えて良かったなと思います。


「働く女性をサポートしてくれる会社の存在」

 女性中心の会社ということもあり、一般的な企業とはいろいろ違うところがあると思います。たとえば、子どもを連れての出社がOKだったり、1時間単位の有給取得、社長の親族であるおばあちゃんが作る給食もあったり。しかも、余ったおかずを持ち帰ることもできるんです。ほかにもヨガ体験や頭皮マッサージなど、ストレスケアを目的としたリフレッシュ講習もあります。夏休みには、先輩社員のお子さんが会社でご飯を食べてゲームをして…という光景も珍しくありません。仕事と家事や育児との両立を本当に考えてくれているな、という印象です。「子どもは親の背中を見て育つ」ではありませんが、働く母親の姿を見ることができる環境ってすてきなことだと感じています。また、私は週に1回建築士免許を取得するための専門学校に通っていて、授業がある日は早く帰れるようサポートしていただいています。


「女性の大工、現場監督として」

 今は大工の現場からは離れていますので、現場監督として予算の管理、資材の手配、建築の図面のチェックをしたりと、家づくりに関する工程全体の管理が中心です。家づくりはさまざまな工程に分かれていて、工程ごとに関わる職人さんが異なります。みんなの動きを考えて、先へ先へと手配することが大切なんです。職人さんたちにいい仕事をしてもらえる環境を整えることが仕事ですね。お客様の希望が建物の強度や予算の関係で実現が難しい場合に、代替案を提示するのも仕事のうち。大工の経験が生きていると感じます。だいたい毎日朝8時に出勤して、作業の段取りや問題点を共有し、事務作業や現場回りといった流れで18時には退社します。お客様との打ち合わせに同席することもあり、残業や休日出勤もありますが、その分、平日に休みを取得しています。

住宅の模型


「一生に一度の買い物を形にし、感動を分かち合う喜び」
 
 大工の時は、自分が手掛けたものが形になり、お客様の家の一部として残ることがうれしかったです。草だらけの更地にさまざまな工事が入って少しずつ形になっていく…その段階を見るのは楽しく、わくわくします。また、現場監督になってからは、完成した住宅をお客様に引き渡す瞬間は本当に忘れられない瞬間です。多くの人にとっての一生に一度の買い物に携われて、その感動を分かち合えるんです。本当にこの仕事を選んでよかったと実感しますね。「想像以上のものになりました、ありがとう」なんて言われると、これまでの苦労が一気に吹き飛びます。あの瞬間を迎えることこそがやりがいだし、最大の魅力だと思いますね。


「見えないところを大切にしていきたい」

 大工時代の親方に「隠れるところこそ、しっかり仕事をする」と言われたことがあります。家にとって、見た目のかわいらしさや住みやすさは大切です。でも、一番大切なところは耐久性。長く安心して住めることだと考えています。というのも、私がやっていた木工の仕事は、実際に家が完成した後では見えない部分なんです。基礎工事だったり、壁紙の裏側になったりするので。もちろん、それでも手を抜かない。何十年後かに別の大工さんや業者さんが家の下地を見た時に「前の大工は良い仕事しましたね」と言ってもらえるような仕事でなければいけないんです。見えるところだけじゃなくて、見えないところもしっかりしている家を提案していきたいです。


「女性だから、と諦めないでほしい」

 建築業界はキツいイメージがあって、人手不足だと思います。職人さんも若い人が少ないです。私のように建築現場で働く女性はまだ珍しいと思います。正直なところ、大工の下積み時代は本当に大変で、親方にはとても怒られました。ただ「女性には無理だ」と冷たくされることはなく、危険が多い仕事だからこそ「ちゃんと注意しろ」という心配の気持ちからだったんですよね。最初から「女性だから」「未経験だから」と決めつけずに、それでも受け入れてくれる会社があることを知ってもらいたいですね。私にとってこの会社がそうであったように、どんな業界にもきっとあるだろうと信じています。たとえ偏見があったとしても、仕事に対して真摯であれば、周囲の目も変わるはずです。好きなことだからこそ、諦めずにチャレンジしていって欲しいですね。

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